食卓に置かれた箱の中に、ワンピースなど普段着が入っていた。どの服も、ほつれたところを直しながら着ていた、ティーラにはレオさん持ってきた服がよそ行きの服に見えた。
「可愛いワンピース、こっちの服も可愛い。こんなにたくさんあったら、どの服を着ようか迷ってしまうわ」
「ほんと? 気に入ってくれた? よかった、この服全部に尻尾穴があるから……」
「え?」
ティーラが箱から一着取り出すと、レオさんのいう通り、お尻のところに穴が空いていた。だけど、箱の中の服は生地がよく、古着に見えない。
「新品の服、ばかりですか?」
「いいや。王都にある獣人街で服屋をやってる友達に、売れ残った在庫を貰ったんだ」
「在庫? こんなにたくさん?」
「うん。流行が遅れると誰も買わないんだって。売れ残った在庫を業者に引き取ってもらうより、着てもらいたいって言ってたから、遠慮なくティーラさんに着てほしい」
「着ます! 嬉しいです」
ティーラが笑顔で返事をすると「じゃ、裁縫道具持ってくるね」と言い残し、レオはキッチンから出ていった。キッチンに残ったティーラは箱からワンピースを取り出し、体に当てて微笑んだ。
(こんなに可愛い服を着れるなんて、夢見たい)
自分では買えないたくさんの服、ティーラは大切にしようと思った。
ティーラがレオさんのメイドになって、1月が経った。
今日は貰ったメイド服を着て、近くの街に買い物に出ている。はじめはメイド服のティーラを見て驚いていたが、レオさんのとこのメイドだと認識してもらった。
料理も村にいた頃は1人だったから、簡単な料理しか作ってこなかった。元婚約者だったリオン君とは、外での食事が多かった。
「うーん。朝晩冷えるから、今日はレオさんの好きなポトフにしましょう。ポトフが残ったら明日の朝、リゾットにするか、パスタを入れてもいいわね?」
レオさんはお肉も好きだけど、野菜も好きだから、あとはサラダを作ろうと決めた。ティーラは店でレタスとトマト、ジャガイモ、にんじん、ソーセージを買い。パン屋で人気の丸パンと、朝食用の食パンを買って屋敷へと戻った。夕飯の支度前に朝干した洗濯物をしまい、お風呂を掃除して沸かす。
「トイレもだけど、この光る石を触るだけでお湯が出るなんて、不思議だけど簡単で面白いわ」
村にいた頃は薪を使い、2日おきにお風呂を沸かしていた。レオさんはお風呂好きなのか、毎日お風呂を沸かす。髪用と体用の石鹸は高級なラベンダーの香りだ。
「お風呂の準備はこれでよし」
ティーラはキッチンで具材を切り、ポトフ作りを始めた。