ヒナとは一旦別れ、俺は空港の外へとやってきた。
中ばかりいてもあれだし、外に出ると何かしら他の刺激があるしな。
ちょっと歩くと、見覚えのある二人がいた。
「何やってんだよ、こんなとこで」
「あ、ルイ様」
アスタ、カイ、ニイナ、ノノの4人が各々の武器を出している。
「明日からに備えて、さらに練度を上げようと思いまして」
「へぇ~、えらいな」
少し離れていたノノが寄って来た。
「ちょうどいいじゃん! ルイ兄、私たちの相手してよ!」
「ん、まぁいいけど」
「黒夢と組むから、ルイ兄一人ね!」
「俺一人かよ⋯しゃあねぇな」
さらに向こうではアスタの剣と、カイのSMG(サブマシンガン)がぶつかり合っている。
アスタは手加減してるように見えるが、さすがに実力差があるって事か。
そして、俺の対面にはニイナとノノが立ちはだかり、こそこそと何かを話し合っている。
バカラだのUnRuleだの、どうしても俺に勝ちたいらしい。
こいつら二人はなんだかんだいっても"A.EL"だから、油断はしないようにやるか。
「ルイ様、負けたら罰ゲームしましょう」
「罰? いいのか、そんな事言って」
「はい、こちらの作戦は完璧ですので。私たちが勝ったら、今日こそ一緒に寝てください。左に私、右にノノでお願いします」
「どんだけしたいんだそれ。いいぜ、好きなだけ付き合ってやる」
「言いましたね。逃げるのは無しですよ」
ニイナが黒能面を被る。
めちゃくちゃ本気じゃん⋯
「俺が勝ったらの罰ゲームも付けていいのか?」
「はい、どうぞ。エロいのでもイケます」
「ちょ!? 黒夢何言ってんの!?」
ノノがニイナの肩を掴んで揺らしまくっている。
「ふ~ん、いいんだな?」
「え、いや⋯ルイ兄はそんな事しないよね!?」
「俺とじゃ嫌なのか?」
「い⋯いや⋯じゃないけど⋯だって黒夢もいるし⋯」
「ばーか、変な妄想すんじゃねぇ。俺が勝ったら、ホテル3階のクレープ店に付き合ってくれ」
「え⋯? そんなクレープ好きだったの⋯?」
「食うのは俺じぇねぇ。1日限定30食、この後13時から始まるんだ。一人で並んでも暇だろ」
「私たちに買ってくれようとしてた⋯?」
「あぁ、そうそう」
「やっぱルイ兄⋯好き⋯」
ノノが頬を染めて俺の顔を見る。
これからやり合うのに、こいつ大丈夫かよ⋯
「それで、もう話し合いはいいのか」
「はい、いつでもいけます。ルイ様は準備はよろしいですか?」
「いいぜ、弓と銃剣の練度、見てやるよ。何でもしてこい」
「何でも⋯分かりました」
ニイナが思いっきりノノの背中を叩いた。
「力が強いわ! バカ!」と叫んだかと思えば、顔は真剣になり、俺へと向かってきた。
ニイナは"戦闘機型の金弓?"を構え、遠距離から撃とうとしている。
と思った時には遅く、尋常ではない速さで"ミサイルのような矢"が幾つも放たれていた。
事前にノノが"桜蝶の銃剣?"から打ち上げていたと思われる、"大量の桜模様の花火?"の中をミサイル矢が通っていく。
各々が1発から5発ほどの増殖し、俺へと襲い掛かって来た。
もう数えきれない、軽く100発以上はある。
俺だからって、ガチで容赦無くやりやがった。
この速さ、たぶん俺以外だと見えずに終わりそう。
んじゃ、死んでから"何を代わりに持ってきた"のか、二人に見せようか。
俺は全虚無限涅槃蝶の銃剣こと、〈オールゼロインフィニット・アークニルヴァーナイーリス〉を取り出すと、白と黒と虹で覆われた∞形状と0形状の粒子が飛散し、九色の無限蝶の羽根が舞い上がった。
ミカイノズノウから"金銀銅の銃剣"を追加し、〈非十二の未蝶涅槃炎(ディストゥウェルヴ・アークニルヴァーナフレア)〉を放つと、"十二色のねじれた極光(オーロラ)"が全ての矢に当たり、結構な空爆が起きた。
空爆の煙に紛れ、晴れそうになる頃には、二人に"色彩の0型銃口"がそれぞれ向いていた。
ニイナとヒナは事態に気付いたのか、静止して武器を下げた。
空爆後のここには、"数多の十二色の蝶羽根"が降り続けている。
「⋯次元が違うって、こういう方を表す言葉なんでしょうね」
「ルイ兄~、空気読んでよぉ~」
「クソ強烈なもん撃っといて、よくそんな事言うな。俺以外だったら死んでるかもだぞ」
「だって何でもしていいって言ったもん~、ぶ~ぶ~!」
「そう、ルイ様にならいいかなと思いまして」
「⋯おい、バカラのやつまだ怒ってんのか? クレープで許せって」
「とっくのとうに許してますけど、今日の夜もやってくださいね」
「⋯マジかよ」
「んな事よりさ、"この舞ってる蝶の羽根"いい~! 自分の桜も好きだけどさ、ルイ兄のは鮮やかだ~!」
ノノは小学生のように喜び、ニイナは静かに笑みを浮かべて"舞い散る羽根"を見ていた。
この後、見ていたアスタが驚いた表情でこちらに近付き、「また君は先にいったのかい?」と話しかけられた。
カイを置いてくんじゃねぇよ、茫然としてるぞ。