目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
最初の御三家

「‥‥‥あるぞ、いっぱい食べれる方法」


 俺たちの会話が聞こえていたのか、ダダライブがこちらに視線を向けることなく、作業をしながら教えてくれた。


 だにぃ!? そんなものが存在していいのか? 脳の回路をいじくったり、直接胃袋をいじったりするんじゃなかろうな。

 それはもう外科手術だよ。闇医者の所業だよ。


「教えてください! その魔道具はどれですか!?」


 ほら~、イヴが興味を示しちゃったじゃん。どうしてくれんのよ。意外と頑固なんだから、こうなったら俺の風に飛ばされるほど軽い言葉じゃもう止められませんぞ。


 頼む、イヴの決心が揺らぐほどの変な魔道具来い!


「そこの棚の下から二番目。右から三番目だ。‥‥‥おう、それだ」


 ダダライブの指示通りに、探して、見つけた魔道具を手に取ってみる。

 サッカーボールより一回りぐらい大きいそれは、透明のガラス球体で、中が見えるようになっている。その中身は、空洞であり、外側には魔石交換のための小さい箱が付いている。


 なんだこれ? この金魚鉢みたいなものが、いっぱい食べれるようになる魔道具らしい。どうやって使うのだろう。


 商品の値札タグにも説明が記載されていない。本当になんだこれ?


「えっと、全然使い方が想像できないんですけど、これは一体‥‥‥?」


「その中に食べたいものを入れ、蓋をして、スイッチを押す。すると、中身の食べ物が圧縮されて、小さくなる。いっぱい食べれる。以上だ」


 そんな馬鹿な。なんて脳筋な魔道具なんだ。


「えっと‥‥‥」


 イヴがたたらを踏んだように、言葉を見つけられないでいる。そらそうなりますよ。

 しかし、この展開はイヴに筋肉を付けさせたくない俺としては朗報だ。


「だから俺は一言も魔道具なんて言ってないぞ。魔道具はちゃんと効果が発揮されてこそ魔道具だ。そんな人を選ぶものは失敗作だ」


 失敗作を置くなよ。あと、人を選ぶってことは、効果ある人が居たのかよ。どうやって効果を得たのだろうか。

 小さくなった分だけ、噛む回数が減って、満腹中枢を刺激されづらいとか? でも質量は変わってないよな。パーナム効果だっけか? あれかな?


「そう、なんですね」


 そっと元にあった場所に戻すと、がっくりと肩を降ろした。満面の笑みで肩に手を置いて励ましてやる。


「筋肉なんてなくたっていいじゃない」

(別の方法を試してみようよ)


 ハっ!? しまった本音と建て前の逆転現象を起こしてしまった。く、卑怯なり、誘導尋問。


 イヴからのジト目をこの身に受ける。最近こういう展開多くないか? ‥‥‥でも、なんだかんだ言って俺も友達多い方じゃないし、こういうやり取りも嫌いじゃない。


 嫌いじゃないが、その視線を受け流すように、くるりくるりとその場を離れて、他の棚を物色する。


「えぇっと護身用の魔道具はっと‥‥‥」


 さっきみたいなことがあるかもしれないからね。ちゃんと良い物を選ぶようにしよう。テキトーに選ぶ。ダメ、ゼッタイ。‥‥‥ていうか、あれ何でカタカナなんだ?



 護身用の魔法が使える魔道具の棚を探すのは、存外に簡単だった。

 腕輪だったり、指輪だったり、ネックレスだったり、小物が多いから見つけやすくて助かる。


 その中から説明文をしっかり読んで、良さそうなものを見繕う。


 そして、三つまで絞った。


 一つ目! 人差し指に嵌める指輪型の魔道具で、指の指した方向に風の弾が飛んでいくという代物だ。スイッチを押すなどの動作を必要としない反面、魔力を少し流すことで発射可能らしい。

 子どもの頃に夢見た指ピストルを実現可能だ。ふふふ、威力無視、かっこいいだけ。ロマンだねぇ。


 二つ目! 腕輪型の魔道具。なんと怪力パワーで、パンチ力が向上します! 凄くないですか? 

 実際には、パンチの威力が向上しても、拳の強度が上がったわけではないので、普通に怪我をするので注意が必要だ。よって、正しい使い道としては、相手に対して、掴んだり投げたりするのがいいらしい。


 余談だが、身体能力を向上させる魔法を使える人は、自身の身体の強度も上げているので、問題なく岩を砕いたりできるらしい。俺も使ってみたかったよ。


 三つ目! 髪留め型の魔道具で、これを付けていれば、あら不思議。一定威力以上の魔法を感知すると、自動でシールドを張ってくれるのだ。

 護身の術は守りにありってことなのだろうか。いや、一番はそもそもそういう状況にならないことがいいんだけどさ。


 そーいえば、最近髪の毛が少し伸びて来たんですよ。フィオナがガシガシと俺の髪で遊ぶものだから、ついつい切りそびれちゃってるんだよね。だから髪留めという選択肢も出来たわけだけど、片側だけのこして、後はさっぱり切ろうかな。


 この魔道具を付けていれば、おしゃれとして見られるんじゃなかろうか。


 ふふふ、ビジュアルにもこだわる質の男子なのだよ、俺は。ククルカ島のムサい男どもと違ってな!! ‥‥‥それに、ソーニャにもアイシャにも、カッコいいって思われたいし。



 さて話が脱線したけれど、どれが良いだろうか。性能的には二番目、見た目なら三番目。ロマンを求めるなら一番目。


 さて、どれにしましょう。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?