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7.お呼び出しです。


 「はいはーい。見つめ合ってるとこ失礼しまーす」



 近くから閻魔さまの声がする。

 ど、どこ……!?



 「やあ、紗那ちゃん」



 たかむらの黒光りする机に波紋が広がったかと思えば、閻魔さまがにょきっと顔を出した。



 「きゃあぁっ!」



 「ふふふ。驚いた?」



 閻魔さまは全身を外に出すと、そのまま足を組んで篁の机に腰掛けた。ちょうど、私と篁の間に入る形だ。



 閻魔さまは、どこからでも現れる。



 懐から手鏡を取り出し、乱れたヘアスタイルを直してる。真っ黒で四角くて、ゴツゴツとした装飾が施された鏡だ。



 「良いムードのとこ悪いね」



 「いいえ、まったく問題ありません」



 すまなそうに謝る閻魔さまに、笑顔で答える。



 良いムードなんてとんでもない。

 阿呆と言われていたところです。



 過剰労働に暴言。

 時代錯誤も甚だしいパワハラだ!



 「またお前か」



 さらに機嫌が悪くなる篁。



 「あれぇ、紗那ちゃん。ビジネススーツなの? 服装は自由って言ったのにィ」



 閻魔さまが不服そうに眉を寄せる。



 「水着でもいいし、何ならこないだのパジャマでも良いんだよ」



 「セクハラですよ、閻魔さま」



 閻魔さまなら許しますけどね。



 服装自由はありがたいけど、ビジネススーツの方が何かと都合がいい。私は実家暮らしなので、へ出勤する風を装って玄関から出なければいけないのだ。



 人目につかない路地裏に入って、周囲に充分気を配った上で鞄に手を入れる。誰かに見られたりしたら大変だ。



 「して、要件は」



 篁が閻魔さまの肩越しにぬっと顔を出した。



 「もー。せっかちだなぁ、篁は」



 閻魔さまは呆れたように篁を一瞥すると、すぐに鏡に視線を戻す。角度を変えながら自分のイケメンぶりを確認すると、満足そうに頷いた。



 「紗那ちゃんも、そろそろ冥界の詳細を知っておいた方がいいと思ってね。ちょっと時間とれるかな?」



 わ。

 新人研修ですか。



 「行きます行きまーす!」



 右手をビシッと上げる私。



 「いいねぇ、意欲的で。そういうワケだから篁、ちょっと紗那ちゃん借りるよ」



 「フン」



 篁は不満そうに机に足を投げ出した。私がいないと自分が動かなければいけないため、面倒なのだろう。



 「研修なら仕方ないですよね、篁さま~。あとお願いしまーす」



 ホントは帰るつもりだったけど、私の感覚だと俗世はまだお昼過ぎ。時間的には余裕だ。




 しかも、超絶イケメン閻魔と研修だよ!




 「どうぞ、紗那ちゃん」



 少し曲げた腕をこちらに差し出して微笑む閻魔さま。私は、ドキドキしながらそこに自分の手を添える。



 冥界万歳!!

 研修終わったら黙って帰っちゃおーっと。





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