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散策ついでの~王都滞在編ⅡⅩⅡ~


「あー、じゃあ僕の幼馴染のソーニャも一緒に同じ条件でやれるかどうかも考えてみてくれませんか? ここに来たのも二人で、冒険者免許証もってると他の街に行くの楽だよねっていう彼女の発案からだったんですけど、僕だけ持ってても意味がないというか」


「分かりました。聞いておきますね。ただ本日はギルド長不在のため、返事が分かり次第、ギルド長から手紙の方を送らせていただきますが、よろしいですか?」


「はい、それでお願いします」


 俺の返事を聞くと受付嬢はさっさとギルド長への伝言のメモをとって後ろに下がっていった。それを見届けたのちに、俺とソーニャは冒険者ギルドを出た。


 最後まで、誰かに絡まれるんじゃないかと思って油断せずに周りに気を配っていたけど、案外テンプレートなことは起きないもんだな。


 まぁ、無事で何より。平穏が一番ですな。


「とりあえず行きたいところには周れたから、あとは市場とか表通りで冷やかしにでも行こうか」


 10万も残ってるしね。それにしても一日で100万の散財、ガハハこれが貯金できていれば‥‥‥。貯めるのは長く、消費するのは一瞬。



 やって来た市場では、様々な露店が道を挟むように並んでおり、また大きくひらけた場所にはテントの様な屋根を張り、敷物を敷いて、その上に出品している人達が多く並んでいた。しかし中古品はなく、ハンドメイドのものばかりが出品されている。


「こういうところに意外と掘り出しものがあったりするんだよね‥‥‥って、えぇッ!?」


「ん? どうした?」


「あそこで出品してる人‥‥‥ハバールダの街でも出品してて、街の変なおじさんとして有名な人なんだ」


 黄色い液体、よくわからん黒い串焼き‥‥‥うっ、吐き気が。


「大丈夫? 体調がすぐれないなら宿屋で休む? レッツ休憩」


 なにかは分からないけど、そこに行ってはいけない気がする。その手をワキワキするのをやめなさい。


「いや、大丈夫。ちょっと気になるから覗いていってもいい?」

「うん、いろんなところ見に行こ」


 ソーニャに同意を得れたので、そのお爺さんのお店に並んでいるものを確認する。あ、ここでも少し周りの同じように出品している人たちから間隔を空けられている。ってことは、ろくなもん出品してねぇんだろうな。



 でもね、気になっちゃうのはなんでだろう。


「‥‥‥らっしゃい」


 無愛想ながらもちゃんと挨拶してくれた。挨拶は出来るように成長したのに、並んでいるものは依然としてよく分からないものが広げられていた。


 経験則として、瓶に密閉されてるものは危険。視界にも入れないようにしよう。そしてトカゲの丸焼き、蝙蝠の羽焼き。好きねこれ。お、これは前には無かったやつだ。


 風呂敷の上の物の一つに目が留まった。それはまん丸の茶色い団子だ。なんだろうか、粒あんにも見えるが俺の知っているのと色が違う。ってことは餡子ではないだろうけど、豆っぽさはあるんだよな。


「すみません、これなんですか? 食べ物、ですか?」


「あぁ、だが人間用じゃないぞ、動物用の餌だな」


「へぇ~、おやつみたいな感じですか? 」

「いや、その逆だ。薬みたいにくそまずいらしい」


「らしい?」

「あ、いや、俺は食べた事ないんでな。試しに食べた奴がそういっていた」


「なるほど」


 ここで俺は良いことを思いついた。フィオナに悪戯で食わせてやろう。それか変なもの喰ったときに嘔吐剤として保管しておくか。いや、面白そうだから食わしてどんな反応をするか見ものだな。ぷくく、楽しみだ。気分は赤ちゃんに初めて酸っぱい物を食べさせる親の気持ち。


「これって一週間ぐらいは持ちますか?」


「そうだなぁ、持つとは思うが、日陰の涼しい所に保管しておけよ」


「分かりました。じゃあ一個ください」

「まいど」


 手に入れた団子はつるつるとした葉っぱに包んでもらい持ち帰ることにした。


「なんか、あのお店に売ってるもの買っちゃうんだよな」

「なんか惹かれるものでもあるの?」


「ん~、わかんないや。それよりさ、他のものも見てみようよ」


 変なおじさんの露店をでて、テントの隙間を抜けて色々なものを物色する。すると、ソーニャがふと足を止めた。後ろで足音がしないことに気が付いて振り返ると、ソーニャはとある露店の商品の一つに目を奪われていた。


「その髪飾りが気に入ったのか?」

「え!? あ、ちがくて、その‥‥‥うん」


「おじちゃん、これ頂戴」


 薄ピンクと白の複色の花を模った、シンプルながらも洒落っ気を残したかわいらしいものだ。良く似合うだろう。


「いいの?」

「うん、ソーニャ、ほらかわいいじゃん」


 俺がその髪飾りをソーニャの髪に通してあげると、彼女は顔を赤らめ、小さな声で「ありがとうと呟き、照れたように髪飾りを撫でた。


 お値段もハンドメイドにしては高かったからいい物なのではないだろうか。気に入っているようだし、なるべく長くもってくれると嬉しいな。


 ソーニャは俺の裾を掴み、後ろに付いてくる形で市場の散策を続けた。


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