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第100話 四人

 男湯から上がる頃、


「あ、出てきましたよ」

「やっほー、ルイ兄」


 いつの間にか、ニイナとノノもここに来ていた。

 女子4人でいろんなアイスを食べている。


「ここのアイスドーナツ、甘さ控えめでおいしいわ。男三人衆も食べる?」

「せっかくだし、頂こうかな」

「僕も貰います!」


 ユキの誘いに、アスタとカイが釣られていく。


「ルイ兄は食べないの?」

「さっき食べた分で腹いっぱいだわ」


 俺は近くのマッサージチェアに座った。

 目を瞑ろうとしたら、ノノが歩いてきた。


「最後に会ったのって10年前くらい? ルイ兄とユキ姉が小5で自分は小2、あの時は大きく見えたなぁ」

「急に引っ越して行きやがって」

「しょうがないじゃん~、急に離婚だのなんだのってさ、バカ親父に付いていく事になっちゃったもん」

「すっげぇ嫌だよな、子供の時の離婚って。なんで仲良くしないんだろうなって、単純に思ってしまう。ある程度大きくなってくれば、それがなんでなのかは理解し始めるんだけど」

「うん。その問題とユキ姉の口癖が重なって、反抗期の口の悪さヤバかった」

「今は?」

「⋯最近、また戻ってたんだよね。ELに選ばれなくてさ、選ばれたヤツらは私たちを見下しているようで、クソ腹が立ってた。だから自分がA.ELになれた時、やっと見返せるなってなった、まずは周りに舐められないようにしようって。でもそれ、ELのヤツらと同じような事しちゃってたんだなって、ユキ姉たちが来たおかげで気付けた」

「ちゃんと気付けるなんて、大きくなったなぁ」

「ん~、"胸の大きさ"はユキ姉といい勝負?」

「"そこの大きさ"じゃねぇよ」

「ちょっと揉んどく? 今ならバレないよ」

「ばーか、妹みたいなお前にそんな事できねぇよ」

「えぇ~、好きだったんだけどなぁ、ルイ兄の事」

「⋯え?」

「(⋯ちなみに⋯今も好きで~す)」


 あ、あいつ!?

 耳元で囁いた後、ノノはあっちに行ってしまった。


「もう1個食~べよ!」

「あ! それ私が残してたのに!」

「ユキ姉が遅いからだよ~」


 それからも、ちらちらとジト目でこっちを見てきた。

 昔のようにじゃれてきただけだと自分に言い聞かせ、あえて視線をそらす。

 目を瞑ればいい、ノノは俺の慌てる素振りを見たいだけなんだ。


 しばらくして、金星ドーナッツ部屋へと戻って来た俺は、ベッドへと寝っ転がった。

 やっと一人になれた、人で玩具のように遊びやがって⋯

 結局、ここが一番落ち着くな。


 そういや、最近ネット見れてなかった。

 SNSや動画配信等、最近の情勢を確認する。


 東京人口が"半分以下"にまでなっている事を、誰かが発信したようで、周知の事実となっていた。

 残った人々は拠点に籠るか、ネルトたちに立ち向かうか、犯罪集団で悪さしているか、ほぼ三極化しているようだった。


 これらが加速している原因に、AI総理をどうにもできないというのはもちろんそうだが、次にお金の問題があるようだった。

 ネルトやUnRuleモンスターを倒す事が主な収入源となっている現状、犯罪を助長させ、いろんな情報源も有料になってしまっている。

 やっぱり、どんな世界になっても必要なのは金なのか⋯?


 売られている情報をスワイプして見てみると、知っているものばかりの中、唯一"殺人集団幸せの麒麟について"というのが目に留まった。

 こんなものが1万円!?

 渋々1万円払い、動画を覗いてみる事にした。


 内容は、出来た経緯、おおよその所属人数、出現ポイントのマッピング記録、使われた凶器等はあったが、肝心の"支配人と呼ばれたヤツ含めた上層部"については、まだ判明していないようだった。

 さっきユキに、"支配人には逃げられた"という事だけは聞いている。


 アイツはまた何処かで殺人を続けているのだろうか。

 見つけようにも、あまりに情報が無い。

 "タクと呼ばれていたあのクソ野郎"はたぶん死んだだろうが、隠し持っていた"未来の小型機器"も謎のまま。


 ⋯やっべ

 考えてたら眠気が⋯


 ♢


「ん⋯」

「あ」

「え⋯ニイナ?」


 起きて周囲を見ると、ユキ、ヒナ、ノノがベッドに座ってL.S.を弄っていた。


「俺、寝てた⋯?」

「起こしてしまったようで、すみません。"この肌布団"を掛けようかと思いまして」

「あ、あぁ、ありがとう。知らない間に寝落ちしてたわ。それで、こんな深夜に女子会始まってる?」

「そうですね、そんな感じです」

「だったら俺出てくわ、邪魔だろ」

「「「「え!?」」」」


 女子4人でシンクロしたように反応し、俺の方を向く。

 え、俺なんか変な事言った⋯?


