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適性検査~入学Ⅷ~

「さて、制限時間は一刻だ。この砂時計が落ちるころだな、早く終わったら言ってくれ。それじゃあ‥‥‥はじめ!」


 大問一、計算問題。勝ち!

「ある劇場の入館料は、大人二人と子供三人では三千百円、大人一人と、子供四人では二千八百円。大人一人と子供一人の入館料をそれぞれ求めなさい」


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 大人八百円、子供五百円


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 大問二、魔法学。これは不安。ちゃんと習ったわけではないしな。

「魔力について説明しなさい」

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 魔法を使う際に必要とされる、世界に干渉することのできる、限りなく0に近い質量を持つ意志のかたまり。自身の体内及び、空気中、小石にいたるまですべての中に存在する。

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 大問三、歴史。負け!

「現王国の初代国王の名前を答えよ」

「三代目国王治世のとき、ガッサムルの戦いで活躍し、英雄と呼ばれるようになった人物を答えよ」

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(空欄)


(空欄)

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 大問四、海竜問題。あんまり自信はないけどこれであってるはず。

「海竜の生息地域の気候を答えなさい」

「海竜の罹患する病気として主たるものを3つ答えよ」


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 一年を通して温帯で、嵐の少ない気候


 リードン病、バオバオ病、カシオーム・サイフォン症候群

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 大問五、自由作文

「あなたが海竜について学びたいと考える理由を書きなさい」


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 海竜を知りたいと思うようになったのは、大事な家族を守りたいからです。


 私は今よりも幼いころから魔法の発現が出来ました。しかしそれは魔法と言えるようなものではなく、威力も質も何もかも劣っていました。魔力量が普通の人に比べて圧倒的に少なかったのです。それを気づかせてくれたのは調教師である私の父です。


 父は調教師のなかでも優秀で、ククルカ島の調教師の取りまとめをしていました。そして海竜の調教には魔法を用いることを知りました。


 調教師にも慣れないのかと考えていると、それを手伝う仕事をすればいいと言われました。なにより私が海竜を好きということを慮っての言葉でした。そこから海竜に携わる仕事をすると決意しました。


 そしてその直後、元野生でククルカ島に引き取られた海竜であるフォルと出会いました。フォルは元野生ということもあってか、担当調教師や日々お世話をしている人にもなかなか懐いてはいませんでした。


 しかし、私が町で買った笛を吹いていると興味深そうにこちらを覗いていました。ある日海竜たちを海で遊ばせていると、フォルが目と鼻の先にやってきました。驚いてる私にさらに不幸が重なるように、沖で出現したクラーケンの影響により生まれた高波が私を海へと飲み込みました。


 気が付けば無人島です。傍にはフォルもいましたが、海竜は魔物です。無人島での孤独、魔物と一緒、今思い返せばかなり焦っていたと思います。


 お互いに傷つき、死ぬかもしれない状況に出くわしても、一人と一匹で支えながらなんとか生き抜いて、脱出しました。幸いなことに島の皆が捜索依頼を出していてくれたこともあり、無事保護されて帰ることが出来ました。


 私はその無人島でフォルと過ごした数日で、海竜にも感情があり、相手を思いやる心があることを知りました。


 それから私とフォルはまるで家族のように接してきました。少しだけれど言うことを聞いてくれるようにもなりました。調教師になれないと言われた私がです。


 そこからは必死に調教師の仕事について回るようになり、怠惰だった自分がやっと本気になることが出来ました。そのなかで信念も生まれ、ときに傷つき、危ない目にあい、怒られても、私はこの自分に灯った火を消さないように生きていきたいです。


 私はすべての海竜と仲良くなれる、守ってあげられるとは思いません。せめて大事な家族を守れる調教師になりたいのです。


 そのために私はこのノミリヤ学園で海竜について学ぶことを決めました。

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 こんなものか。


「出来ました」

「やはり早いですね」


 試験監督をしてくれているのは事務員の女性だ。微笑みながら回答を回収すると、どこか納得したような表情を浮かべた。


「出来る問題と出来ない問題を取捨選択して、それに点数を取らないといけないというプレッシャーもないですしね」


「では採点しますので、その間に寮へ案内します。付いてきてください」


 受付の女性についていく。途中で職員室らしきところに回答を渡しに行った際、珍獣でも見るかのようにじろじろ見られたが敵対的な視線はなかった。職員で反対している人はいないってのは本当っぽい。


「さて、ここがあなたたちの寮になります。二人で一つの部屋を使うことになります。同じ部屋の人とは仲良くしてあげてくださいね。入学式には新入生が来ると思います。それまでは一人部屋ですね。私はこれで帰りますが、入学式が近くなればまた来ます。説明することが未だあるので」


「ありがとうございます」


 そういうと、受付の女性は事務室に戻っていった。


 案内された部屋は以外にも広く、二人でも十分なスペースが確保されていた。特に大きな荷物を持ってきたわけではないので、荷ほどきもすぐに終わった。さてこれからどうしようか。


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