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第81話 涅槃

 次は一人じゃない。

 今出来ない事なんて⋯無い!


『普通ニ死ネルト思ウナァァァァッ!! オ前ラハコノ3階ニ吊ルシ上ゲテヤルカラナァァァァッ!!』

「吊るし上げられるのは、あんたの方ッ!!」


 ⋯恐れず前へ!

 ルイだって、頑張ってる!


「ユキ姉、右! こっちは左!」

「⋯よし!」


 私とノノが前に出てヤツを抑えようとする。

 シロイズノウから2つを組み合わせ、新たなズノウから一撃を仕掛けた。


『ソウダヨナァ!? 人間ハソレニ頼ルシカネェヨナァ!?』


 そう言った大臣の"レアサファイアの剣"が突然青い光を放ち、私の鎌を強烈に照らした。

 すると、なんとあの剣は私と全く同じ姿になった後、あの黒い鬼鎌へと取り込まれ、"灰色の鬼鎌?"へと変わった。


『私ハ全テヲ超エルッ!!』


 そこから激しい反撃が開始された。

 ヤツが振るうだけで、さらに刃先が追加され、1回が3回分もの攻撃へとなっていた。

 ヤバいと感じてすぐ下がった私は、なんとかギリギリで避ける事ができた。


「⋯ノノ! 近付いちゃダメッ!! こっちへッ!!」

「え!?」


 ちゃんと言う事を聞いたノノも傍に寄り、ヤツの様子を伺う態勢へと変える。

 ヒナとニイナの援護もあり、なんとか4人並行状態になるまで下がる事が出来た。


『コレガ怖イカ? 離レタトコロデ意味ハ無イガナァ!?』

「⋯ッ!?」


 驚く事に、ヤツは近距離に強いだけではなかった。

 半透明状の灰色鬼が鎌を持ち、数体で一気に私たちを襲ってきた。


『サッサト死ネェッ!! オ前ラミタイナバカハ終ワリダァッ!! コレカラハ私タチAIガ食物連鎖ノ頂点ニ立ツッ!!!』


 ⋯まずい

 選択を誤ったかもしれない。


 近接戦の方がまだ可能性があったかもしれない。

 このままだと本当に⋯


 想像以上だった。

 私たちなら対抗できると思っていた。

 こっちはEL4人なのに、それでも大きな差を感じる。


 こんなの⋯

 こんなの私たちじゃ⋯


『(⋯まだだユキ、このズノウをお前に渡す)』

「(!? この声!?)」

『(安心しろ。こいつをお前だってすぐ使いこなす事が出来る。だってお前は、俺によく似てんだからな)』

「(⋯⋯ルイ)」

『(見せてやれ⋯アイツの最適解を超える最適解がこっちにはある事を⋯さぁ、前へ走れ!)』

「(⋯信じてるからね⋯ルイ!)」


 私の足は勝手にアイツへと走り出していた。


「⋯先輩!? 危ないッ!!」

「ユキちゃんッ!!」

「ユキ姉ッ!!」


 私の鎌から"灰色蝶の粒子"が散乱する。

 それを前にさらすだけで、灰色の鬼を消し去った。


『⋯何ヲシテイル? ナゼ消エタ?』


 四方八方から鬼が襲って来ようと、そんなものに意味は無い。


『⋯ナゼダ? ナゼダナゼダナゼダ!? オ前ノ鎌ヨリ俺ノ鎌ノ方ガ上ダトイウノニ!?』

「そんなの⋯私が全てを超えたからよッ!!」

『ハァ!?』


 次の瞬間、ヤツの"灰色の鬼鎌?"をトレースするようにして、私の鎌は突然変異した。

 "灰涅槃の鬼鎌(アッシュニルヴァーナ・デーモンデスサイズ)"、これが私とルイで創った力。

 "シロイズノウ"は"ハイネハンノズノウ"へと名前が上書きされ、ズノウ一覧も全てが切り替わる。


『⋯フザケルナ⋯フザケルナァァァァァァァッ!! ソンナモノガココニアル訳ガナイダロウガァァァァァァッ!!! 私タチAIニ間違イハナイッ!!!』


 私は"ハイネハンノズノウ"から1つを取り出す。

 辺りの景色が一変し、私とアイツだけの世界へとなった。


『⋯ドコダ⋯ナンダココハ⋯?』

「ようこそ、灰涅槃の楽園へ」

『⋯ナンダソレハ?』

「佐野大臣、あなたは今から消える。最後に聞いておきたい事があるわ。七色のL.S.はどこ?」

『ハァ? 調子ニ乗ルナヨ、バカ女ガ。タマタマ上手クイッタヨウダガ、二度目ハナイ! 死ネェェェェ!!!』


 ヤツがこっちへ走ってくる最中、ヤツの周囲に"4つの灰涅槃の扉"が開かれた。

 その中から"巨大な手"がそれぞれ現れ、押しつぶすようにして一瞬で大臣の身体を粉々にした。

 そして、辺りの景色が戻っていく。


「あ、ユキちゃんどこ行ってたの!? 大臣は!?」

「⋯あれが大臣よ」


 粉々になったヤツを指差す。

 唯一残った少しの頭破片が、上に吊るされていた。


「⋯どうやったんですか!? どう見ても私たちの力ではどうにも出来ないほどだったのに!」

「そうだよ、ユキ姉! 急にいなくなるし!」


 私は床に倒れ込んだ。


「ユキちゃん⋯!」

「⋯大丈夫。ちょっと疲れただけ」


 天井を見ながら深呼吸する。

 向こうにいた2体も彼がやってくれたようで、もうここには何もいない、黒い雪ももう降っていない。


『ほらな⋯お前は俺と似てんだよ』

「⋯ふふっ。そうね」


 ニイナには聞こえていたみたいだけど、ヒナとノノは首を傾げていた。

 この後、奥の金庫に隠されていたルイのL.S.を取り出す事に成功した。


 佐野大臣を倒した時に入手した"特殊暗号"を入れる事で、開ける事ができ、そのタイミングと同時くらいにシンヤ君から通話が入った。


「お、繋がった! やっと降りれそうだぜ! いきなり降下し始めたんだがよぉ、新崎さんたちが助けてくれたのか!?」

「間に合ったみたいね。こっちで待ってるから」

「おう!」

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