「もう来るなって、あれだけ言っただろうがよ!」
これ、もしかして
小麦色の肌。ウルフカットを鮮やかなグリーンに染めて……いや地毛?
半裸に、白のラインが入った赤ジャージ。勾玉みたいな形の重そうな耳飾りをつけてる。耳たぶちぎれない?
俗世にいたら絶対近づきたくないんだけど……。やだ~、よく見ればワイルド系のイケメンじゃない! 趣味の悪さがもったいないなぁ。
鍛え上げられた身体も素敵!
目のやり場に困っちゃう。
【こちら、初七日に裁きを行う秦広王です】
あ、やっぱり。
【困惑する亡者・タナカ。それもそのはず。彼はここに来るのが初めてで、なぜ怒られるのさっぱり分かりません】
確かに。
【まぁそれについては、のちほど】
気になるなぁ。
「まったく」
秦広王さまは毛皮が敷かれた岩の上にどっかりと
怖い。タナカさんも震え上がってるじゃん。
「で。テメェ、俗世で“殺し”はしてねえだろうな?」
「ととと、とんでもない! そんなことしとりゃしませんですじゃーっ!」
タナカさんは、地べたに額をこすりつける。
「あぁん!?」
秦広王さまがやおら立ち上がった。タナカさんの頭を無理やり起こさせると、ロープを首にグリグリと押しつける。
「ぎえぇ」
タナカさーん!
「テメェは、蚊その他の虫を数え切れねーほど殺してる。それに、その歳まで生きてたんなら肉と魚をたんまり食ってるだろうが。あぁ?」
自分が生きるための殺生もダメなの?
厳しい。っていうか、知ってるのにあえて質問するなんて意地悪すぎるでしょ。
【亡者・タナカにメンチを切る秦広王であります】
なんてガラの悪い王なの。
「ヒイィ、お許しを」
【亡者・タナカ、半泣きであります】
やめてあげて。
「まあいい。ここでの裁きは終了だ」
秦広王さまはタナカさんの首根っこを掴むと、どかっと木の板に乗せた。
「とっとと行きやがれ。もう来るんじゃねえぞ!」
秦広王さまバンとタナカさんの背中を叩くと、木の板が猛スピードで滑り出す。
「ヒ──!! お助けをーっ!」