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第19話

 食卓に置かれた箱の中に、ワンピースなど普段着が入っていた。どの服も、ほつれたところを直しながら着ていた、ティーラにはレオさん持ってきた服がよそ行きの服に見えた。


「可愛いワンピース、こっちの服も可愛い。こんなにたくさんあったら、どの服を着ようか迷ってしまうわ」


「ほんと? 気に入ってくれた? よかった、この服全部に尻尾穴があるから……」


「え?」


 ティーラが箱から一着取り出すと、レオさんのいう通り、お尻のところに穴が空いていた。だけど、箱の中の服は生地がよく、古着に見えない。


「新品の服、ばかりですか?」


「いいや。王都にある獣人街で服屋をやってる友達に、売れ残った在庫を貰ったんだ」


「在庫? こんなにたくさん?」


「うん。流行が遅れると誰も買わないんだって。売れ残った在庫を業者に引き取ってもらうより、着てもらいたいって言ってたから、遠慮なくティーラさんに着てほしい」


「着ます! 嬉しいです」


 ティーラが笑顔で返事をすると「じゃ、裁縫道具持ってくるね」と言い残し、レオはキッチンから出ていった。キッチンに残ったティーラは箱からワンピースを取り出し、体に当てて微笑んだ。


(こんなに可愛い服を着れるなんて、夢見たい)


 自分では買えないたくさんの服、ティーラは大切にしようと思った。



 ティーラがレオさんのメイドになって、1月が経った。

 今日は貰ったメイド服を着て、近くの街に買い物に出ている。はじめはメイド服のティーラを見て驚いていたが、レオさんのとこのメイドだと認識してもらった。


 料理も村にいた頃は1人だったから、簡単な料理しか作ってこなかった。元婚約者だったリオン君とは、外での食事が多かった。


「うーん。朝晩冷えるから、今日はレオさんの好きなポトフにしましょう。ポトフが残ったら明日の朝、リゾットにするか、パスタを入れてもいいわね?」


 レオさんはお肉も好きだけど、野菜も好きだから、あとはサラダを作ろうと決めた。ティーラは店でレタスとトマト、ジャガイモ、にんじん、ソーセージを買い。パン屋で人気の丸パンと、朝食用の食パンを買って屋敷へと戻った。夕飯の支度前に朝干した洗濯物をしまい、お風呂を掃除して沸かす。


「トイレもだけど、この光る石を触るだけでお湯が出るなんて、不思議だけど簡単で面白いわ」


 村にいた頃は薪を使い、2日おきにお風呂を沸かしていた。レオさんはお風呂好きなのか、毎日お風呂を沸かす。髪用と体用の石鹸は高級なラベンダーの香りだ。


「お風呂の準備はこれでよし」


 ティーラはキッチンで具材を切り、ポトフ作りを始めた。

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