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第23話

「今度、あの女性が屋敷に来ても、ティーラさんは玄関を開けなくていいし、話もしなくていいから……」


「はい、わかりました」


 レオさんは大好きなハンバーガーを手に持ったまま、眉をひそめる。どうやら彼も、あの綺麗な彼女のことが苦手みたい。


 それはティーラも同じだった。あの自分勝手に話を進める女性に、かつてティーラの婚約者だったリオン君を奪ったセジール嬢を思い出す。だから、ティーラも出来るなら会いたくないと思っていた。


(レオさんがそう言ってくれて、よかった)


 ティーラはホッと胸を撫で下ろした。




 それから数日は何も起こらず、ティーラは毎日の仕事に励み、レオさんから貰ったたくさんの服の尻尾穴も修繕できた。村にいた頃とは違い着る服の種類が増えて、ティーラは部屋に備え付けの、クローゼットを開けることが楽しみになっている。


(メイド服にワンピース、可愛いシャツとフレアスカート……ふふ、明日のピクニックは何を着ようかしら?)


 ティーラはクローゼットから、可愛いシャツと紺色のフレアスカートを取り出した。


 次の日の早朝。レオさんと早起きして作ったサンドイッチを持って、ティーラ達は馬車で王都から西にあるらラベンダーが見事なスカー湖に来ている。


「ティーラさん、ラベンダーの花が綺麗だね」


「はい。こんなに、たくさんのラベンダーを見るのは初めてです。ラベンダーは香りがいいから石鹸にしてもいいし、ドライフラワーにしてもいいわ」


「詳しいね」


「村に咲いているラベンダーで、石鹸とドライフラワーを作ったことがあるんです。石鹸は肌にもいいし、作ったドライフラワーを飾るだけで、気分が癒されました」


「石鹸とドライフラワーかぁ。家ように持って帰ろう」

「はい!」


 馬車の御者はレオさんのお友達、狐族のコンさん。馬車に残る彼に、昼食とポットに持ってきたスープ、果物を渡した。本日、レオさんがピクニックにこの湖を選んだのは、冒険者ギルドに調香師からラベンダーの花摘みの依頼があったと話した。


「この時期はラベンダーが綺麗だから、仕事だけど1人で行くより、ティーラさんを誘いたかったんだ」


「私を? うれしい。レオさん、ありがとうございます。素敵な湖とラベンダーが綺麗です」


 誘ってくれたことが嬉しくて、ティーラははしゃいでいた。レオさんが昼食前にラベンダーを採ると言うので、ティーラも手伝いたくてシャツの袖をまくった。


「レオさん、ラベンダーをどれくらい取るんですか?」

「え? ティーラさんは服が汚れるから、そこで見てるだけでいいよ」


「1人でラベンダーを採るより、2人で採った方がはやいです!」


 いつにも増して楽しそうなティーラにレオは笑い。

 並んで、ラベンダー摘みをはじめた。

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