「私、お仕事がんばります」
見つめ返してくれる閻魔さま。なんて素敵なの。私、閻魔さまのためならどんどん残業しちゃう!
「遅い」
ふいに背後から声ががかかった。
「
閻魔さまは私の方を向いたまま、ゆっくりと手を離す。振り返ると、ソファの背後に立っているのは
「どうした? 珍しくイラついてるな」
篁に見向きもせず足を組み、可笑しげな声を上げる閻魔さま。
え? 篁っていつもこんな感じじゃなかったっけ?
「……」
「分かった、分かった。邪魔者は退散しますよ」
閻魔さまは、欧米人みたいに手のひらを上に向ける。
「じゃあね、紗那ちゃん。また様子見に来るから」
そう言って手を振ると、閻魔さまの姿はパッと消えてしまった。ホント、神出鬼没だなぁ。
「サボるな」
一言発すると、篁はスラリとした背をこちらに向けてさっさと歩いていく。
「研修だって言ったじゃないですか!」
思わず追いかけて反論した。自分の仕事が増えるからって八つ当たりしないでほしい。
篁がつと足を止める。
背中は私に向けたまま。
「……手を握り合うことがか?」
見てたわけ?
そんなの知らない。閻魔さまが勝手にしたことだ。
「閻魔さまって、誰にでもあんな感じじゃなんじゃないですか?」
言いながら納得した。獄卒ちゃんともいいムードだったし、タナカにまで「かわいい」って言ってたもの。
「きっと、サービスしてくれてるんですよ」
「行くぞ」
答えずにスタスタ歩き出す篁。
もー。研修終わったら帰ろうと思ってたのに!
◇
研修を終えてから、二人の迷い人を中央の席へお連れした。冥界の詳細を知る前とは、やはり気分が違う。
とはいえ、そろそろ定時だ。
帰ろうかな、と思った矢先。
「えぇっ!? おい、何なんだよ!?」
振り向けば、金髪にピアスの男性が尻もちをついている。年齢は私と同じくらいか、もう少し上か……。
今日、なんか変。
立て続けに若い人が来てる。
「大丈夫ですよ」
男性のそばに駆け寄って声をかける。
「とりあえず上司のところに……」
「おい、どうなってんだ!? 助けてくれよ!」
男性がガシッと私の腕に縋った。
あれ……?
おかしい。
昏倒しただけの人は、身体が透けてて直接触れないはず。さっきのポニーテールの女の人もそうだった。
なのに。
この男性、