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相談は計画的に

「わっ!!」

「うオッ!?」


「にひひ、さっきの仕返し。どうしたの? 決まらないの?」


 後ろから声を掛けられて、思わず驚いてしまった。振り返ると、悪戯が成功して上機嫌のイヴが俺の選んだ御三家を覗き込んできた。


 風魔法の指輪、怪力の腕輪、シールドの髪飾り。イヴが見やすいように、手に持って差し出してやると、イヴは不思議そうに首をコテンと傾けた。


「‥‥‥何で悩んでるの? どれもよさそうなものだけど」


「いやね、これが良いとこ悪い所が絶妙で。聞いてくれるかい?」

「う、うん。取り合えず、聞くよ」


 前のめりになってイヴに相談しようと思った。しかし、俺の熱はイヴには伝わらなかったけれど、熱があることは伝わったいみたいだ。


「まずこれ、俺のイメージだとこう。バンバンってな感じでね」


 指でピストルを作って、窓の外の木の枝狙って指を弾く。勿論風に揺れるだけで、枝が折れたりすることはない。だがしかし、ロマンは伝わっただろう? 

 そう思い、イヴの方を見やると、苦笑いを見せて来た。


 このロマンわからんかぁ~。


「で、何が悪い所なの?」

「分かりやすく威力が弱い。子供のおもちゃ」


「でも護身用だよね、威力十分なんじゃ‥‥‥」

「違う、違うんだよ! せめて魔道具ぐらいは、強い魔法をぶっぱなしたいじゃん。‥‥‥俺、大きな魔法撃てないし」


 小さな魔法を工夫して殺傷能力高めてるだけだもん。フィオナのレーザービーム見てからね、こう自分のちっぽけさを痛感してしまったのさ。


「‥‥‥小さな魔法の鋭さが神話級なんだけどね」


「んあ? なんか言った?」


 ごめん、指鉄砲を連射してたから聞こえなかったよ。


「いんや、何でもないよ、で、次のは?」


 小さく首を横に振るイヴ。なんか聞かれたくないことか? ならば良し、追及はせん。俺は話の分かる男なのだよ。


「えっとね、次はこれ。怪力になる腕輪。なお、皮膚、骨、筋は強化されておりません」

「‥‥‥メリットは?」


 メリットが無くなるほどのデメリット。そう言いたいのかい君は?


「そんなもの決まってるじゃん。ちゃんと制御できれば、近接戦最強じゃない? 投げたり押したり、格闘術を習ってない俺が出来ることなんて、限られてる。でもそれが一番うまくいく。ね? 実用的でしょ?」


「ん、あぁ。そう考えれば。だけどさ、それって上手くいけばの話でしょ?」


 ぐぅの音もでませんで。で、でもさ? 普段から練習したらきっと使いこなせると思うんだよ。ほら、調教師も力仕事な部分あるし、その時に練習すればさ?


「普段から使っていけば、土壇場でも上手く使えるんじゃない? ほら筋肉って使えば使うほど、強くなるってい――」

「ダメダメ!! 絶対他のが良い!!」


 急に大きな声で否定された。絶対俺に筋肉が付くのを嫌がっただけじゃん。一番実用的なのに。


「つぎつぎつぎー!! これでしょ! 最後の耳飾りの! シールドだしいいんじゃない!? これでいいよ!」


 自分で説明欄を読んで、もう俺が説明する隙も与えてくれない。

 相談だよね? 相談って、まず俺の意見を聞いてからじゃないんですか? とイヴに伝えたところで話を聞いてくれなそうなので、勝手に始めましょう。


「えー、三つ目です。髪飾り型の魔道具で、シールド効果が付与されています。さて、こちらの悪い所はですね、髪を伸ばしていないと、着けたときに変な感じになってしまう事ですね。逆に髪型をおしゃれにすれば、付けられないこともないのですが、如何せん髪が伸びると鬱陶しくかんじますしね、悩みますよ、これは」


 うむうむと、三つの中から一つ選ぶことの難しさを、一人で納得していると、俺の服の裾を引っ張る感触があった。


 自分の世界から戻ると、イヴが眉を八の字にして、こちらを見ている。


 あ、自分の世界から戻って来たのね。おかえり、じゃあ俺も普通に戻りますよ。


「ゴホン、で、ちゃんと考えたときに、どれがいいと思う?」

「‥‥‥どれでもいいと思うんだけど、強いて言えば、シールドじゃない? 自動発動だから楽だよ」


「ふむ、確かに。それも一理あるな」


 新しい角度からの視点。やはり相談してよかったね。


「ところでさ、ずっと気になってたんだけど。‥‥‥三つとも全部買っちゃダメなの?」

「ッ!?」


 やだこの子、貴族の考え方してらっしゃる!? 

 貴族だから仕方ないんだけど、普段一緒にいて貴族っぽさを感じなかったから忘れてたけど、金銭感覚って、ちゃんと生活水準が現れるんだぁ。


「イヴ、僕はね? 庶民なんだよ? 自分の懐にそんな大量のお金を持っている訳じゃないのね?」


「持ってるじゃん、僕たちなら。ほら、お父さんが渡してくれたお小遣い。これは二人の共有のものだよ?」


 はぁ、全く。与える側の貴族様に染まっちゃいましたか。


「それを俺がそんなに無暗に使う訳にはいかないでしょうよ。普通はこういう時、三割以下が俺の取り分じゃない?」


「いやいや、僕はいつでも街に来られるけど、ランディはお客さんでしょ? ランディのためにお父さんがくれたんだよ? せめて半々にしない?」


 うぬぬぬ、それを言われるとそうなんだけど‥‥‥。

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