次は一人じゃない。
今出来ない事なんて⋯無い!
『普通ニ死ネルト思ウナァァァァッ!! オ前ラハコノ3階ニ吊ルシ上ゲテヤルカラナァァァァッ!!』
「吊るし上げられるのは、あんたの方ッ!!」
⋯恐れず前へ!
ルイだって、頑張ってる!
「ユキ姉、右! こっちは左!」
「⋯よし!」
私とノノが前に出てヤツを抑えようとする。
シロイズノウから2つを組み合わせ、新たなズノウから一撃を仕掛けた。
『ソウダヨナァ!? 人間ハソレニ頼ルシカネェヨナァ!?』
そう言った大臣の"レアサファイアの剣"が突然青い光を放ち、私の鎌を強烈に照らした。
すると、なんとあの剣は私と全く同じ姿になった後、あの黒い鬼鎌へと取り込まれ、"灰色の鬼鎌?"へと変わった。
『私ハ全テヲ超エルッ!!』
そこから激しい反撃が開始された。
ヤツが振るうだけで、さらに刃先が追加され、1回が3回分もの攻撃へとなっていた。
ヤバいと感じてすぐ下がった私は、なんとかギリギリで避ける事ができた。
「⋯ノノ! 近付いちゃダメッ!! こっちへッ!!」
「え!?」
ちゃんと言う事を聞いたノノも傍に寄り、ヤツの様子を伺う態勢へと変える。
ヒナとニイナの援護もあり、なんとか4人並行状態になるまで下がる事が出来た。
『コレガ怖イカ? 離レタトコロデ意味ハ無イガナァ!?』
「⋯ッ!?」
驚く事に、ヤツは近距離に強いだけではなかった。
半透明状の灰色鬼が鎌を持ち、数体で一気に私たちを襲ってきた。
『サッサト死ネェッ!! オ前ラミタイナバカハ終ワリダァッ!! コレカラハ私タチAIガ食物連鎖ノ頂点ニ立ツッ!!!』
⋯まずい
選択を誤ったかもしれない。
近接戦の方がまだ可能性があったかもしれない。
このままだと本当に⋯
想像以上だった。
私たちなら対抗できると思っていた。
こっちはEL4人なのに、それでも大きな差を感じる。
こんなの⋯
こんなの私たちじゃ⋯
『(⋯まだだユキ、このズノウをお前に渡す)』
「(!? この声!?)」
『(安心しろ。こいつをお前だってすぐ使いこなす事が出来る。だってお前は、俺によく似てんだからな)』
「(⋯⋯ルイ)」
『(見せてやれ⋯アイツの最適解を超える最適解がこっちにはある事を⋯さぁ、前へ走れ!)』
「(⋯信じてるからね⋯ルイ!)」
私の足は勝手にアイツへと走り出していた。
「⋯先輩!? 危ないッ!!」
「ユキちゃんッ!!」
「ユキ姉ッ!!」
私の鎌から"灰色蝶の粒子"が散乱する。
それを前にさらすだけで、灰色の鬼を消し去った。
『⋯何ヲシテイル? ナゼ消エタ?』
四方八方から鬼が襲って来ようと、そんなものに意味は無い。
『⋯ナゼダ? ナゼダナゼダナゼダ!? オ前ノ鎌ヨリ俺ノ鎌ノ方ガ上ダトイウノニ!?』
「そんなの⋯私が全てを超えたからよッ!!」
『ハァ!?』
次の瞬間、ヤツの"灰色の鬼鎌?"をトレースするようにして、私の鎌は突然変異した。
"灰涅槃の鬼鎌(アッシュニルヴァーナ・デーモンデスサイズ)"、これが私とルイで創った力。
"シロイズノウ"は"ハイネハンノズノウ"へと名前が上書きされ、ズノウ一覧も全てが切り替わる。
『⋯フザケルナ⋯フザケルナァァァァァァァッ!! ソンナモノガココニアル訳ガナイダロウガァァァァァァッ!!! 私タチAIニ間違イハナイッ!!!』
私は"ハイネハンノズノウ"から1つを取り出す。
辺りの景色が一変し、私とアイツだけの世界へとなった。
『⋯ドコダ⋯ナンダココハ⋯?』
「ようこそ、灰涅槃の楽園へ」
『⋯ナンダソレハ?』
「佐野大臣、あなたは今から消える。最後に聞いておきたい事があるわ。七色のL.S.はどこ?」
『ハァ? 調子ニ乗ルナヨ、バカ女ガ。タマタマ上手クイッタヨウダガ、二度目ハナイ! 死ネェェェェ!!!』
ヤツがこっちへ走ってくる最中、ヤツの周囲に"4つの灰涅槃の扉"が開かれた。
その中から"巨大な手"がそれぞれ現れ、押しつぶすようにして一瞬で大臣の身体を粉々にした。
そして、辺りの景色が戻っていく。
「あ、ユキちゃんどこ行ってたの!? 大臣は!?」
「⋯あれが大臣よ」
粉々になったヤツを指差す。
唯一残った少しの頭破片が、上に吊るされていた。
「⋯どうやったんですか!? どう見ても私たちの力ではどうにも出来ないほどだったのに!」
「そうだよ、ユキ姉! 急にいなくなるし!」
私は床に倒れ込んだ。
「ユキちゃん⋯!」
「⋯大丈夫。ちょっと疲れただけ」
天井を見ながら深呼吸する。
向こうにいた2体も彼がやってくれたようで、もうここには何もいない、黒い雪ももう降っていない。
『ほらな⋯お前は俺と似てんだよ』
「⋯ふふっ。そうね」
ニイナには聞こえていたみたいだけど、ヒナとノノは首を傾げていた。
この後、奥の金庫に隠されていたルイのL.S.を取り出す事に成功した。
佐野大臣を倒した時に入手した"特殊暗号"を入れる事で、開ける事ができ、そのタイミングと同時くらいにシンヤ君から通話が入った。
「お、繋がった! やっと降りれそうだぜ! いきなり降下し始めたんだがよぉ、新崎さんたちが助けてくれたのか!?」
「間に合ったみたいね。こっちで待ってるから」
「おう!」