「とうとうアスタか⋯あいつが死ぬなんてありえるのか⋯?」
「⋯一番想像できないわね」
第四の出発ロビー。
私が先に入ると、
「きゃぁっ!?」
「⋯なんだ!?」
こんなのビビるに決まってるでしょ!?
薄暗いロビーの中心に"巨大な黒能面"が置いてあり、大声を上げてしまった。
「んだこりゃ⋯アスタが付けてるからか?」
「もう⋯こんなの置かないでよ⋯」
「⋯なんかしてくる訳じゃ、なさそうか」
ぐるっと黒能面の周りを回ってみると、裏側に"白石アスタの死"と赤字で書かれていた。
こんなとこに書くなんて、まるで"これのせい"って言ってるみたい⋯
壁には、やっぱり謎の紹介PV。
だけど、ここではニイナとカイ君までも映っている。
黒能面の背後に続く通路を歩くと、"霧?"が流れてきた。
なにこの"青い霧"⋯
「この"青い霧"の中にエスカレーターがあるっぽいな」
ルイの指差すところ、上の方にエスカレーターの一部が露出していた。
その他はどうなってるか、全然分からない。
「行くしかねぇよな⋯待ってても時間が来ちまう」
「そうね⋯」
勇気を出して、"青い霧"の中へと一歩踏み入れる。
人体への影響は⋯特に無さそう。
エスカレーターはというと、案外すぐ近くだった。
足を乗せた瞬間、青く光って動き出し、身体は勝手に上っていく。
そこからは、いつもの搭乗ロビーへと繋がっていた。
"ASUTA's LOST GATE"の文字が記されたゲート。
「はい」
私はそっとルイへ手を差し出した。
「⋯」
彼は何も言わず、私の左手を取り、しっかりと握る。
ここまで来たら、最後までしてもらわないとね。
もしかしたら私、この時間を楽しみに今頑張ってるのかもしれない。
ここの搭乗橋にも、また"青い霧"が漂っていた。
でももう、恐れたりなんてしない。
私たちがみんなを助けなきゃいけないんだから。
「なんか、強くなったな」
「そう?」
「さっきと違う、ずっと前を向いてる」
「慣れたからかもね」
あなたがいるから⋯なんて言ったらどんな顔するかな。
それは現実に帰ってからに取っておく。
機内は変化なく、相変わらず全席スーパーファーストクラス。
だけど一席、青色の席があった。
「合わせて青にしてみるか」
「いいんじゃない?」
座ると、アナウンスが流れ始める。
『本日は白空羽田空港(しろぞらはねだくうこう)のNJA(ネオジャパンエアーラインズ)をご利用頂き、誠にありがとうございます。この飛行機はNJA航空、"白石アスタ様の死因確認"行き、004便でございます。当機はまもなく離陸致しますので、シートベルトの方を、よろしくお願い致します』
四便目まで来た。
これを見たら、あと一つ。
そういえば、ニイナとカイ君は出発口が無かった。
二人は最後まで生き残ったって事?
考えていると、光に邪魔された。
⋯ここ⋯国会議事堂前?
夜の国会議事堂前で、残ったみんなが何かと争っている。
ぼやけた視界がはっきりすると、大きな竜が目に入った。
あれは⋯輝星竜じゃない!?
ついに、あの巨竜と対峙している。
経済対策が始まったすぐのあの日、突然メテオを撃ってきたアレだ。
途中、ニイナを庇ってアスタ君が前に出た。
異常な数のメテオが空中と地上からも現れ、それらに挟まれてしまった彼は、数秒で燃えカスとなってしまった。
「アスタぁぁぁぁぁッ!!!」という未来ルイの強烈な叫び声と共に、視界は機内へと戻されていった。
『皆様、ただいま白空羽田空港に着陸致しました。今日もNJA航空をご利用頂きまして、ありがとうございました。皆様の次のご搭乗をお待ちしております。残り⋯1』
アスタ君があんな事に⋯
最後、ニイナ何か言っていたような気がするけど、上手く聞き取れなかった。
「あいつ最後⋯"真犯人は近くにいる"って言ってた」
「え!? 言ってた事分かったの!?」
「口の動きでたぶんな」
「"真犯人が近く"⋯どういう事?」
「さぁ⋯何かに気付いていたのかもな」
急いで最初の場所へと戻ると、未来ルイの身体がさっきと比にならないほど薄れていた。
「大丈夫!?」
『⋯なんとか。質問は1つしか答えられないかもしれない』
「もう本当に助ける方法は無いの!?」
『⋯一つだけ思い付いた方法がある。俺を殺して、L.S.へと取り込むんだ』
「な⋯なにをいってるの!? そんな事できるわけないじゃない!」
『⋯今すぐってわけじゃない。俺が消えた後の"モンスター化された俺"に対してだ⋯頼む、こいつを使ってくれ』
「⋯え⋯?」
彼は"白黒のカプセル?"を取り出した。
中には"七色の液体"が入っている。
『⋯そいつを弱った俺に繋げろ。それでおそらく⋯L.S.内へと吸収できる』
「そんな⋯そんなことなんて⋯」
『⋯それで俺は⋯L.S.内で生きていける』
「あなたは⋯それでいいの⋯?」
『⋯ユキ⋯知ってるだろ? 俺は⋯"イーリス・マザー構想の唯一の成功者"⋯なんだぜ?』
「⋯そうだな。こんな時に俺なら、そう言う」
『⋯だろ? さぁ、聞きたい事を一つ言え』
「ルイ⋯お願い」
全てを任せる事にした。
きっとここは、彼が一番分かってる。
「⋯ニイナには何をさせた方がいい?」
『⋯やっぱ俺だな⋯そいつを聞くなんて⋯いいか、ニイナは"近距離で飛んできた物を自分の弓に3倍で反映するズノウ"がある。俺は知らなかったんだ、そんなのがあるのを。まずは、それを真っ先にしろ。それで戦闘はスムーズになっていく』
「⋯行こう、ユキ」
1階へと走る。
最後の"私の死の確認"へ。