手を伸ばして彼を触ると柔らかくもふもふしている。その、もふもふから顔を上げて彼の顔を覗けば、ティーラを見つめる優しい琥珀色の瞳と大きな口。
「ライオンさんのもふもふ、温かいわ」
「それなら、好きなだけ僕を抱きしめて……それと、ごめん」
いきなりのライオンの謝罪、彼が指した部屋のは隅。
その先には真っ黒に汚れたワンピースがビリビリに破けた状態で置いてあった。
「……あれは、私のワンピース?」
「そうだ……君を森で見つけだはいいが、君の体は思った以上に冷たくて、脱がせようとして焦って破ってしまった」
(私の体が冷たかった? そうだ、私は寒空の下……薄手のワンピース一枚で……森に中で眠ったから)
「私、凍えて死んでしまうところだったのね。私のことなんて、ほって置いても……よかった、そしたら……」
いまだにいえない、この胸の苦しみ、痛みが消えて静かに眠れたのに。ティーラの後ろ付きな発言にライオンから"ギリッ"と……何かを、噛む音をきこえた。
「バカか? そんなことを冗談でも言うんじゃない。僕が君を助けたいと願い、どれだけ心配しだと思ってるんだ!」
「ひゃっ」
彼が肩を掴み、ティーラ。ベッドに押し付ける。
ギシッと、きしむベッド……
「一歩間違えれば君は死んでしまうところだったんだ……なにが、目が覚めなくてもいい? そんな悲しい事を言うな!」
鼻にシワを寄せ「グルルル」と低い声で鳴いて、ティーラに鋭い牙を見せた。その時にしっかり見えた彼の顔は.怒っているのに何処か悲しそうで。眉をひそめ、いまにも泣き出してしまいそうな悲しい瞳をしていた。
「…………っ」
「……バカな事を言うなよ」
彼の琥珀色の瞳から"ぽたり"とティーラの頬に涙が落ちる。その涙を見て、ティーラは胸が締め付けられる。
――ああっ、私は助けたくれた彼を傷つけてしまった。
ティーラの瞳から後悔の涙が溢れた。
「……ごめんなさい。でも、私……は……胸が痛いの、苦しいの……ツラくて、涙が止まらない……ああっ……」
ポロポロ泣きだした、ティーラ……ライオンは押し付けていた手を離して、その大きな胸に抱きしめてくれた。ライオンの温かい胸の中で、彼の優しい声が降ってくる。
「泣かないで、君を怖がらせた。いきなり怒鳴って悪かった……苦しいなら、痛いのなら、いいだけ泣け。泣き止むまでボクがこの胸に抱きしめる……だから、好きなだけ泣けばいいよ」
「うっ、ううっ……ライオン、さん……あり、ありがとう」
ティーラは彼に更に抱きついて泣いた。わかっている……泣いてもリオンは戻らない、何も変わらない。でも、この苦しさを全て出してしまいたかった。ティーラは彼の温かい腕の中で、泣きじゃくった。
「うっ、うう……私、あなたに酷いことを言った、ごめんね。ありがとう……うっ……本当にありがとう」
「ああ……わかってる」
彼の立派なたてがみが私の涙で濡れてしまったけど、彼は気にすることなく、優しく抱きしめてくれた。
「……私を助けてくれて、ありがとう」
「うん」
たくさん泣いて……全て出し尽くしたのか涙は止まると……ティーラの体から力が抜け落ちる。ティーラは優しいライオンの腕の中で眠りに落ちた。