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第8話

『ティー世界には多くの人種がいて、たくさんの言葉と、優しい人がたくさんいるんだよ』


 両親は領主みずから隣国へ行商に行って、よく仕事の話をティーラにしてくれ、その土地の絵本もたくさん買ってきてくれた。


 ティーラは両親が買ってきてくれる絵本が好きで、両親が隣国から帰る日を心待ちにしていた。その中で、ティーラの一番のお気に入りは金色毛玉の冒険だ。家を出るとき、カバンに入れて持ってきた。


『大好き、お父様、お母様』

『私達もティー、お前が大好きだ!』


 優しい両親……できるならもう一度、会いたい。そう願っていたら両親に会えた。2人は優しく名前を読んで、私を両手で優しく抱きしめてくれた。


 このまま、私も連れて行って。

 離れたくないと言った私に。


『ティーラ、負けるな』

『私の愛しい子。ティーラ、幸せになって』


 と言った。だけど、その言葉に頷くことができない。


『幸せ? ……私の幸せは両手からこぼれ落ちてしまったわ……それなのにどうやって、幸せになれというの?』


 お父様はリオンを思い出して泣く、ティーラの涙をふき。


『幸せがこぼれ落ちたのなら、そこからまた貯めればいい……貯めて、貯めて幸せになりなさい。私達はお前の幸せだけを願ってる、ずっと見守っているよ』


『諦めないで、私達の愛しきティー』


 ずっと会いたかったお父様、お母様が薄れていく。


『いや、待って、待ってよ、私を置いて行かないでぇー、ひとりにしないで!』


 手を伸ばしても2人には届かなかった。

 両親を呼んで泣き叫ぶ、ティーラに別の感覚がおそった。



 ……


 ………っ?


 あ、あれ、温か……い…?


 ……


「……んっ」


 モフモフしていて柔らかい? 目を覚ましたティーラは、柔らかな金色の毛に包まれていた。


「もしかして、天国かしら?」


 あのイーデンの森は天国に続いていたから、久しぶりに両親にも会えた。その柔らかな金色にを埋めると、その金色はモゾモゾ動く。


「悪いが、ここは天国ではない……よかった、目を覚ましたんだね?」


 ティーラに向けて、早口に何か話した。


「き、金色……」

「金色?」

「金色毛玉が言葉を喋ったわ? ……喋る、金色の毛玉?」


 手を伸ばしモフモフする。

 世の中には、不思議なこともあるのね。


「ハァ? し、しゃべる金色毛玉? ……違うから、よく僕を見て」


 また早口で何か喋る。


「僕を見ろ?」


 昔に読んだ。大好きな"金色の毛玉が冒険する"絵本に書かれていた文字が、この金色の毛玉が話す言葉と同じ。子供の頃は絵だけではなく文字も読みたくて、両親に買ってもらった辞書をひきながらゆっくり絵本を読んだ。


 家庭教師を雇い勉強したから、今はすらすらと話せる。

 ティーラは金色の毛玉をよく観察すると、頭にふさふさな耳、大きな口に牙、立派なたてがみがあった。


 この毛玉は服を着ていなくて、大きな手で私を包み込んでいる。そしてお尻には大きく揺れる尻尾があった。


「あ、あなた物語に出てくる、ライオンさん、みたいだね」


 そう言うティーラに、毛玉は笑って。


「ハハハッ……そうだ、僕は獣人族のライオンだ」


「獣人ぞく? ライオン……?」


 なぜが、あの森で眠ったら……金色で大きなライオンに優しく抱きしめられていた。

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