他に方法は無いのかな。
未来ルイを助ける、他の方法は。
走り続ける中、考え続けた。
ルイと考え続けた。
でも、今の私たちに出来る事は無かった。
ただ今を生きるのに精一杯なままで⋯
「あいつが適当な事を言う訳が無い。俺の事、近くで見てきたユキなら分かるだろ?」
「うん⋯でも心配じゃない。彼は5年後のあなたでもあるんだから」
「そうだな⋯俺がもう"あのようになる"事は無いとしても、枝の先では繋がってる。だから分かる、あいつは簡単に消えたりしない」
話し合っていると、最後の出発ロビー前へと着いた。
私の立ち絵が用意されている。
青白いブラウス、白のツイードミニスカート、白のショートブーツ、左に纏めた長髪、今の私の格好まんまだ。
ここに私の死因が⋯
⋯ん、なに?
突如、私の横を"半透明の何か"が通り過ぎた。
灰色の⋯蝶⋯?
それは誘うように、ロビー内へと入って行った。
私とルイは顔を合わせ、頷き、中へと入る。
そこには、灰色蝶が何匹も上で漂っていた。
さらに目線を上にすると、天井には大きな赤字で"新崎ユキの死"。
壁には、プロジェクションマッピングを応用したような"私の紹介PV"。
「ユキのはこんな感じか」
「⋯あんま見なくていいから」
すると、一匹の蝶がゆっくりと上から降りてきた。
この蝶だけ、他と違う⋯?
「⋯あっちへ飛んでいくぞ、付いて行ってみるか」
「うん」
先導するように進む"光った灰色蝶"、"残像のような粒子"を発している。
これ⋯私の"灰涅槃の鬼鎌"から出る粒子と同じ⋯?
私に影響してだろうか⋯?
いろんなロビーを通過すればするほど、"その人物へ関与した何か"が出ている⋯?
憶測でしかないけど⋯
付いて行った先、"灰色のリフト?"がぽつりとあった。
その上で蝶が舞っている。
⋯それに乗れって事⋯?
「⋯行くしかないな」
「みたいね⋯行きましょ」
乗った瞬間、リフトは下へと降り始めると同時に、目の前に【07:00】という謎の時間が表示された。
「⋯なにこれ?」
【06:59】【06:58】【06:57】と時間が減っていっている、何が始まったの⋯?
「ユキ! 上見ろッ!」
「え!?」
視線を上にすると、なんと上の方が少しずつ砂のように消えていっていた。
まさかこのタイムリミット⋯この世界の終わりってこと!?
リフトが搭乗ロビーへと着くと、"YUKI's LOST GATE"を直線先に見つけた。
「走るぞッ!」
【06:30】【06:29】【06:28】、時間が刻々と過ぎていく。
搭乗橋を駆け抜けると、中間地点で広い空間に出た。
そこには⋯
「!? なんでヒナ、ノノ、アスタ君が!?」
「⋯どうなってやがる」
『(聞こえるか⋯この声が⋯)』
未来ルイの声が、突然アナウンスのように響いた。
「"あいつ"の声か!?」
『(⋯たぶん⋯これが最後の話になる⋯この世界が⋯より早く消されようとしてる⋯そこにいるヤツも⋯用意されたヤツじゃない)』
"赤い三人衆"が武器を出し、構えている。
後ろも消えてる⋯逃げられそうにない。
『⋯お前らなら⋯勝てると⋯信じてる⋯後、ユキを殺したのは⋯総理じゃ』
声が途切れるように聞こえなくなってしまった。
「くそっ⋯あいつはもう⋯コイツらは俺がやるッ! ユキは飛行機へ行けッ!!」
「⋯いえ、私もやる。こんなところで離れ離れなんて⋯いやッ!」
私は鎌を取り出した。
鎌から"灰色蝶の粒子"が飛び散る。
「いいのか? 戦いたくないだろ、"アイツら"とは」
「それはそうだけど、あなたといない方が嫌なの、私は」
「⋯なら、俺がアスタとノノをやる。ユキはヒナを」
そう言うと、彼はなんと"銃剣を二丁"取り出し、前へと飛び出して行った。
二丁使えるようになってるなんて、また知らない所で変わったの!?
上手く二人を引き付けると、"赤いヒナ"と私が向かい合った。
まさか戦わなきゃいけない時が来るなんて⋯
本人じゃないのは分かってるけど⋯
タイムリミットは残り【05:30】。
言ったからには覚悟を決めなきゃいけない、きっとヒナの事を一番分かってるのは私。
だから、ルイは私に任せたんだ。
ヒナの背中からは、あの"三翼の天魔神のオーラ"が薄っすらと見える。
敵になると、こんな怖く感じるのね⋯
でも、私はルイと進みたいの。
今は⋯邪魔しないでッ!!