男湯から上がる頃、
「あ、出てきましたよ」
「やっほー、ルイ兄」
いつの間にか、ニイナとノノもここに来ていた。
女子4人でいろんなアイスを食べている。
「ここのアイスドーナツ、甘さ控えめでおいしいわ。男三人衆も食べる?」
「せっかくだし、頂こうかな」
「僕も貰います!」
ユキの誘いに、アスタとカイが釣られていく。
「ルイ兄は食べないの?」
「さっき食べた分で腹いっぱいだわ」
俺は近くのマッサージチェアに座った。
目を瞑ろうとしたら、ノノが歩いてきた。
「最後に会ったのって10年前くらい? ルイ兄とユキ姉が小5で自分は小2、あの時は大きく見えたなぁ」
「急に引っ越して行きやがって」
「しょうがないじゃん~、急に離婚だのなんだのってさ、バカ親父に付いていく事になっちゃったもん」
「すっげぇ嫌だよな、子供の時の離婚って。なんで仲良くしないんだろうなって、単純に思ってしまう。ある程度大きくなってくれば、それがなんでなのかは理解し始めるんだけど」
「うん。その問題とユキ姉の口癖が重なって、反抗期の口の悪さヤバかった」
「今は?」
「⋯最近、また戻ってたんだよね。ELに選ばれなくてさ、選ばれたヤツらは私たちを見下しているようで、クソ腹が立ってた。だから自分がA.ELになれた時、やっと見返せるなってなった、まずは周りに舐められないようにしようって。でもそれ、ELのヤツらと同じような事しちゃってたんだなって、ユキ姉たちが来たおかげで気付けた」
「ちゃんと気付けるなんて、大きくなったなぁ」
「ん~、"胸の大きさ"はユキ姉といい勝負?」
「"そこの大きさ"じゃねぇよ」
「ちょっと揉んどく? 今ならバレないよ」
「ばーか、妹みたいなお前にそんな事できねぇよ」
「えぇ~、好きだったんだけどなぁ、ルイ兄の事」
「⋯え?」
「(⋯ちなみに⋯今も好きで~す)」
あ、あいつ!?
耳元で囁いた後、ノノはあっちに行ってしまった。
「もう1個食~べよ!」
「あ! それ私が残してたのに!」
「ユキ姉が遅いからだよ~」
それからも、ちらちらとジト目でこっちを見てきた。
昔のようにじゃれてきただけだと自分に言い聞かせ、あえて視線をそらす。
目を瞑ればいい、ノノは俺の慌てる素振りを見たいだけなんだ。
しばらくして、金星ドーナッツ部屋へと戻って来た俺は、ベッドへと寝っ転がった。
やっと一人になれた、人で玩具のように遊びやがって⋯
結局、ここが一番落ち着くな。
そういや、最近ネット見れてなかった。
SNSや動画配信等、最近の情勢を確認する。
東京人口が"半分以下"にまでなっている事を、誰かが発信したようで、周知の事実となっていた。
残った人々は拠点に籠るか、ネルトたちに立ち向かうか、犯罪集団で悪さしているか、ほぼ三極化しているようだった。
これらが加速している原因に、AI総理をどうにもできないというのはもちろんそうだが、次にお金の問題があるようだった。
ネルトやUnRuleモンスターを倒す事が主な収入源となっている現状、犯罪を助長させ、いろんな情報源も有料になってしまっている。
やっぱり、どんな世界になっても必要なのは金なのか⋯?
売られている情報をスワイプして見てみると、知っているものばかりの中、唯一"殺人集団幸せの麒麟について"というのが目に留まった。
こんなものが1万円!?
渋々1万円払い、動画を覗いてみる事にした。
内容は、出来た経緯、おおよその所属人数、出現ポイントのマッピング記録、使われた凶器等はあったが、肝心の"支配人と呼ばれたヤツ含めた上層部"については、まだ判明していないようだった。
さっきユキに、"支配人には逃げられた"という事だけは聞いている。
アイツはまた何処かで殺人を続けているのだろうか。
見つけようにも、あまりに情報が無い。
"タクと呼ばれていたあのクソ野郎"はたぶん死んだだろうが、隠し持っていた"未来の小型機器"も謎のまま。
⋯やっべ
考えてたら眠気が⋯
♢
「ん⋯」
「あ」
「え⋯ニイナ?」
起きて周囲を見ると、ユキ、ヒナ、ノノがベッドに座ってL.S.を弄っていた。
「俺、寝てた⋯?」
「起こしてしまったようで、すみません。"この肌布団"を掛けようかと思いまして」
「あ、あぁ、ありがとう。知らない間に寝落ちしてたわ。それで、こんな深夜に女子会始まってる?」
「そうですね、そんな感じです」
「だったら俺出てくわ、邪魔だろ」
「「「「え!?」」」」
女子4人でシンクロしたように反応し、俺の方を向く。
え、俺なんか変な事言った⋯?
