ティーラは口元をタオルで覆い、長いはたきを手に持ち上から埃を落とす。この部屋は「使っていない部屋だ」とレオさんが言っていたけど、あまり埃は溜まっていなかった。
「この程度だったら、早く終わりそうね」
ティーラが村にある、家へと追いやられた家の方が酷かった。その家に比べればこれは楽な方だ。サッサと終わらせて、洗濯物をしましょう。
――1人のときは、やらなくてはならないからやっていたのだけど、雇い主のレオさんの洗濯物だものしっかり洗わなくちゃ。
ティーラは部屋の掃除を終わらせて、レオから聞いた洗濯場へと移動した。そこには大きなシャツと普通のシャツ、大きなスラックスと普通のスラックスなと、サイズ違いの衣類が置いてある。
「この衣類、ライオンのレオさんと、人の姿のレオさんの服なんだわ」
サイズ違いの衣類を手に取り、洗濯石鹸で先ずは襟と袖の汚れから洗っていくと、ティーラは驚くことに気づく。
「この洗濯石鹸って汚れがよく落ちるわ。昔、使っていた洗濯石鹸とは全然ちがう! ふふ、こんなに簡単に汚れが落ちるなんて洗濯が楽しいわ!」
「ティーラさん、楽しそうだね」
声がして見れば、王都から戻ってきたレオがいた。
「え? レオさんお帰りになっていたのですか? お迎えに出れずすみません」
「いいよ。それより、お昼だけどお腹空かない?」
「お昼……お腹?」
レオにそう言われて、ティーラのお腹がグゥ〜ッと主張した。その音の大きさにティーラは顔を赤くする。
「ふふ。それじゃ、2人で早く洗濯を終わらせて昼食にしよう」
「え? 2人で?」
レオは着ていた上着を脱げ捨て、袖捲りをして洗濯に加わる。はじめはいいのかと思ったが、レオさんが楽しそうに洗濯をするものだから、ティーラも楽しくなって2人で仲良く洗濯物を終わらせた。
「これでよし。ティーラさん、他に干すものはない?」
「はい、それで最後です。レオさん、お疲れ様です」
「ティーラさんもお疲れ様。さぁ昼食にしようか」
「では、昼食の準備いたしますね」
「待って、準備はいいよ。王都で、サンドイッチを買ってきたから、コーヒーだけ淹れて」
レオは王都に出たついでに、人気のパン屋でサンドイッチを買ってきたと言った。ティーラは、サンドイッチが入った紙袋をレオから受け取り、キッチンへと向かった。