カーテンの隙間から入る朝日と、頬に感じた朝の冷たい空気で目がさめた。目覚めて、自分の部屋じゃないことに驚く。
「ここ、私の部屋じゃないわ」
目が覚めてくると、頭の中に情報が一気に流れこんでくる。ティーラの婚約者だったリオンは違う人と結婚した。悲しくて住んでいた村を飛び出て、天国へ行けると噂のイーデンの森を探しに隣国へとやってきた。その森を見つけて、眠って……金色のライオンさんに助けられたんだ。
ティーラを助けてくれたライオンは? まだ隣で寝ているのかと思い手を伸ばしたけど、ベッドの隣には誰もおらずお布団は冷んやりしていた。
「ライオンさんが、いない……?」
体を起こして部屋を見渡し、彼を探したけど何処にもいない。――あのライオンさんは幻。じゃー誰がここにティーラを連れてきたの。不安からティーラはベッドから出ようとして、自分の姿に驚いた。
「(え、うそ、私)……いやっ」
そう叫び、出ようとしていたベッドに勢いよく戻り、頭から布団を深くかぶった。
(嘘よ、嘘……誰か嘘だよ言って!)
そんな焦るティーラの元へ、近付く足音が聞こえて「コンコン、コンコン」部屋の扉が鳴り「何かあった?」と、真っ白なエプロンを付けた、ライオンの彼が部屋の扉を開けた。
(私を助けてくれた、ライオンさんだ……私の声が聞こえたの?)
「どうした? 何があった?」
やっぱりティーラの声が聞こえたらしく、ライオンさんが心配している。彼に早く答えないと、思うもティーラは何も言えなくなってしまう。しばらく沈黙が続く。そして、布団を掴み縮こまるティーラにふうっ……と息をついた。
「……ごめん。昨夜は混乱していてわからなかったのか……そうだよな。目が覚めて現実を知った。僕のこの姿が怖いんだね?」
沈んだ彼の声が聞こえた。
私が彼のことを怖い?
「君の帰りの手配と、すぐ着替えの手配するよ……」
帰りの手配? 待ってと、ベッドから顔をだすと……耳と尻尾が少し下がった彼の姿が見えた。
「ち、違います。待ってください。違うんです!」
ティーラは扉を閉めて行こうとした、彼の背中に向かって叫んだ。でも、下着の話をするのは恥ずかしい。だけど、助けてくれ彼は傷付けたくなかった。
「大丈夫だよ。無理しないで、こういうのは慣れているから……僕ではダメだな。ほかの人を呼んでくるから、しばらくそこにいて」
「ほんとうに違うんです。あ、あなたにヨレヨレの下着を見せてしまったことが、恥ずかしかったの!」
なんとか伝えたが沈黙がまた続く。ティーラは彼が気になり、ソッとみると琥珀色の瞳を大きくして、驚いた表情をしていた。その口元はわなわなと緩み、目が無くなるほど笑った。
「ははっ……あの可愛いクマさんアップリケの、下着のことか……」
「違います……あれはネコ」
「え、あれ、ネコさんだったの? ……って、ごめん。しっかり君の下着を見てしまったね」
頭をポリポリかき、照れくさそうに笑う彼の笑顔に釘付けになった。