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3・冒険者になる為に

 ルノシラ王国、冒険者ギルド前に双子が立っていた。


「ここが冒険者ギルド……」


 シュウは緊張した様子でギルドを見つめていた。


「さっ! さっそく入るわよ!」


 そんなシュウに対して、ユウは緊張した様子もなくギルドの中へと入って行った。


「えっ! ちょっちょっと待てよー!」


 シュウは慌ててユウの後を追いかけてギルドの中へと入った。

 ギルド内は人で賑わっており、双子は慣れていない人の多さに圧倒される。


「……こ……この人達、全部冒険者なのかな?」


 ユウの言葉にシュウが戸惑いながら口を開いた。


「さ……酒場も兼ねてるから違う人も混じってると思う……多分。えーと、それより……」


 シュウが周辺を見わたす。


「……お母さんの話だと、冒険者になる為にはまず受付で登録をしないと……あっあそこだ」


 双子は受付のカウンターへと近づいた。

 受付の前には、アッシュがツバメに話しかけていた。


「なぁーなぁーツバメちゃ――」


「忙しいから無理です」


 ツバメは頭を上げず書類にペンを走らせていた。


「まだ何も話してねぇよ!」


 2人のやり取りに双子が互いの顔を見る。


「シュウ、話しかけてもいいと思う?」


「どうなんだろ、忙しそうに見えるけど……」


「ん~……」


 ユウは少し考えたのち、近づいてアッシュに話し掛けた。


「あの~ちょっといいですか?」


「あん? 何の用だ?」


 アッシュは怪訝な顔をしつつユウの方に振り返る。


「あたし達、受付に用事があるんですけど……」


「あ、はい。なんでしょうか?」


 ユウの言葉にツバメが頭を上げた。

 それを見たアッシュは呆れた表情を見せつつ、ツバメの前を退いた。

 ユウがツバメの傍へと近づき、その後ろにシュウが続く。


「うおっ! 同じ顔!」


 2人でいると毎回同じ反応される為、ユウは無視してツバメに話しかける。


「えと、あたし達冒険者になりたいんですけど……」


「なるほど、冒険者の志願ですね?」


「「はい!」」


「そうですか……ん~……」


 ツバメがジッと双子を見る。

 その視線に、双子は自然と直立不動になってしまう。


「…………うん、特に問題はなさそうね」


 ツバメは頷き、受付の引き出しを開けて登録用の書類を取り出した。

 そして双子にペンと書類を手渡す。


「では、この書類に目を通して問題なければ下にサインをしてください」


「「はい、わかりました」」


 双子は受け取った書類を読み、ペンで名前を書き始める。

 その様子を見てアッシュがケタケタと笑っていた。


「初々しいなー、昔のオレ様を思い出すぜ」


「昔って……たった3年前の話じゃないですか……」


「いやいや、3年前は十分昔だって! てか、もう3年もたつんだしランクアップを――」


「書けた!」


「これでいいですか?」


 双子がアッシュの言葉を遮り、書類をツバメに手渡した。


「拝見します…………ユウ・バーンズさんにシュウ・バーンズさんですね」


「「はい!」」


 ツバメは双子が書いた書類を手元に置き、別の引き出しから紙の束を取り出した。


「では、試験についてなんですけど……」


「「えっ?」」


 ツバメの試験という言葉に双子が驚きの声をあげる。


「それにサインをすれば冒険者になれるんじゃないんですか!?」


 カウンターに両手をつき、身を乗り出すユウ。

 そんなユウに対してツバメは笑顔で対応する。


「流石にサインを書いただけでは冒険者になれませんよ。でも、試験の内容は簡単な物ですから安心して下さい」


「ユ、ユウ……駄々をこねても仕方ないよ。ここはちゃんと試験をうけよ?」


「…………わ、わかった」


 ユウがしぶしぶカウンターから降りる。

 ツバメは取り出した紙の束をカウンターの上に広げた。


「試験内容は、この王国の北にある山に出没するモンスターを1種以上討伐、及び頂上に咲いているクルルア草の採取になります」


 地図、出没するモンスターの詳細がまとめられた紙、クルルア草が描かれた紙を双子に見せながら説明を行った。


「「なるほど……」」


 双子は食い入るようにカウンターの上に置かれた資料を見る。


「この資料は持って行ってもかまわないません。後は……目付け役として現役の冒険者2名が同行する事になっているのですが、希望の方はいますか? といっても、今日来ているかはわからないですし、受けてくれるかもわからないですけど……」


 ツバメの言葉に双子は困惑の表情を見せる。


「えと……僕達に知り合いや知っている冒険者はいないので……お任せって出来ますか?」


「出来ますよ。その場合、私が決めますけど大丈夫ですか?」


「ユウはそれでいい?」


「うん、全然問題無し」


「わかりました。う~ん……それじゃあ誰に任せるか……」


 ツバメは右手を顎に添える。

 すると、横にいたアッシュが両手をあげて自ら志願した。


「はいはい! その目付け役はオレ様がやるぜ!」


「えっ!? アッシュさんが!?」


 アッシュの申し出にツバメは目をまん丸にして驚いた様子で声をあげた。


「おいおい、何でそんなに驚くんだよ」


「いや……アッシュさんが目付け役なんて……しかも自分から……驚きもしますって……」


「心外だなー、オレ様って面倒見が良いんだぜ!」


 アッシュが片目を閉じつつ、親指で自分の胸を叩いた。


「それを自分で言いますか……わかりました、ではお願いします。それで後の1人は?」


「あー……ツレは今日来れないんだよ。まあオレ様1人で十分だけどな」


「それは駄目です、決まりですから。じゃあ、あとの1人は私が決めますね」


「わかった。ツバメちゃんに任せるぜ」


 ツバメが受付のカウンターから出て来る。

 そして、ギルドの奥の席へと向かっていった。


「…………って、ツバメちゃん! まさか!?」


 それを見たアッシュが慌てて後を追いかけた。


「ヒトリ~!! 依頼じゃないけど頼みたい事があるの~!!」


「やっぱり! ヒトリかよおおおお!!」


「「?」」


 アッシュの嫌そうな叫びに双子は不思議そうにお互いの顔を見合い、同時に首を傾げた。

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