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第102話 罰遊

 ヒナとは一旦別れ、俺は空港の外へとやってきた。

 中ばかりいてもあれだし、外に出ると何かしら他の刺激があるしな。

 ちょっと歩くと、見覚えのある二人がいた。


「何やってんだよ、こんなとこで」

「あ、ルイ様」


 アスタ、カイ、ニイナ、ノノの4人が各々の武器を出している。


「明日からに備えて、さらに練度を上げようと思いまして」

「へぇ~、えらいな」


 少し離れていたノノが寄って来た。


「ちょうどいいじゃん! ルイ兄、私たちの相手してよ!」

「ん、まぁいいけど」

「黒夢と組むから、ルイ兄一人ね!」

「俺一人かよ⋯しゃあねぇな」


 さらに向こうではアスタの剣と、カイのSMG(サブマシンガン)がぶつかり合っている。

 アスタは手加減してるように見えるが、さすがに実力差があるって事か。


 そして、俺の対面にはニイナとノノが立ちはだかり、こそこそと何かを話し合っている。

 バカラだのUnRuleだの、どうしても俺に勝ちたいらしい。

 こいつら二人はなんだかんだいっても"A.EL"だから、油断はしないようにやるか。


「ルイ様、負けたら罰ゲームしましょう」

「罰? いいのか、そんな事言って」

「はい、こちらの作戦は完璧ですので。私たちが勝ったら、今日こそ一緒に寝てください。左に私、右にノノでお願いします」

「どんだけしたいんだそれ。いいぜ、好きなだけ付き合ってやる」

「言いましたね。逃げるのは無しですよ」


 ニイナが黒能面を被る。

 めちゃくちゃ本気じゃん⋯


「俺が勝ったらの罰ゲームも付けていいのか?」

「はい、どうぞ。エロいのでもイケます」

「ちょ!? 黒夢何言ってんの!?」


 ノノがニイナの肩を掴んで揺らしまくっている。


「ふ~ん、いいんだな?」

「え、いや⋯ルイ兄はそんな事しないよね!?」

「俺とじゃ嫌なのか?」

「い⋯いや⋯じゃないけど⋯だって黒夢もいるし⋯」

「ばーか、変な妄想すんじゃねぇ。俺が勝ったら、ホテル3階のクレープ店に付き合ってくれ」

「え⋯? そんなクレープ好きだったの⋯?」

「食うのは俺じぇねぇ。1日限定30食、この後13時から始まるんだ。一人で並んでも暇だろ」

「私たちに買ってくれようとしてた⋯?」

「あぁ、そうそう」

「やっぱルイ兄⋯好き⋯」


 ノノが頬を染めて俺の顔を見る。

 これからやり合うのに、こいつ大丈夫かよ⋯


「それで、もう話し合いはいいのか」

「はい、いつでもいけます。ルイ様は準備はよろしいですか?」

「いいぜ、弓と銃剣の練度、見てやるよ。何でもしてこい」

「何でも⋯分かりました」


 ニイナが思いっきりノノの背中を叩いた。

 「力が強いわ! バカ!」と叫んだかと思えば、顔は真剣になり、俺へと向かってきた。

 ニイナは"戦闘機型の金弓?"を構え、遠距離から撃とうとしている。


 と思った時には遅く、尋常ではない速さで"ミサイルのような矢"が幾つも放たれていた。

 事前にノノが"桜蝶の銃剣?"から打ち上げていたと思われる、"大量の桜模様の花火?"の中をミサイル矢が通っていく。


 各々が1発から5発ほどの増殖し、俺へと襲い掛かって来た。

 もう数えきれない、軽く100発以上はある。

 俺だからって、ガチで容赦無くやりやがった。


 この速さ、たぶん俺以外だと見えずに終わりそう。

 んじゃ、死んでから"何を代わりに持ってきた"のか、二人に見せようか。


 俺は全虚無限涅槃蝶の銃剣こと、〈オールゼロインフィニット・アークニルヴァーナイーリス〉を取り出すと、白と黒と虹で覆われた∞形状と0形状の粒子が飛散し、九色の無限蝶の羽根が舞い上がった。


 ミカイノズノウから"金銀銅の銃剣"を追加し、〈非十二の未蝶涅槃炎(ディストゥウェルヴ・アークニルヴァーナフレア)〉を放つと、"十二色のねじれた極光(オーロラ)"が全ての矢に当たり、結構な空爆が起きた。


 空爆の煙に紛れ、晴れそうになる頃には、二人に"色彩の0型銃口"がそれぞれ向いていた。

 ニイナとヒナは事態に気付いたのか、静止して武器を下げた。

 空爆後のここには、"数多の十二色の蝶羽根"が降り続けている。


「⋯次元が違うって、こういう方を表す言葉なんでしょうね」

「ルイ兄~、空気読んでよぉ~」

「クソ強烈なもん撃っといて、よくそんな事言うな。俺以外だったら死んでるかもだぞ」

「だって何でもしていいって言ったもん~、ぶ~ぶ~!」

「そう、ルイ様にならいいかなと思いまして」

「⋯おい、バカラのやつまだ怒ってんのか? クレープで許せって」

「とっくのとうに許してますけど、今日の夜もやってくださいね」

「⋯マジかよ」

「んな事よりさ、"この舞ってる蝶の羽根"いい~! 自分の桜も好きだけどさ、ルイ兄のは鮮やかだ~!」


 ノノは小学生のように喜び、ニイナは静かに笑みを浮かべて"舞い散る羽根"を見ていた。

 この後、見ていたアスタが驚いた表情でこちらに近付き、「また君は先にいったのかい?」と話しかけられた。

 カイを置いてくんじゃねぇよ、茫然としてるぞ。

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