「たったいま報せが入った。この国の南に位置する場所で新たなダンジョンが見つかったらしい。ククルカ島からもそれほど離れていないそうだ。これから詳しい話を聞きに行くが、ランディ、お前も来るか?」
わお、ダンジョン何気に異世界転生してからその実態を見たことが無いんだよな。
それにククルカ島が近いなら4年ぶりに帰省してもいいのではなかろうか。
「行きます。ちなみに同郷のソーニャも連れて行って良いでしょうか」
「うむ、恐らくそれほど秘匿事項となるわけでもなかろう。連れてくると良い」
良い返事を貰えた俺は、そのお言葉に甘えて、ソーニャを呼びに行く。バルコニーでアイシャと楽しく話している姿を見つけた。おぉ、仲良くなってる。ソーニャに友達が出来て俺は嬉しいよ。
事情を話し、戻るとちょうど、第二王子がパーティーの閉会式を行っている最中だった。ここでも変に隠しごとはせず、吉報が入ったので、第二王子と俺は席を外すことになったと告げ、周りの貴族も気にはなっている様子で、召使やら従者にそれとなく指示を出していたので、直ぐに事情を知ることになるだろう。
そんでもって式が終わると、俺は軽い足取りで、この場を後にする第二王子についていく。
第二王子を先頭にして、辿り着いた部屋には既に、何人かの大人がおり、俺らが部屋に入ると、第二王子に頭を下げて軽く挨拶すると、俺たちを一瞥した。
「それで、後ろの方々は? 見たところまだ子供のようですが」
「彼らは調教師の聖地ククルカ島出身の者たちです。それに片方は調教師として働いており、あのザンキさんのご子息です」
手の平で紹介されたので、一歩前に出て名前を告げる。
「ご紹介に預かりました。ククルカ島出身、ザンキの息子のランデオルスです。こちらは私と同じくククルカ島出身、島長の孫娘であるソーニャです」
俺が紹介すると、ソーニャはカーテシーをして、直ぐに一歩引いた。俺もこんな厳格に会議するもんだと思ってなったから、ソーニャと同じく、影を薄くして聞き役に徹しよう。なるべく目立たずに行こう。
「ほう、これが噂の子ですか。なるほど、何か有用な情報が出るといいですね」
先ほどまでの厳しい視線はどこへやら、俺たちを見る目が柔らかくなった。今発言した長髪の男性のお陰かも知れない。ここにいる他の人たちも追従して頷いている。俺たちを除いたこの部屋の中では立場が上の人なのだろう。
「私は、ダイオット冒険者ギルド本部、ギルド長のセリウス・トポコロイだ。よろしく頼む」
うわぁ! ギ、ギルド! 異世界あるあるのお偉い人だ! ククルカ島に生まれてなかったら絶対冒険者になってたね、俺は!
一人で感動していると第二王子が話を進めるように促した。
「じゃあお互い自己紹介が済んだという事で、早速話を聞こうじゃないか」
え? 他の人の紹介がまだ済んでいませんが。そちらの短髪に剃り込みの入った方も、あちらの片目に傷の入った人も、まだ紹介されてないのですが? あ、別にいい? さいですか。
気になるけどねぇ。
用意された席に促される様に座ると、まだ小さい体では足も付かないし、机の上に広げられた地図も上手く見えない。ていうか地図なんて俺に見せていいのだろうか? こんな詳細な地図は国の軍事機密だったりすると思うのだが。
ソーニャにそれとなく聞いてみると、「私は何も見ていない」とだけ返って来た。なるほど、じゃあ、俺も見てません。もし、覚えてしまったら一生この国から出られないのだろうか。こわ。
「はい、ではまず今回見つかった新たなダンジョンは、ククルカ島より北東に5時間、本土のミオネル領の港町、タンケイから6時間の海上に生まれました」
「また微妙な場所に出来たな‥‥‥」
「海上ダンジョンか」
それを聞いて、皆一様に眉をひそめて、思案顔になった。
ん~、ダンジョン目的で人が増えて、ククルカ島の海竜たちのストレスにならなければいいと思ったけど、これなら移動費で本土の方が安く済むし、ククルカ島に来る人は少ないだろう。
「強力な魔力発現を確認して、既に現地に赴き、確認して参りましたので位置については確定の情報です。また、ダンジョンは地下型水棲系だったようです」
「海上って時点で、お察しではあったが‥‥‥」
「面倒くさいダンジョンになりそうですね」
よもや不人気ダンジョンなのでは? 人が集まらないと、周辺の街も発展しないばかりか、ダンジョンに魔物が飽和して、スタンピードを起こすってネットで見たことあるぞ!
そうなると、まずいですよね。せめて報酬がすごく美味しいとか、雑魚ばっかとかであって欲しい。
「なるほどな、それで、この二人か」
偉そうな見た目の人が偉そうな態度で、俺たちのことを見た。ほなええか、間違ってないし。
「あくまでまだ“仮に”の話なんだけどね、もし冒険者たちが集まらないようであれば、ククルカ島の海竜たちの、軍事演習もかねて定期的に魔物討伐なんてどうかな? と思う訳なんだよ」