30階に着くと、部屋は2つしか無かった。
金星ドーナツの一人部屋と四人部屋。
俺たちはこっち側だな。
左側の"金のウロボロスドーナツ型?のドア"。
なんちゅうものをドーナツにしてんだ。
まるでボス部屋みたいになってる。
「⋯開けるぞ」
期待した目で二人が見ている。
どんなのが待っているのか⋯
ゆっくり開けると⋯
― 黄白色のモコモコした壁、天井には大きな金星ドーナツ風の埋め込み照明、金星ドーナツの模様がたくさん入った床やベッドや冷蔵庫等
「サンプル通りね⋯いいじゃない!」
「わ~い! 金星ドーナツ~!」
ユキとヒナはベッドへと突っ伏した。
その勢いで、"ヒナの黒いパンツ"が見えたのは黙っとこう。
んな短いスカート履いてんのに、そんな事するからだ。
「そういやヒナって、肋骨4本ヒビいってたのに、元気なの凄いな」
「あー、かなりの"劇薬"を飲みまして」
「⋯"劇薬"?」
「"3週間効く痛み止め"を飲んだんです。副作用に、効き目が切れた後に1週間寝てしまうらしいんですけど」
「はぁ!? 1週間!?」
ヒナはその薬を取り出した。
真っ黒の液体で、半分飲んであり、中心に横線で"ココマデ"とある。
「⋯こいつを1回分飲んだのか」
「はい」
「そうするしか、あの時はダメだったしね⋯」
ユキがヒナをさすりながら言う。
俺がいなかったせいで、ヒナがこんなのを飲むはめに⋯
この副作用をどうにかする方法は無いか?
効き目は凄いが、ヒナの身体に相当な負担を掛けているはず。
⋯くそ、今は思いつかない
残り20日ほどと考えて、それまでに全てを終わらせないといけないかもしれない。
ヒナ無しでは相当キツいだろう上に、1週間見守り続けるのも大変になる。
⋯そこまでが、俺たちが動けるの最終リミットと考えた方がいい
「俺が不甲斐ないせいで⋯本当にわるい。ヒナの副作用が始まる前に、全てを終わらせるから」
「いえいえ、そんな深く考えなくていいですよ! 私がいなくなっても、そんな変わらな」
「ヒナは絶対いなきゃいけない、もうそういう存在なんだ。分かったなら、温泉行くぞ!」
俺が背を向けると、後ろから誰かに抱き着かれた。
「(残りの時間で⋯精一杯力になりますね)」
その後、ユキに「私、いるんですけど?」と言われるのは言うまでもなく⋯
なんで俺が怒られてるんだ⋯?
1つ上が温泉って事もあって、すぐ"ドーナツ温泉"へと来た。
アスタには連絡してみると、「いいね、30分後でもいい? カイと行くよ」って。
ユキとヒナに言うと、合流後は男湯と女湯に分かれようと言われた。
もしかして、あまり呼ばない方が良かった⋯?
ちょっと睨まれたし⋯
へぇ~、ドーナツってのは"周りの形がドーナツ"って事か。
もこもことした茶色い岩盤で囲まれた中に湯がある。
この湯が"橙色"に輝いている。
「わぁ~! なにここ~!」
「いい気分転換になるわね。それに貸し切りじゃない」
先に入ろうとすると、二人が後ろから来た。
ピンクのタオルを巻き、そこにはこの"カレイドドーナツホテルのロゴ"が付いている。
ちなみに、男子は黒いタオルだ。
最近の銭湯や温泉は便利なとこが多く、脱衣所で裸になると、AIが察知してすぐタオルを巻いてくれる。
これによって通う敷居が低くなり、また流行り始めている。
「あ、ルイさん! どうですか! 私いい身体してますか!」
「いや、答えにくいわ」
「あははっ!」
そしてユキに「⋯変態ルイ」と小言を言われている、なんでも俺のせいじゃん⋯
三人して同時に湯に入ると、これがまた新感覚の湯だった。
身体全体をゆっくり揉まれているような⋯
調べてみると岩盤下に上手い事、"見えないAI噴水"を複数設置してるそうだ。
奥に"生クリームみたいなイス?"があったので座ると、ふんわりした感覚で、さらには身体にフィットするように形を変え始めた。
こりゃいいな、絶対ここが特等席だろ。
と思っていると、
「⋯んっ」
⋯今の声、ユキか?
「この噴射、なんか"変なとこ当たる時"、無い⋯?」
「え~? そんな事ないよ?」
「⋯あ! あなたがそれ押してたからね!?」
「バレちゃった~!」
「ば、ばかっ! ルイもいるのよ!?」
「ルイさ~ん! 助けてくださ~い!」
「お、おいっ!? なにやって!?」
ほぼ裸状態のヒナに突っ込まれ、重なるようにユキまで。
「⋯超変態ルイ!」
「俺蝶だけど⋯なんで毎回俺なんだよっ!!!」
「あははっ!」
アスレチック温泉じゃねんだぞここ⋯
まぁ見た目は遊び場みたいなもんだけどさ。
貸し切り状態でよかった、ほんとに⋯
それからはヒナは一人噴射で遊び、ユキが俺の横へと座って来た。
ここがいい場所だってのがバレたか。
「あ、いいわねここ」
「誰にも言うんじゃねぇぞ」
少しの静寂の後、
「(⋯ねぇ、一つ聞いていい?)」
「(⋯はい)」
急に囁き声で聞いてくる。
「(めちゃくちゃ聞き辛い事なんだけど⋯いい?)」
「(逆に気になるわ)」
「(ルイってさ⋯射精ちゃんとしてる?)」
「(⋯めちゃくちゃ答え辛いヤツだな)」
「(だって⋯あなたはただの人間じゃないわけじゃない? その辺どうなのかなって⋯男の子は3日に1回はした方がいいって研究もあるし⋯)」
⋯俺はこんな温泉で女子に何を聞かれてる?
清楚っぽい幼馴染から、そんな言葉を聞く日が来るなんて、人生何があるか分からないとはこういう事か。
まぁ俺たちは大学生ではあるけど、二十歳もう超えてるし、普通に心配してくれてるのかも。
「(⋯頻度はクソ少ないな、たぶん性欲は相当薄いと思う。それに、白じゃなくてカラフルなやつが出る)」
「(へぇ~⋯カラフルなの⋯ふふっ)」
「(やっぱ笑うよな、変過ぎるわこんなの)」
「(ごめんごめん、悪い意味じゃないから。そこも他と違っていいと思って)」
さらにユキは傍に寄って来た。
もう腕同士がくっ付いている。
「(女の子としたいな~とかは⋯ならないの⋯?)」
「(⋯今のとこはそんなに)」
「(そんなにって事は⋯ちょっとはある?)」
「(まぁ⋯)」
「(⋯そっか。いい事ね、うんうん)」
このタイミングでアスタから通話が来た。
「⋯んじゃ、俺は男湯行くわ」
ヒナは「え~!」と言っていたけど、また明日来ようと言っておいた。
⋯ありがとうアスタ、あれ以上いたらのぼせそうだったわ
出る間際にユキの顔を見ると、見た事ないほど真っ赤になっていた。