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いなくなったティーラ

 男爵令嬢セジールとリオンの結婚式の翌日。村の人々は前領主の娘、ティーラがいなくなったと辺りを探した。


 リオンの両親は隣村、隣街まで探したがティーラは見つからない。村の人々も隈なく探したがティーラは見つからかった。


 ティーラの家に置き手紙か何かないかと行って、見つけたのは、玄関にポツンと置かれた婚約指輪。ゴミ箱に捨てられたベール、花が枯れてしまった花冠とブーケ。――そして、タンスの上には彼女の両親の写真が、ポツンと置かれていた。


 誰いない家に置いていかれた写真立てと、婚約指輪を見たとたん、リオンの両親は泣き崩れた。


「ううっ……あんなに、いい子を裏切って……うちの子はなんと言う事をしたんだ」


「もう、うちの子じゃない」


 ティーラが置いていった指輪は、すぐリオンへと返された。リオンはティーラがいなくなったと知り、探しに行こうとしたが両親に止められる。


「裏切った、お前はティーちゃんの心配をするな!」

「家にも二度と帰って来なくていい。あなたは男爵家でセジール様と仲良くしていなさい」


「…………つ!」


 次の日、また次の日と探しても探しても、ティーラは見つかることがなかった。一つだけ分かったことは隣街の相乗り馬車に乗った、若い村娘がいたと言うことだけ……


 村のみんなは口々にそれはティーラだと。領地経営、領主をマント男爵に任せて、ティーラは二度とこの村には帰ってこないんだと悟り。どこか遠い国で彼女が幸せになる事と無事を祈った。


「……ティーラ」


 ただ一人……ティーラを傷付けたリオンは返された婚約指輪を握りしめたまま、何も言えずに立ち尽くすしかなかった。

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