「えっと、三途の川を渡る前に
閻魔さまの質問に答えていく。
秦広王さまが裁くのは“殺生”についてだ。
「そう! 紗那ちゃんは覚えがいいね」
隣に座ってる閻魔さまが褒めてくれる。
研修は、初めて冥界に来た時に
閻魔さまは、真っ赤な巻き物を膝の上に広げた。私にも見えるように、もっと近くに寄れと言う(サイコー)。
「この巻き物でシュミレーションしてみよう」
閻魔さまに言われて覗いていると、巻き物の中に死装束のおじいさんが現れた。巻き物なのに、中は動画みたいに動きがある。
【さあ。“亡者・タナカ”とともに、冥界の成り立ちを学びましょう】
あ、ナレーション付きなのね。
でも勇者みたいな言い方やめて?
やがて、見慣れた畳敷きの空間が現れる。
あ、篁だ。
「大往生である」
篁が羽扇を振った。
顔だけは凛々しい。
おつかれさまです、タナカさん。
【安心して休息をとる亡者・タナカ。あ、獄卒に呼ばれたようです】
お。あの時のスレンダー美人。閻魔さまに、ギタギタに煮た銅を飲ませてた獄卒ちゃんだ。
【ヘラヘラしながらついて行く亡者・タナカ】
タナカさん……。
そのまま進んで行くと、鉄製の巨大な扉が現れた。この空間の先に扉があるなんて知らなかったな。扉が両側に開き、タナカさんは一歩を踏み出した。
【獄卒に話しかけるも、鼻の先で扉を閉められる亡者・タナカ】
追い出された。
この空間の外ってどうなってるのか疑問だったんだけど、タナカさんが行く道は薄暗くて周りが見えない。
不安そうなタナカさん。でも、すぐ安堵の表情になる。少し先に、ぽっかりとした火が見えたのだ。
そこは洞穴のようで、入り口は半円に近い。タナカさんは、明るい火に誘われるように走り込んだ。
「あぁん!? また来ちまったのか、テメェは!?」
洞穴にドスのきいた声が響く。
タナカさんの目に映ったのは。
焚き火に照らされた半裸のマッチョだった。