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第79話 三階

 飛行機内に入った瞬間、アナウンスが流れた。


『ようこそ、NJA(ネオジャパンエアーラインズ)の空旅(そらたび)へ。現在、空旅(そらたび)は休止状態となっておりますが、代わりに"睡眠空旅(すいみんそらたび)"を実施中です。座って是非体感してください』


 ⋯急になに?

 "睡眠空旅(すいみんそらたび)"⋯?


 歩いて行くと、所々寝ている人がいる。

 何やら、今はリラックスルームとして使われているらしい。


 この飛行機、やたら広いと思ったら2階建て。

 ジャンボジェットってヤツかな?


 歩くほどクラスが上がっていき、エコノミークラス、プレミアムエコノミークラス、ビジネスクラス、ファーストクラスとなっていった。

 一番奥まで来ると、"スーパーファーストクラス"なんてものまである。


 もちろん全席使われており、個室内は見る事が出来ない。

 ネットで"スーパーファーストクラス"を調べてみると、個別で浴槽や冷蔵庫など、あらゆる最新小型AIが設置されているという。

 ⋯いつかゆっくりできる時に、ルイと来てみたいなぁ


 2階に上がると、1階と同様に分かれていた。

 こっちの方が人気のようで、人が多い。

 体感、1階の倍以上いる。


 ♢


 どこを探しても"ルイのL.S."は見当たらず、帰り際に少しだけ"睡眠空旅"とやらを体感してみた。

 スイッチを入れて寝ると、どういう仕組みなのか、脳内に"空の旅行風景"が浮かんでくる。


 これ凄い、寝ているだけで映像や音などの臨場感を味わえ、もう空を飛ばなくてよくなってくる。

 何かデバイスを付ける必要も無いため、気軽にできるのもポイントが高い。

 ⋯だけど、今はこんな事してる場合じゃない


 さっき出て行った人たちは、ここでこうして休んでいたのね。

 ヤツらもいないし、住み着いている人も多そう。

 いつまで安全かは分からないけど⋯


 集合場所へ戻ってくると、私以外みんないた。

 見るに、誰も"ルイのL.S."を見つけられなかったみたい。


「ユキ先輩の方も、無かったみたいですね」

「えぇ、次へ行きましょうか」

「ねぇユキちゃん、"睡眠空旅"やってみた?」

「⋯ほんのちょっとだけ」

「やっぱやっちゃうよね~、結局みんなやっちゃったんだ」

「黒夢はしないと思ってたけどね」

「⋯いいでしょ、数秒なんだから」


 まぁ⋯やりたくなるよね、あれは。

 ニイナがやってるのを想像すると⋯ちょっと面白いかも。


 それで、残るのは"3階のみ"になったわけだけど⋯

 一旦、アスタ君に連絡してみよう。


「そっちはどう?」

「⋯⋯マズい事になった。僕らは今⋯⋯上空にいる」

「え!? 上空!? どういう事!?」

「⋯分からない」


 ニイナとノノが察し、すぐに外へと向かった。


「何者かに邪魔された可能性が高い。機内に探索に入った途端、勝手に離陸を始めたんだ。たぶん今、東京上空を旋回している」

「⋯そんな」

「ただ、第3ターミナルは全て確認できたはずだ。こっちには"ルイ君のL.S."は無いと断定していい」

「え、早くない!?」

「手伝ってくれた人がいたんだ。第2ターミナルの方は?」

「⋯まだ見つかってない。残りは3階だけなんだけど、"行くと殺されるっていう暗黙の了解"があるみたいで⋯」

「厄介だね、それは⋯早くそっちに行きたいけど、僕の予想だと、着陸には5~6時間はかかると見た方がいい。おそらくこの機内⋯⋯"何か"がいる」

「"何か"⋯?」

「⋯さっきから変な音がする⋯⋯こ⋯⋯あ⋯⋯し⋯⋯き⋯⋯える?」

「アスタ君? ⋯アスタ君!?」

「⋯⋯お⋯⋯⋯め⋯⋯だ」


 え、切れた!?

 急に通話が繋がらなくなってしまった。

 何度かけても繋がらない、メッセージも届かない。


「繋がらないの?」

「うん⋯」


 ヒナと話していると、


「⋯はぁ⋯はぁ⋯赤い飛行機⋯上空にいるの、微かに見えました」

「⋯ふぅ⋯かなり高いよ、飛んでる位置」


 ⋯どうしよう

 こんな事になるなんて⋯


『⋯ユキ』

「え、ルイ!?」

『出てこれなくて⋯わるいな⋯アスタの事は聞いていた⋯こうなったら⋯俺たちで⋯3階へ行くぞ』

「⋯でも、行くと殺されるって⋯」

『⋯俺が⋯なんとかする⋯信じて⋯行け』

「それだと、アスタ君たちは?」

『⋯あいつらが⋯飛ばされた原因⋯"この3階"にある』

「!? ほんとに!?」

『⋯今俺は⋯"このモンスターの力"が⋯あるからな⋯こいつのセンサーが⋯3階と上空⋯繋がってるのを⋯発見した』


 3階と上空が⋯?

 一体どういう事⋯?


「ルイさん、なんて言ってるの?」

「⋯3階へ行けって、"アスタ君らが飛ばされた原因が3階にある"みたいで⋯」

「3階って、私絶対行くなって言われた」

「⋯それ私も」

「私もです」


 ヒナの言葉に、ニイナとノノが賛同する。

 私だけじゃなかったんだ、言われたの。


「でも、ルイがなんとかするって、だから私は行こうと思う」

「ルイ様⋯」


 3人は息を合わせたように顔を合わせ、


「⋯行きましょう、3階へ」

「待ってたら、アスタさんたちも危ないもんね! 行こ!」

「決めたなら付いてくだけ!」


 一緒に行く事を選んでくれた。

 こうなったら、私も責任を持たないといけない。

 ちゃんとみんなを、生きてここへ。


「また固まって動きましょ。全部終わらせて、また睡眠空旅しないとね」


 ― こうして"行くと殺される"という3階へ、私たちは進み始めた

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