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第6話

 リオンとセジールの披露宴はマント男爵の庭園で開かれた。セジールの両親とリオンの両親に招待されたルース村中の人々は頭を下げている。そのとなりにはお揃いの真っ白なタキシードと、ドレスを身につけて笑っている二人の姿。ティーラは話の輪に入らず、端に立ってその様子を眺めていた。


 村のみんなは領地の事と事情を知っていて、ティーラを腫れ物のように扱う。でも村を出て行くと決めたからなのか、ティーラの気持ちは落ち着いている。




「まあ、ティーラ来てくれたの?」


 セジールはティーラをみつけると声を掛けて、リオンと手を繋ぎ見せ付ける様にやってくる。周りのみんなはその様子を静かに見守っていた。


「ご結婚おめでとうございます。セジール様、リオン様。お幸せになってください」


「ええ、幸せになるわ。リオンもなにか言いなさいよ」


「いいや、俺はいい」


 リオンはティーラから目を逸らしてしまい。

 最後に、彼の瞳を見ることは叶わなかった。


「これは、これはティーラさん、領地のことは任せてください」


「はい、よろしくお願いします、マント様」


 ティーラは深く頭を下げた。


「セジール、いくぞ」


 去っていくマント様と二人にティーラはもう一度、深く頭を下げた。お父様、お母様が父方の祖母から受け継ぎ納めていた領地。それを手放してしまってごめんなさい……


(私は何処かで、村のみんなの幸せを願っているわ)


 庭園の真ん中で、人々に囲まれて楽しげな笑い声をあげて、二人が村の人達にシャンパンを振舞う姿がみえた。挨拶は終わった……みんなの喜びを妨げてしまうかもしれないと思い、ティーラは庭園を抜けだした。


 この日、遅くまで二人の披露宴は開催されただろう。

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