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第9話

 手を伸ばして彼を触ると柔らかくもふもふしている。その、もふもふから顔を上げて彼の顔を覗けば、ティーラを見つめる優しい琥珀色の瞳と大きな口。


「ライオンさんのもふもふ、温かいわ」

「それなら、好きなだけ僕を抱きしめて……それと、ごめん」


 いきなりのライオンの謝罪、彼が指した部屋のは隅。

 その先には真っ黒に汚れたワンピースがビリビリに破けた状態で置いてあった。


「……あれは、私のワンピース?」


「そうだ……君を森で見つけだはいいが、君の体は思った以上に冷たくて、脱がせようとして焦って破ってしまった」


(私の体が冷たかった? そうだ、私は寒空の下……薄手のワンピース一枚で……森に中で眠ったから)


「私、凍えて死んでしまうところだったのね。私のことなんて、ほって置いても……よかった、そしたら……」


 いまだにいえない、この胸の苦しみ、痛みが消えて静かに眠れたのに。ティーラの後ろ付きな発言にライオンから"ギリッ"と……何かを、噛む音をきこえた。


「バカか? そんなことを冗談でも言うんじゃない。僕が君を助けたいと願い、どれだけ心配しだと思ってるんだ!」


「ひゃっ」


 彼が肩を掴み、ティーラ。ベッドに押し付ける。

 ギシッと、きしむベッド……


「一歩間違えれば君は死んでしまうところだったんだ……なにが、目が覚めなくてもいい? そんな悲しい事を言うな!」


 鼻にシワを寄せ「グルルル」と低い声で鳴いて、ティーラに鋭い牙を見せた。その時にしっかり見えた彼の顔は.怒っているのに何処か悲しそうで。眉をひそめ、いまにも泣き出してしまいそうな悲しい瞳をしていた。


「…………っ」

「……バカな事を言うなよ」


 彼の琥珀色の瞳から"ぽたり"とティーラの頬に涙が落ちる。その涙を見て、ティーラは胸が締め付けられる。


 ――ああっ、私は助けたくれた彼を傷つけてしまった。


 ティーラの瞳から後悔の涙が溢れた。


「……ごめんなさい。でも、私……は……胸が痛いの、苦しいの……ツラくて、涙が止まらない……ああっ……」


 ポロポロ泣きだした、ティーラ……ライオンは押し付けていた手を離して、その大きな胸に抱きしめてくれた。ライオンの温かい胸の中で、彼の優しい声が降ってくる。


「泣かないで、君を怖がらせた。いきなり怒鳴って悪かった……苦しいなら、痛いのなら、いいだけ泣け。泣き止むまでボクがこの胸に抱きしめる……だから、好きなだけ泣けばいいよ」


「うっ、ううっ……ライオン、さん……あり、ありがとう」


 ティーラは彼に更に抱きついて泣いた。わかっている……泣いてもリオンは戻らない、何も変わらない。でも、この苦しさを全て出してしまいたかった。ティーラは彼の温かい腕の中で、泣きじゃくった。


「うっ、うう……私、あなたに酷いことを言った、ごめんね。ありがとう……うっ……本当にありがとう」


「ああ……わかってる」


 彼の立派なたてがみが私の涙で濡れてしまったけど、彼は気にすることなく、優しく抱きしめてくれた。


「……私を助けてくれて、ありがとう」


「うん」


 たくさん泣いて……全て出し尽くしたのか涙は止まると……ティーラの体から力が抜け落ちる。ティーラは優しいライオンの腕の中で眠りに落ちた。

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