「ルイはいてよ、ここに!」

「いてください!」

「ルイ兄、いて!」


 ん⋯?

 俺って邪魔じゃないの⋯?

 めちゃくちゃ異物感凄いけど。


「今ね、誰がルイ兄と寝るか勝負してるんだから!」

「⋯はい?」

「先にこいつに"肌布団を掛ける権利"、取られたとこ!」

「⋯そういう事です」


 ⋯何やってんの、この人たちは⋯?


「⋯意味が分からないんだが」

「分からなくていい! そこで寝てて!」

「ってか、ノノもこの部屋で寝るつもりなのか?」

「そうだけど、いいよね?」

「そりゃ別にいいけど⋯お前、一人で寝る方が好きだったろ」

「ど~んだけ昔の話してんの、今は違うから」

「ふーん。で、"俺と寝る権利"を女子4人で勝負している、と」

「「「「はい」」」」

「シンクロやめてね」


 そしてまた、ニイナが一人勝ちしたようだった。

 一体何で勝負してるんだ⋯?


「⋯ルイもしてみる? バカラサバイバル」

「なんだそりゃ」

「誰が先に1000万円到達するかで勝敗が決まるゲーム。もちろん違法賭博じゃない、ただのアプリゲームね」

「⋯へぇ、面白そうじゃん」

「おぉ! ルイ兄来たぁ~!」

「運ゲーだから、ルイさんに勝てる可能性ありますね!」

「私がまた一番に決まってますよ。負けませんよ、ルイ様」


 女子三人が意気揚々とする中、ユキ一人だけ険しい表情をしていた。


「⋯あなたたち、数秒後には白目向いてるわよ」

「「「?」」」


 バカラは基本的には1/2の単純なギャンブル。

 プレイヤーとバンカーがあり、ディーラーがトランプを数枚捲ってどちらがより"9という数字"に近いかで勝敗を決める。


 プレイヤーで勝てば2倍、バンカーで勝てば1.95倍の掛け金で返ってくる、負ければ没収。

 "1~9"は普通にカウントするが、絵札は"全て0"でカウントされるというルールになっている。


 稀にプレイヤーとバンカーが同数の場合がある、例えば5と5とか。

 そういった時には、"タイ"という場所に賭けておくと、10倍になったりする。

 プレイヤーばかり来てるから次もプレイヤーだなと考えたり、いや次こそはバンカーだろうと考えたり、どんどん人を沼へと堕としていく。


 バカラはイタリア語で0(ゼロ)であり、"破産"を意味するゲームだ。

 そんなものにハマりやがって、ゲームだけにしとけよほんと。


 そして始まったバカラサバイバル、破産しても1万円は保証してくれるという優しい仕様。

 時に5倍や10倍といった、大きなチャンスも来てくれる。

 数分経った頃、ユキの言う通り、俺が1000万円到達で1位となった。


 それから何度やっても、俺が負ける事は無かった。

 今はニイナ、ノノ、ヒナの三人にチートを疑われている。


「だから言ったでしょ、この人ヤバいって」

「絶対おかしいでしょッ!? ルイ兄チート使ってるってッ!?」

「いや、俺さっき始めたばっかなんだが⋯」

「ルイさん許せませんッ! 見損ないましたよッ!」

「ルイ様、現行犯逮捕で⋯」

「いや意味分かんねぇし!」


 不意に掛けられそうになった手錠を避ける。

 当然ネタでされてるのは分かってる。


「結局こうなるのよねぇ、何やっても負けないんだもん。昔っからそう、運動も勉強も何やっても」

「でも、今はお前が成績1位だろ?」

「真面目にやってないだけでしょ。研究に仕事にゲームに付きっきりで」

「まぁ⋯でも、負けは負けだろ」

「いや勝ってないから」


 なんなん、その意固地⋯

 勝ってんだから納得しろよ⋯


 終わって就寝頃、ニイナが"俺と寝る権利"を行使しようとしてきたが、逃げて隣の一人部屋へとやってきた。

 もう俺は一人で金星ドーナツ楽しむ、また200万飛んだがそんなもんはいい。


 あいつ、アスタと仲いいのに何やってんだよ。

 絶対悪ノリに参加しただけだろ、ちょっと笑ってたし。


 そのアスタはというと、カイとシンヤと三人部屋で楽しんでいるようだった。

 これは次の朝に会って話して分かった事。

 俺も呼べよ⋯

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