「ルイはいてよ、ここに!」
「いてください!」
「ルイ兄、いて!」
ん⋯?
俺って邪魔じゃないの⋯?
めちゃくちゃ異物感凄いけど。
「今ね、誰がルイ兄と寝るか勝負してるんだから!」
「⋯はい?」
「先にこいつに"肌布団を掛ける権利"、取られたとこ!」
「⋯そういう事です」
⋯何やってんの、この人たちは⋯?
「⋯意味が分からないんだが」
「分からなくていい! そこで寝てて!」
「ってか、ノノもこの部屋で寝るつもりなのか?」
「そうだけど、いいよね?」
「そりゃ別にいいけど⋯お前、一人で寝る方が好きだったろ」
「ど~んだけ昔の話してんの、今は違うから」
「ふーん。で、"俺と寝る権利"を女子4人で勝負している、と」
「「「「はい」」」」
「シンクロやめてね」
そしてまた、ニイナが一人勝ちしたようだった。
一体何で勝負してるんだ⋯?
「⋯ルイもしてみる? バカラサバイバル」
「なんだそりゃ」
「誰が先に1000万円到達するかで勝敗が決まるゲーム。もちろん違法賭博じゃない、ただのアプリゲームね」
「⋯へぇ、面白そうじゃん」
「おぉ! ルイ兄来たぁ~!」
「運ゲーだから、ルイさんに勝てる可能性ありますね!」
「私がまた一番に決まってますよ。負けませんよ、ルイ様」
女子三人が意気揚々とする中、ユキ一人だけ険しい表情をしていた。
「⋯あなたたち、数秒後には白目向いてるわよ」
「「「?」」」
バカラは基本的には1/2の単純なギャンブル。
プレイヤーとバンカーがあり、ディーラーがトランプを数枚捲ってどちらがより"9という数字"に近いかで勝敗を決める。
プレイヤーで勝てば2倍、バンカーで勝てば1.95倍の掛け金で返ってくる、負ければ没収。
"1~9"は普通にカウントするが、絵札は"全て0"でカウントされるというルールになっている。
稀にプレイヤーとバンカーが同数の場合がある、例えば5と5とか。
そういった時には、"タイ"という場所に賭けておくと、10倍になったりする。
プレイヤーばかり来てるから次もプレイヤーだなと考えたり、いや次こそはバンカーだろうと考えたり、どんどん人を沼へと堕としていく。
バカラはイタリア語で0(ゼロ)であり、"破産"を意味するゲームだ。
そんなものにハマりやがって、ゲームだけにしとけよほんと。
そして始まったバカラサバイバル、破産しても1万円は保証してくれるという優しい仕様。
時に5倍や10倍といった、大きなチャンスも来てくれる。
数分経った頃、ユキの言う通り、俺が1000万円到達で1位となった。
それから何度やっても、俺が負ける事は無かった。
今はニイナ、ノノ、ヒナの三人にチートを疑われている。
「だから言ったでしょ、この人ヤバいって」
「絶対おかしいでしょッ!? ルイ兄チート使ってるってッ!?」
「いや、俺さっき始めたばっかなんだが⋯」
「ルイさん許せませんッ! 見損ないましたよッ!」
「ルイ様、現行犯逮捕で⋯」
「いや意味分かんねぇし!」
不意に掛けられそうになった手錠を避ける。
当然ネタでされてるのは分かってる。
「結局こうなるのよねぇ、何やっても負けないんだもん。昔っからそう、運動も勉強も何やっても」
「でも、今はお前が成績1位だろ?」
「真面目にやってないだけでしょ。研究に仕事にゲームに付きっきりで」
「まぁ⋯でも、負けは負けだろ」
「いや勝ってないから」
なんなん、その意固地⋯
勝ってんだから納得しろよ⋯
終わって就寝頃、ニイナが"俺と寝る権利"を行使しようとしてきたが、逃げて隣の一人部屋へとやってきた。
もう俺は一人で金星ドーナツ楽しむ、また200万飛んだがそんなもんはいい。
あいつ、アスタと仲いいのに何やってんだよ。
絶対悪ノリに参加しただけだろ、ちょっと笑ってたし。
そのアスタはというと、カイとシンヤと三人部屋で楽しんでいるようだった。
これは次の朝に会って話して分かった事。
俺も呼べよ⋯