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第101話 密会

「あ、男子全員いる。おはよ」

「うす」


 男4人で朝食を取っていると、ユキを先頭に女子たちが2階のバイキングへと降りて来た。

 ヒナとノノはまだ眠そうな顔をしている。


「何食べてるの? それ」

「ん、これは"赤毛和牛筋カレードーナツ"」

「え、めっちゃ美味しそう。私もそれ欲しい」

「んなら、これやるよ。来たら欲しがると思って、多めに取っといたから」

「さっすがルイ。私たちは隣に座るわね」

「ほい」


 取っていったカレードーナツ2個を半分ずつにし、4人でそれぞれシェアしている。


「ん~! こんな美味しいカレードーナツ食べた事無い!」

「だろぉ!? これマジで最高だわ!」

「シンヤ君に言ってない」

「は!? 朝からひどっ!?」


 アスタとカイが笑うと、


「シン君って、新崎さんにそんな対応取られてるんだね」

「んだよ、二人でそんな笑いやがって。ルイにはクソ甘々なくせに、俺にはいつもこうなんだよなぁ~」

「まぁ、ルイ君相手は仕方ないね」

「おいおい、あのアスタが諦めんのか?」

「だって、彼は"超宇宙人"だから、"蝶"だけに、ね」

「⋯昨日の俺と同じ事言ってら」


 カレードーナツを食べ終わると、女子4人は次のドーナツを取りに行った。

 ただニイナだけは、俺の方を一瞬向いてニヤりとした。


 ⋯あいつ、俺が逃げたから勝った気になってんのか

 バカラサバイバルで負けたのがよっぽど悔しかったのか、最後に勝ったつもりかよ。


「⋯ニイナとなんかあった?」

「いいや、バカラで遊んでただけ」

「え、違法賭博?」

「んなわけねぇだろ」

「ルイ君がしてくれたら面白いんだけどなぁ~」

「お前弁護士やめろ」

「おいアスタ! 弁護士やめたら俺とAR部門プロやろうぜ! おめぇならすぐなれるからよぉ!」

「それもいいね」

「そのプロを雇ってる"事務所の社長が俺"だろうが」

「そうなんだよなぁ。このルイとかいう"一番終わってる野郎"がやってんだよ。こいつプロの大会で優勝しすぎて、今出禁扱いされてんだぜ」

「ぷっ」


 突然、アスタが飲んでいた水を少し噴き出した。


「きったねぇな、人の出禁で笑うんじゃねぇ」

「アスタ様がこんなになるの、初めて見ました」

「いいのが見れただろ! カイ!」


 謎にしてやったり顔をするシンヤが、カイの肩を叩いている。

 ダメだ、こいつら。


「あ、ルイさんもう出るんですか?」


 戻ってくるヒナとすれ違う。


「あぁ、もう充分食べたからな」

「この後は何する予定なんですか?」

「ん~、筋トレでもしにいこうかな」

「それなら私も行きたいです!」

「え、筋トレだぞ?」

「前は私もジム通ってたんですよ~、よければコーチングしてください!」

「まぁいいけど⋯そういやヒナと初めて会った日も、ジム行ってたよな」

「ですね~。あの時はルイさんのフォームが綺麗で、ずっと見てました~」

「それでずっといたのか」

「それもですけど⋯いろいろです!」


 少し赤い顔をしながらヒナが言う。

 20階のドーナッツジムに行く事を伝えると、俺はエレベーターへと乗った。


 こんなにゆっくり出来るのも今日までか。

 明日からはまたヤツらと対峙する日々になる。


 必ず、全員生きて総理の元へ行く。

 そのために、"アイツ"は少ない力を振り絞って"五人の死"を見せてくれたんだから。


 その時、ふと思い出した。

 俺とユキは"五人の死"を見たが、"ニイナとカイの死は確認していなかった"事を。


 あいつらは"あっち"でどうなっていたんだ⋯?

 アスタが死んでからいなかったって事は⋯心中した⋯とか⋯?

 守れなかったから思い詰めて⋯的な?


 考えていると、20階のドーナツジムに着いていた。

 これ以上考えても仕方ない、"こっち"ではそうならないようにすればいいだけだ。


 ジム内は数人の男女のみ。

 よし、快適に追い込められそうだ。


 器具はいろんなドーナツの格好をしていて、まるでちょっとしたお菓子の家だった。

 ケガしないように工夫もされているようで、重い器具を落とすと、全体が"柔く厚いシリコンゲル"に包まれる。


 そして上げると、元に戻る。

 これどういう仕組みなんだ⋯?

 例えば、足に落としたりしても、軽い衝撃しか感じない。


 壁を見ると、【マイクロAIチップが感知し、落としても安全!】という大きな宣伝が流れている。

 今後はこういったジムが増えるのかな、器具って案外危ないから。


 1時間ほどトレーニングを続け、10時頃になった辺りでヒナが来た。

 涼しそうなピンクのスポーツウェア、下はショートパンツを履いている。


「えへへ、お待たせしました~! ドーナツだらけですね、ここ!」

「なぁヒナ、このダンベルちょっと落としてみて」

「えぇ!? そんな危ない事できませんってぇ!?」

「いいから、面白い事なるからやってみ」

「だ、大丈夫なんですかぁ!?」


 ヒナは決心がつかないようなので、俺が落としてみせた。

 すると目をパチパチさせ、何が起こったか分かっていないようだった。


「ネタバレはあれ」


 壁に流れている動画を指差す。


「ほぇ~、シリコン⋯ゲル? って、衝撃吸収材⋯? と言いますか、そんなのによく使われてますよね」

「そうだな。前からよく使われてる。それを上手い事こんなとこに取り入れてるって事らしい。ほんとどこでもAIだらけだ」

「"頭をぶつけそうになったりしても発動する"って書いてありますね。ほぇ~」

「んじゃ、そんなゲルだのドーナツだの、謎の場所で筋トレしていきますか」

「は~い! 先生!」


 この後、主にヒナのフォームチェックをしつつ、どうするのが効率良いか助言し、じっくりとトレーニングをしていった。

 最後は一緒にランニングマシンで追い込んで終了。


「いやぁ⋯今日は⋯ありがとうございましたぁ」

「疲れたろ、この後はゆっくりしときな」

「先生が⋯合わせてくれて⋯やりやすかった⋯です。また今度⋯お願いします⋯!」

「やる気が凄いな。いつもはシンヤを誘ってやったりするんだけど、こっそり一人でやるのに最近ハマってたんだ。次は、ヒナを誘う時か?」

「(⋯こっそりしましょう⋯二人で⋯)」


 誰にも聞こえない声で、囁くように彼女は言った。

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