「よし、今日も頑張るわ!」
丘の上の煉瓦造りの羊飼い小屋に向かい。牧場で働く従業員に挨拶をして、裏口に回り込みティーラは元気よく扉を開けた。
「ヤナおじさん、ミリおばさん。おはようございます」
「ティーちゃん、おはよう」
「おはよう、ティーちゃん。来て早々悪いんだけど、水を羊たちにやってくれるかい」
「はい、わかりました」
返事を返して、ティーラは従業員にまじり、桶を持って井戸水をくみ。羊達に栄養たっぷりの牧草と朝の冷たい水を飲ませた。重労働だけど、なれてしまえばなんて事ない。
朝の行程をすべて終わらせ、ティーラ達は小屋に戻る。
「ミリおばさん、終わりました」
「お疲れさま。さてと、次は草刈りにいくわよ。――あ、ティーラちゃん、リオンが仕事終わりに寄るっていっていたから」
「リオン君がですか? わかりました」
(なんだろう? 明日の結婚式の打ち合わせかな?)
明日は近くの街の教会を借りて、2人だけで結婚式を挙げるんだ。
+
夕方。リオンは仕事が終わったのか、羊小屋を掃除するティーラの元へとやってきた。
「ティー、おつかれさま」
「リオン君、おつかれさま」
「ティーに話があるんだ、いつもの場所で待っている」
「うん。終わったら、すぐに行くね」
小さい頃からよく待ち合わせをした、リース村の東寄りにある、橋の上で会う約束をした。仕事が終わり、みんなに挨拶してティーラは橋の上で待つ、リオンの元へと駆け寄った。
「リオン君、お待たせ。話ってなに?」
「ティー……おつかれさま」
橋の上で待つ彼に近づくと、その表情はいつもより、沈んいるように見えた。
「リオン君?」
話があると言っていたのに何も言わない「どうしたの?」と聞こうとするまえに、リオンはいきなりティーラに頭を下げた。
「ティー、ごめん。俺、俺はティーとは結婚できなくなった……」
「え、結婚出来ない? どうして? 明日になったら、町の教会で結婚をするのでしょう? そして、この領地を守るって約束したじゃない!」
リオンに詰め寄って聞くと、彼はティーラから目をそらした。
「ごめん、ティーの他に好きな人ができた……から、本当にごめん」
詳しい説明もなく。それだけ言うと、リオンはティーラを押し退けて帰っていった。