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スワンソングとワー・ウルフ。『特殊犯罪捜査課』と『腐敗の王』。

「貴方は一人の人間を新たに殺害して、それによって別の人間を救った。女の子だったわね」

 化座は腕を組みながら、壁にもたれていた。


「嫉妬してる? 僕に? ブラッディ・メリー?」

 白金は唇を妖しげに歪めている。


 化座は少し息を飲む。

 …………、彼の心を解剖しようとして、その底が未だに見えない。


 化座は壁に白金を押し付ける。


「また人を殺してくれて嬉しいわ。でも、今度は私の為にして欲しいな?」

「僕は標的選びを決めている。それに僕は自分のルールを遵守している…………」


 化座は舌を出して、唾液を出し始める。


「朔。貴方は自分自身の事を”正常”で”ノーマル”だと思っている節があるわね?

私は自分が異常倒錯者だという自覚はあるけど、貴方は、それを認めようとしない。

それって、相当、イカれていると思うけど?」


 そして、白金の白い肩に喰らい付く。


 白金の肩を舌でなぞり、彼の耳に舌を這わせていく。


「本当、女の子みたいな肌をしているわね? 女の子みたいな身体なのよね?」


 化座は犬歯を白金の肩に突き付ける。

 ぷつ、ぷつ、と、白金の肩から血が溢れ出してくる。


 化座の腕は、白金の服の下へと向かい、上半身を指先でなぞっていく。

 彼の肌の敏感な処は知っている。


 痛みと快楽で、白金は顔を赤らめる。


 しばらくの間、化座は白金の血を吸い続けた後、彼の肩から口を離した。


「スワンソングが、何故、崇拝したアーティストを殺すのか、私なりにプロファイルしたんだけど」

 ブラッディ・メリーは溜め息を付く。


「人間は変わる。そして完全じゃない。朔。貴方は大学生の頃に犯した最初の殺人の事を考えているわね? その事件。それを繰り返し続けている。時間は巻き戻らないし、もし、私達二人が最初の犯行の罪を犯す前に出会っていれば…………」

 ブラッディ・メリーは、少し空しそうに笑う。


「それは考えるだけ意味の無い事かもしれないけれど…………」


 そう言うと、彼女は白金から離れる。

 そして、廊下を歩いていく。


「私達は、ワー・ウルフになってはならない。エンジェル・メーカーにも…………。


彼らと同じ闇の中にいてはいけないのよ。

私達は世の中からは化け物だと思われているけれど、人間らしい感情もある筈……。

私はもう戻れないけど、貴方は人を救った。

…………、ただ、私には分からないのは、人の命の価値は、成功者と一般人とでは違うのか、と…………」


 そう言いながら、化座は、廊下の向こう側へと消えていった。


 残された白金は座り込み、一人、天井を仰ぎ見た。


「しかし。牙口令谷。どう出る? これは僕からのラブレターだ」

 白金は眼を閉じる。


「ワー・ウルフの正体を知りたいんだろう? それは僕も同じだ」



 腐敗の王は特殊犯罪捜査課から情報を得続けていた。


 そして、あるデータの中に、それが紛れ込んでいた。



……………………………………。


お久しぶり。腐敗の王。


それからその仲間達。


今、誰が仲間にいるのかしら?


八月以来ね。


もしかすると、別の日に何処かで接触した?


処で、この富岡のパソコンに私のメッセージを添えたのだけど。


秘密裏に私達でやり取りしましょう?


私の考えでは、ブラッディ・メリーとスワンソングが仲間にいるわね?


当たっている?


他にも、銃使いのスナイパーと『エンジェル・メーカー』という人物が仲間にいる。


貴方達は何名? まさか五名しかメンバーはいないの?


それで、周りくどい事を書いたけど、私に何かそちらで協力出来る事はない?


貴方達は、私を仲間に入れたいんでしょう?


だから、私は貴方達に協力したい。


スワンソングが貴方達のメンバーの中にいるのなら、貴方は『特殊犯罪捜査課』に協力しているという事になる。


牙口令谷は内心、凄く喜んでいるわ。


ねえ。私を仲間にしたくない?


良い返事を待っているわ。



ネクロマンサー。昼宵葉月より。


……………………………………。


 腐敗の王は、そのメッセージを見て歓喜の表情で満ちる。


「ああ。お前の席はちゃんと用意している。近々、もう一度、接触しよう」


昼宵葉月は、リスクを冒して、こちらにメッセージを送ってきてくれた。


だが。

仮に『特殊犯罪捜査課』の他のメンバーに、このメッセージがバレたとしても、葉月の事だ。


”腐敗の王の側を一網打尽する為に、罠として、ラブレターを送った”。


そう言い逃れをして、切り抜けるに違いない。



自宅の自室の中にいた。

昼宵葉月は、餡蜜を口にしながら、夜の闇を眺めていた。


葉月は、自身の痕跡の一切が、聖世弧志の大きな家の中から出なかった事に小さく安堵していた。もっとも、痕跡が出たとしても、先に特殊犯罪捜査課として捜査する為に、家の中に押し入った、と刑事課の連中には言うつもりだった。


 これでも、葉月は、警察の人間だ。

 警察は、内部の身内の多少の粗相に対しては甘い。


 彼女は、切り裂き魔が殺害した女達の死体を撮影した写真を眺めながら、物思いに耽っていた。


 ……さてと。この私もシリアルキラー『ネクロマンサー』としての犯罪を再開するか?


 葉月は、ドス黒い感情を心の中で滾らせていた。


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