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第91話 店内

「⋯なに、あれ?」


 歩道の途中、"巨大な蝶のようなドア"があった。

 七色に光り、ここだけ特別感が凄い。


 避けて通ろうとすると、まるで通せんぼするようにドアが動き始めた。

 左に避ければ左に、右に避ければ右に、どこまでも邪魔をしてくる。


 ルイが銃剣を取り出し、攻撃をしてみても、なんとビクともしない。

 何も効かないし、頑丈だし、一体何なのコレ⋯?


『⋯もしかして、"この窪み"にはめる物が必要なのかも』

「そんなゲームのイベントみたいな事、あります?」

『まぁ、このUnRule自体が元々ゲームだから』

「⋯そうだった」

『二つ窪みがあるわね、"35"と"38"って窪み内に書いてあるわ』


 二人が会話する中、私は辺りを見回してみた。

 すると、1か所だけ渋谷ストリームのビル内へ入れる場所を発見した。


「あれ、中へ入れるみたいです」


 みんなで入口へ近付くと、"2"という数字が大きく浮かんでいた。

 さっきから謎の数字はなんの意味⋯?


「んー⋯"35と38"はたぶん、この渋谷ストリームの最上階が35階、渋谷サクラステージの渋谷タワー最上階が38階だから、それが関係してるとか⋯この"2"は入れる人数⋯とか?」

『おぉ、さすが若所長』

「⋯俺は所長じゃないんですけど」

『五年違うだけなんだし、いいじゃない。若所長って呼ばせてよ』

「そういえば、あなたは何て呼べば⋯」

『言ってなかったっけ、そういえば。私は霧海(きりうみ)ショウカ、28歳独身。一応、2035年の君の副所長をさせてもらってたのよ』


 すんごいドヤ顔してる。

 若くして大きな研究所の副所長にまでなるなんて、この人は相当賢い人なのかな。


『てなわけで、ここからどうしましょう。二人しか入れないのだとしたら、一人がここに残る事になるわ。私が残ってもいいのだけど⋯そうすると、ユキさん、しんどいかも』

「え⋯?」

『気付いてるわよ。私と会うまで、しんどかったでしょ』

「なんで気付いて!?」

『見れば分かる。なんか、あなたは私とよく似てる感じするから』

「そうだったのか? ユキ」

「⋯ごめん、黙ってて」

『私の"ズノウによる影響"が、ユキさんにも与えるみたいよ』


 それで楽になってたんだ。

 だったらどうしよう⋯


 この人を残すと、私が倒れる可能性が高そう。

 かと言って、ルイを残すわけにもいかないし⋯


 試しに、"2"と書かれた中に、私とショウカさんで入ってみる。

 すると、やっぱり彼は入れない様子だった。

 一旦、私たちは外へと出る。


「⋯俺一人、あっち側へ行くよ」

「!? ルイ一人で!?」

「それが一番いい。霧海さん、そうですよね?」

『ショウカでいいわ。最適解はそうだけど、ここでは何が起こるか分からないわよ? 所長の一部である私でも、何一つ分からないんだから』

「でも、"アイツ"とやるには一筋縄じゃいかない。その事前運動だと思って、やってきます」

『ほんとそっくりね、所長に』

「同一人物ですから」


 ルイが私の方を向く。


「すぐ戻ってくるから、悪いけどそっちを頼んだ」

「⋯すぐよ、すぐ戻って来てね」

「その間これ、持っといてくれ」


 渡されたのは、彼がよく使っていたオレンジカラーのハイスマートサングラス。


「これ⋯いつも使うものじゃない」

「だから預ける。きっと役に立つ」

『私が持ってるのと、少し似てるわね』


 ショウカさんがずっと頭に掛けている眼鏡と、確かによく似ている。


「それじゃ、ショウカさん。ユキをお願いします」

『任されました』


 こうして、ルイと一時的に別れる事となった。

 寂しいけど、今はこれしか方法が無い。


『二人で頑張りましょうか』

「⋯よろしくお願いします」

『そんな堅苦しくならなくで、もっと気軽に頼ってくれていいからね』

「ありがとう⋯ございます、ショウカさん」

『ショウカ姉でもいいわよ?』

「⋯それはちょっとまだ⋯」


 渋谷ストリームの2階入口から入って進むと、薄暗いフードコートが待っていた。

 もちろん無人で、ここから35階へ行かなければいけない。


『⋯待って。上に何かいる』


 ショウカさんがサングラスを掛ける。


『4階に3体モンスターがいるわ。気を付けて行きましょ』


 そこまで分かるんだ。

 この人見かけによらず、頼りになる⋯?


『今、この人案外頼りになるって思ったでしょ』

「そんな事も分かるんです?!」

『今のはただの勘。勘が鋭いのよね、私って』

「⋯すみません、バカにした訳ではないです」

『分かってるわ。こっちから行きましょう』

「はい」 


 この人の前では、あまり変な事考えないようにしないと⋯

 それより、私の知ってる渋谷ストリームと形状が違う。


 これが"非渋谷"の影響⋯?

 エスカレーターもエレベーターも見つからないし、無事に行けるのかな⋯


 不安に思っていると、焼肉屋の向こう側にエスカレーターらしきものが見えた。

 しかし、エレベーターがどこにもない。


『ここからしか、上に行けないみたいね』

「エレベーターがどこにも無いですね」

『もし、エスカレーターしか無いのなら移動が面倒ね』


 これ、ルイは一人なのよね⋯?

 大丈夫なのかな⋯ 

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