リオンとセジールの披露宴はマント男爵の庭園で開かれた。セジールの両親とリオンの両親に招待されたルース村中の人々は頭を下げている。そのとなりにはお揃いの真っ白なタキシードと、ドレスを身につけて笑っている二人の姿。ティーラは話の輪に入らず、端に立ってその様子を眺めていた。
村のみんなは領地の事と事情を知っていて、ティーラを腫れ物のように扱う。でも村を出て行くと決めたからなのか、ティーラの気持ちは落ち着いている。
「まあ、ティーラ来てくれたの?」
セジールはティーラをみつけると声を掛けて、リオンと手を繋ぎ見せ付ける様にやってくる。周りのみんなはその様子を静かに見守っていた。
「ご結婚おめでとうございます。セジール様、リオン様。お幸せになってください」
「ええ、幸せになるわ。リオンもなにか言いなさいよ」
「いいや、俺はいい」
リオンはティーラから目を逸らしてしまい。
最後に、彼の瞳を見ることは叶わなかった。
「これは、これはティーラさん、領地のことは任せてください」
「はい、よろしくお願いします、マント様」
ティーラは深く頭を下げた。
「セジール、いくぞ」
去っていくマント様と二人にティーラはもう一度、深く頭を下げた。お父様、お母様が父方の祖母から受け継ぎ納めていた領地。それを手放してしまってごめんなさい……
(私は何処かで、村のみんなの幸せを願っているわ)
庭園の真ん中で、人々に囲まれて楽しげな笑い声をあげて、二人が村の人達にシャンパンを振舞う姿がみえた。挨拶は終わった……みんなの喜びを妨げてしまうかもしれないと思い、ティーラは庭園を抜けだした。
この日、遅くまで二人の披露宴は開催されただろう。