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8.新人研修スタートです。


 「えっと、三途の川を渡る前に秦広王しんこうおうさまの裁きを受けるんですよね。これが初七日」



 閻魔さまの質問に答えていく。

 秦広王さまが裁くのは“殺生”についてだ。



 「そう! 紗那ちゃんは覚えがいいね」



 隣に座ってる閻魔さまが褒めてくれる。



 たかむらもこれくらい褒めてくれたらいいのに。私、褒められて伸びるタイプなんだけどな。



 研修は、初めて冥界に来た時に面接した応接セットで行われている。



 閻魔さまは、真っ赤な巻き物を膝の上に広げた。私にも見えるように、もっと近くに寄れと言う(サイコー)。



 「この巻き物でシュミレーションしてみよう」



 閻魔さまに言われて覗いていると、巻き物の中に死装束のおじいさんが現れた。巻き物なのに、中は動画みたいに動きがある。




 【さあ。“亡者・タナカ”とともに、冥界の成り立ちを学びましょう】



 あ、ナレーション付きなのね。

 でも勇者みたいな言い方やめて?



 やがて、見慣れた畳敷きの空間が現れる。



 あ、篁だ。



 「大往生である」



 篁が羽扇を振った。

 顔だけは凛々しい。



 おつかれさまです、タナカさん。



 【安心して休息をとる亡者・タナカ。あ、獄卒に呼ばれたようです】



 お。あの時のスレンダー美人。閻魔さまに、ギタギタに煮た銅を飲ませてた獄卒ちゃんだ。




 【ヘラヘラしながらついて行く亡者・タナカ】



 タナカさん……。



 そのまま進んで行くと、鉄製の巨大な扉が現れた。この空間の先に扉があるなんて知らなかったな。扉が両側に開き、タナカさんは一歩を踏み出した。



 【獄卒に話しかけるも、鼻の先で扉を閉められる亡者・タナカ】



 追い出された。



 この空間の外ってどうなってるのか疑問だったんだけど、タナカさんが行く道は薄暗くて周りが見えない。



 不安そうなタナカさん。でも、すぐ安堵の表情になる。少し先に、ぽっかりとした火が見えたのだ。



 そこは洞穴のようで、入り口は半円に近い。タナカさんは、明るい火に誘われるように走り込んだ。



 「あぁん!? また来ちまったのか、テメェは!?」



 洞穴にドスのきいた声が響く。

 タナカさんの目に映ったのは。



 焚き火に照らされた半裸のマッチョだった。





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