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第87話 中間

 他に方法は無いのかな。

 未来ルイを助ける、他の方法は。


 走り続ける中、考え続けた。

 ルイと考え続けた。


 でも、今の私たちに出来る事は無かった。

 ただ今を生きるのに精一杯なままで⋯


「あいつが適当な事を言う訳が無い。俺の事、近くで見てきたユキなら分かるだろ?」

「うん⋯でも心配じゃない。彼は5年後のあなたでもあるんだから」

「そうだな⋯俺がもう"あのようになる"事は無いとしても、枝の先では繋がってる。だから分かる、あいつは簡単に消えたりしない」


 話し合っていると、最後の出発ロビー前へと着いた。

 私の立ち絵が用意されている。

 青白いブラウス、白のツイードミニスカート、白のショートブーツ、左に纏めた長髪、今の私の格好まんまだ。


 ここに私の死因が⋯

 ⋯ん、なに?


 突如、私の横を"半透明の何か"が通り過ぎた。

 灰色の⋯蝶⋯?

 それは誘うように、ロビー内へと入って行った。


 私とルイは顔を合わせ、頷き、中へと入る。

 そこには、灰色蝶が何匹も上で漂っていた。


 さらに目線を上にすると、天井には大きな赤字で"新崎ユキの死"。

 壁には、プロジェクションマッピングを応用したような"私の紹介PV"。 


「ユキのはこんな感じか」

「⋯あんま見なくていいから」


 すると、一匹の蝶がゆっくりと上から降りてきた。

 この蝶だけ、他と違う⋯?


「⋯あっちへ飛んでいくぞ、付いて行ってみるか」

「うん」


 先導するように進む"光った灰色蝶"、"残像のような粒子"を発している。

 これ⋯私の"灰涅槃の鬼鎌"から出る粒子と同じ⋯?


 私に影響してだろうか⋯?

 いろんなロビーを通過すればするほど、"その人物へ関与した何か"が出ている⋯?

 憶測でしかないけど⋯


 付いて行った先、"灰色のリフト?"がぽつりとあった。

 その上で蝶が舞っている。

 ⋯それに乗れって事⋯?


「⋯行くしかないな」

「みたいね⋯行きましょ」


 乗った瞬間、リフトは下へと降り始めると同時に、目の前に【07:00】という謎の時間が表示された。


「⋯なにこれ?」


 【06:59】【06:58】【06:57】と時間が減っていっている、何が始まったの⋯?


「ユキ! 上見ろッ!」

「え!?」


 視線を上にすると、なんと上の方が少しずつ砂のように消えていっていた。

 まさかこのタイムリミット⋯この世界の終わりってこと!?

 リフトが搭乗ロビーへと着くと、"YUKI's LOST GATE"を直線先に見つけた。


「走るぞッ!」


 【06:30】【06:29】【06:28】、時間が刻々と過ぎていく。

 搭乗橋を駆け抜けると、中間地点で広い空間に出た。

 そこには⋯


「!? なんでヒナ、ノノ、アスタ君が!?」

「⋯どうなってやがる」

『(聞こえるか⋯この声が⋯)』


 未来ルイの声が、突然アナウンスのように響いた。


「"あいつ"の声か!?」

『(⋯たぶん⋯これが最後の話になる⋯この世界が⋯より早く消されようとしてる⋯そこにいるヤツも⋯用意されたヤツじゃない)』


 "赤い三人衆"が武器を出し、構えている。

 後ろも消えてる⋯逃げられそうにない。


『⋯お前らなら⋯勝てると⋯信じてる⋯後、ユキを殺したのは⋯総理じゃ』


 声が途切れるように聞こえなくなってしまった。


「くそっ⋯あいつはもう⋯コイツらは俺がやるッ! ユキは飛行機へ行けッ!!」

「⋯いえ、私もやる。こんなところで離れ離れなんて⋯いやッ!」


 私は鎌を取り出した。

 鎌から"灰色蝶の粒子"が飛び散る。


「いいのか? 戦いたくないだろ、"アイツら"とは」

「それはそうだけど、あなたといない方が嫌なの、私は」

「⋯なら、俺がアスタとノノをやる。ユキはヒナを」


 そう言うと、彼はなんと"銃剣を二丁"取り出し、前へと飛び出して行った。

 二丁使えるようになってるなんて、また知らない所で変わったの!?

 上手く二人を引き付けると、"赤いヒナ"と私が向かい合った。


 まさか戦わなきゃいけない時が来るなんて⋯

 本人じゃないのは分かってるけど⋯

 タイムリミットは残り【05:30】。


 言ったからには覚悟を決めなきゃいけない、きっとヒナの事を一番分かってるのは私。

 だから、ルイは私に任せたんだ。


 ヒナの背中からは、あの"三翼の天魔神のオーラ"が薄っすらと見える。

 敵になると、こんな怖く感じるのね⋯


 でも、私はルイと進みたいの。

 今は⋯邪魔しないでッ!!

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