キッチンに現れた男性はいきなり笑いだした、ティーラはその姿をぼうぜんとみつめた。
(ほんとうに、この男性はレオさんなの?)
「クク、ティーラさんはまだ気付かない? 僕だよ、レオだよ」
「レオさんの、立派なたてがみともふもふがないわ……ほんとうにレオさんなの?」
「そうだよ」
男性はティーラが驚くたびに嬉しそうに笑った。
そして「ほらほら、ティーラさん見て」頭に生える耳に指をさして、次にしなやかな尻尾を見せた。
「金色の耳と尻尾……もふもふ、レオさんだ」
「そう、わかってくれた? 家にいるときは獣人、ライオンの姿でいるけど、仕事に行くときはこの姿で行くからね」
「はい、わかりました。どちらのレオさんも素敵です……これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。それと……ティーラさんありがとう、僕の全部を気に入ってくれて嬉しいよ」
レオは嬉しそうに笑った。
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元の、ライオンの姿に戻ったレオさんは。
「次に、ティーラさんの部屋なんだけど……見せたほうが早いか、ついてきて」
と、キッチンを出ていくレオの後追い、ティーラもついて行くと、幾つものランタンの灯りが廊下を照らしていた。その一つのランタンを手に取り、レオは「この部屋は狭いか」「ここは物置にしてる」と、どんどん屋敷の奥へと進んでいく。
そして「ここなら広いかな」と、レオさんの隣の部屋を開けた。その部屋はレオさんの部屋と繋がっている。
「この部屋なら僕の部屋と繋がっているから、何かあったらすぐに来れるね」
「……これますね」
この部屋は。と、ティーラは両親の部屋を思い出していた。レオさんの部屋が旦那様の部屋だとすると、この部屋は奥様の部屋となる。
(レオさんは気付いていないのかな?)
部屋の構造も、シャンデリア、天蓋付きのブルーのベッド、家具、大きなクローゼット、ドレッサーと高そうな家具ばかり。ただ一つ言えるのは……掃除をしていないからか埃っぽい。
「ごめん、すぐに使えそうにないね」
「掃除と洗濯をすれば、すぐにでも使えますが。この部屋を使っていいのですか?」
「いいよ。この部屋以外は小さいし、物置にもしてるから。でも、掃除が終わるまでは僕の部屋で寝ればいいよ」
「ありがとうございます」
ティーラは掃除が終わったら、この部屋を使わせてもらう事にした。
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次の日の朝、朝食後に人型とりスーツを着込み、レオは馬車を屋敷へと呼んだ。レオの見送りにきたティーラに。
「ティーラさん、いまから王城に書類を出しに行ってくるよ」
と、伝える。
「王城ですか?」
「ああ、この屋敷と森は国の所有物だから、いつもの報告と。ティーラさんをメイドとして雇うと、上に伝えてくる」
「はい、お願いします。レオさん、行ってらっしゃいませ」
「行ってくるね」
馬車に乗り込み、王城に向かうレオを見送りした。
その後ティーラはキッチンの後片付け、洗濯を終えると、掃除道具片手に自分の部屋となる部屋の掃除を始めた。