「半分ちょうだい」
私たちは、双子の姉妹。
いつも、二人は同じくらいに幸せよ。
ケーキを食べる時は、ナイフできっかり二等分。
ジュースも、比べあってぴったりに。
食べるタイミングも、一緒なの。
それだけじゃないわ。
喜びも、悲しみも分かち合うの。
秘密ごとは無しって、約束したから。
絶対に離れないって、誓い合ったから。
世界の魂は、二つだけで十分満たされる。
いつしか、姉か妹かも分からなくなって。
名前も、ごちゃごちゃになって。
身体も混じり合って、溶け合うの。
あなたのことなら、何でも知っているわ。
そう、思っていたのに。
ある日、妹が男の人を連れて歩いているのを見た。
それは、私が知らない人。
あってはならないことが、起きていた。
「あの人、だぁれ」
問いかけても、口をつぐんで何にも答えようとしないんだ。
だから、何度も何度も繰り返した。
しまいに、妹は涙まで流し始めたの。
そんな涙を、私は知らない。
私が知らない、あなたなんていらない。
泣きながら謝る妹に、赤子をあやすように優しく囁きかけた。
「半分ちょうだい」