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ルート~王都滞在編Ⅵ~

どこですのん。名前からして大きそうな場所っぽいけれど、あれ、具体的に学校って何をするところなんだ?


自分が専門学校のようなところに通っていることで、学校で学ぶことが具体的すぎるあまりに、普通の学校では何を学ぶのか全く想像できていないランデオルスは、素直にソーニャに尋ねてみることにした。


「王立中央学院? ってところでなんの勉強をするところなの?」


「ランディの通うノミリヤ学園とは全然違うよ。普通の一般教養だけ。普通の学校」


「へ〜、普通の学校か。いいなぁ通ってみたいよ」


楽しそうな文化祭とか体育祭、学校行事なんかもあるのだろうか。異世界で学園青春ラブコメか。


この世界の住人一人ひとりに、そういう物語があったお陰で、俺もソーニャも生まれたんだよな。


人の恋の悩みはクソほど興味ないけど、ちゃんと愛するという尊さは知っているつもりだ。


そんな連綿と紡がれてきた物語の種を見てみたいし、なんなら参加して近くで見てみたくもある。


というのは異世界に幻想を抱きすぎかな?


「そ、それはダメ!」


ソーニャは机に両手をつき、身を乗り出して全力で止めてきた。


何故?


もしかして、何か秘密にしてることでもあるんですか?


「どうしたのさ、普通の学校でしょ?」

「そうだけど! そうなんだけど〜、うぅ」


俯いて指をもじもじと遊ばせるソーニャはこれ以上理由を喋ってくれなさそうなので、周りの人に「どういうこと?」と視線を送った。


「王立中央学院は、貴族の通う学校です。貴族の多くはそこで生涯の伴侶や、交友関係を広げることを目的に通います。ソーニャ様は、ランデオルス様が他の方と懇意になるのを危惧しておられるのでしょう」


「ヒナス!」


ヒナスと呼ばれた女性の従者が俺の疑問に答えてくれた。ソーニャは顔を真っ赤にして諫めるも、当の本人は澄まし顔。いや、ほんのちょっぴり口の端がニヨニヨと口角を上げてる。


ヒナスと呼ばれた女性とソーニャの関係性が窺える。良い関係性を築けてるのだろう。


「そんなところに平民の俺が行ってもモテないだろ。それにしてもソーニャはどうして貴族の学校に通ってるんだ?」


ソーニャはククルカ島の村長の孫娘ではあるが、王国の貴族ではないはずだ。


俺も入れる可能性があるのであれば、平民にも門が開かられているのだろうか。


と言っても狭き門ではあるのだろう。ソーニャってもしかして優秀?


「入学志願は自分の意思だったよ」

「へぇ、・・・・・・ん? だった?」


気になる言い回しだ。なんか、変なことに巻き込まれているのだろうか。


「まあね。とにかく自分も凄い人になりたくて入学したの。具体的には何も決まってないんだけど。そしたら何故か色々上手くいって、今ランディのパートナーになれたよ」


「そうだよ! びっくりしたんだから。どういう経緯でそうなったのさ」


パンと柏手を打ち、今度は俺が前のめりになった。




ソーニャが話してくれた内容は、政治的内容だったが幾分か学園側が配慮してくれた結果らしい。


王国としては、命を救われたことに対するお礼はもちろんのことだが、優秀な調教師、さらには単騎で大型の魔物と海中戦で勝てる実力の者が他国に渡らないよう、留めておくために美人で同年代の女性を当てがわせ、少しでも王国に未練を残せれば儲け物ということらしい。


そして選ばれたのが、その条件に当てはまり、王立中央学院の成績優秀者であり、幼馴染であるソーニャになったというわけだ。


もしも学院側が本気で俺を囲いに来ていたとしたら、少し年上の貴族の娘をあてがわれて、その縁から婿養子まで見えていたんだとか。


そこをソーニャが立候補して、学院側がこれを許可したために、ここにいるらしい。


一応俺も今回は招待された側だし、その親しい者である人物の意見を無碍にはできないって感じか?


変に後から悪評広められても困るしね。知らんけど。


「ありがとね。知らないところでソーニャに助けられてたんだね」


「ううん、私がしたかったからしただけ。だから別にいいの。ランディは多分好きなように生きるのが1番だから。・・・・・・あ、でも、モテるのだけはちょっと、いや」


「俺なんてそんなそんな。学校でも親しい友達と呼べる人なんて一人ぐらいだし」


イヴがいてくれるだけいいのだ。友達なんて、友達なんて・・・・・・今夜は枕が少し濡れそうです。


「俺なんかより、ソーニャはどうなのさ。学院でモテモテなんでしょ?」


「んー、わかんない。他の男に興味ないから」


これはモテてるやつです。あ、でもそうか。この世界でお付き合いとか、告白とかってあるのだろうか。貴族の子息として、案外そのあたりは厳しいのかもしれない。


将来のことを考えたりすると、平民と付き合うという事が、もしかしたら経歴に傷がつくとして、告白までは行かなかったりするのだろうか。


「そもそも、貴族に告白する文化ってあるの? ククルカ島や平民ではよく聞くけど」


「んー、あるにはある。でも、ほとんど上から目線で、実質命令みたいに聞こえるから嫌なの」


「へぇ。てことは告白されてるのか」


今のソーニャなら引くて数多だろうな


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