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婚約者に裏切られた男爵令嬢は、異国の地で獣人に甘やかされる。
にのまえ
異世界恋愛人外ラブ
2024年08月30日
公開日
45,357文字
連載中
五年前。両親を亡くした男爵令嬢のティーラ・アンドレイ。彼女が13歳の時、突然現れたマント男爵に「あとを頼む」と書かれたお父様の手紙、ティーラは領地を任せるしかなかった。

それもティーラが18歳になるまで、18歳になったら婚約者、村長の息子リオンと結婚して領地を継ぐ約束をした。

しかし。ティーラが18歳の誕生日を迎える前日、婚約者のリオンに好きな人ができたと言われてしまう。その相手はなんと、マント男爵の1人娘セジールだった。

相手のセジールのお腹には、リオンとの子供がいると言われ、2人は結婚してしまう。

1人ぼっちになったティーラは【子供の頃から好きだった絵本――金色毛玉の冒険に出てきた隣国スートランド国にあると噂の、天国へ続くイーデンの森を探してみよう】と。住み慣れた領地を出て隣国へと渡る。

そのスートランド国でライオンの獣人、レオ出会う。ティーラは優しいレオにだんだんと惹かれていくのだった。

プロローグ

 今から五年前、ティーラの両親が亡くなって一年経った頃、彼らは屋敷へとやってきた。メイドが屋敷の応接間に案内して話を聞くと、彼らは両親と共に事業をしていたと話しをはじめた。


 この領地で代々毛織物を営む、両親から一度もそんな話を聞いたことがないと困惑するティーラと、側にいたお父様の執事、メイド達も同じ表情を浮かべている。


(マント男爵? はじめて聞く名前だわ……でも、この書類の文字は、リースお父様の文字に似ている)


 彼らの話を聞いていくと。ティーラが成人前で、まだ子供だからと言い始め。屋敷、領地経営を我々に任せなさいとも言った。


 ティーラは驚きで声を荒げた。


「い、嫌ですわ。なぜ? 見ず知らずのあなた達に、ここの領地を任せなくてはならないのですか? ここには私を手伝ってくれる、お父様の執事とメイド達がおります」


 しかし彼らは。


「そんなもの役に立たない。それに子供のお前では何もできないだろう?」


「そうよ。わたくしたちに任せなさいな」


 ティーラが子供だからなのか、上からの物言いに狼狽えたが、精一杯首を振った。


「いやです、余計なお世話ですわ! 自分の力で、やりますのでお帰りください」


 ティーラが強く言うと、相手も強気に出てくる。


「何? せっかくの私たちの親切を棒に振るきか? フン、君の両親もそうだったな――親子揃って」


「なんですか、いきなりやって来て、亡くなった……両親の悪口を言うのですか?」


 彼の話す内容に腹を立て反論したが、ティーラが子供の戯言と取られた。これならどうだ? と男爵が背広の内ポケットから手紙を出すとティーラに見せた。その手紙の内容は「自分達に何かあったら、あとを頼む」と両親が男爵に宛てた手紙だった。


(……お父様の手紙?)


 その当時のティーラは子供過ぎた……彼らが持ってきた契約書、両親の手紙が全て、マント男爵によって偽装されたものと気付かなかった。両親を失ったばかりで悲しみにくれる――ただの十三歳。ティーラには執事、使用人の他に頼れる親戚も大人の知り合いもおらず、やってきた大人に捲し立てられ、半ば奪われる様にして彼らに領地経営を任せてしまった。


(心配だけど……あんな、上から物を言われると怖いわ)


 だけどティーラは勇気を振り絞り、彼らに一つだけ条件をつけた。それは十三歳のティーラが十八歳になったら、領地を返して貰うというものだ。その書類もマントが弁護士を呼んで制作した。ティーラは屋敷にそのまま住み、家庭教師を雇い、近くの学校に通いながら領地勉強を五年間するつもりだった。


 それは徐々に上手くいくなくなる。彼らはお父様の執事、メイド達を次々と難癖をつけ辞めさせ、自分の屋敷から執事とメイドを呼び寄せた。しだいにティーラの味方は誰もいなくなる。


 ――そして、


「あなた、ムカつく」


 マント男爵の一人娘、同じ歳のセシールよりもティーラは成績がよかったらしく、しまいに彼女に嫉妬されるようになった。それからセジールはティーラと一緒は嫌だ、食事も一緒は嫌。あれもこれも、ティーラと一緒は嫌だと言い出す始末。


 それを我慢して一年が経ち、マント男爵との暮らしにも慣れてきた。何事もなく五年間がすぎて欲しいと、願っていたティーラの願いは消える。


 ある日、セジール様は私物が無くなったと騒ぎはじめ、ティーラが彼女の物を盗んだと言った。


 ――その話は嘘だ。


 執事、使用人の証言と、マント夫婦も自分の娘セジールの嘘だとわかっていたがこれ幸いと。邪魔なティーラを追い出せると、娘のセジール様を信じるフリをした。


 弁護士との話し合いでも、ティーラは反論したが話は覆らず。十四歳のティーラは領地のルース村へと追いやられた。


 彼らと弁護士はグル、ただの没落寸前の男爵貴族だったと知らずに。

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