目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第77話 車内

「なんでここにいるの!?」

「スカイツリーへ来たのがGPSにて判明しましたので、4階から上れるエレベーターの内部に、この"超小型カメレオンドローン"で侵入して追跡させてもらいました」

「そんなのがあるの!? 気付かないわそれは⋯」


 米粒サイズの変色型ドローン。

 その場に沿った色へと変色し、どこにいるか目を凝らして見ないと本当に分からない。


「"ユエ様"の死亡から規定時間を超えたため、我々の所有権は"新崎ユキ様"へと移ったのです。これからは"ユキ様"にお仕えします」

「え、私!?」

「はい。"三船ルイ様"も死亡のため、"ユキ様"へとなっています」


 ヒナとシンヤ君が小さな声で「いいな~」と言ったのが聞こえた。

 私には何が何やらって感じなんだけど⋯


「羽田空港へ行かれるのですよね。こちらへ準備しております」


 ロアツーの案内先に、"あの車"があった。

 飯塚さんに散々お世話になった、"あの車"が。

 その手前で、プロトロア2体が立って待っている。


「んじゃ! また世話になるしかねぇな!」


 シンヤ君が一番に乗る。

 次にヒナが乗ろうとした時、


「(これって、僕たちも乗っていい感じ?)」


 アスタ君が私の傍で呟いた。


「(ダメって言ったら?)」

「(え、この流れで?)」

「(嘘に決まってるでしょ、好きなとこへどうぞ)」

「(そういう事言うようになったんだ、新崎さん)」

「(前と変わった?)」

「(なんか、より人間らしくなったというか、そういうとこ好きだよ僕は)」

「(え、告白?)」

「(さぁ?)」


 全員が乗り、車は羽田空港へと向かい始めた。

 約30分ほど掛かるみたい。

 この車は"フライト機能"も付いてるらしいけど、モンスター等に狙い撃ちされる可能性があるため、それはしないで行く。


 各々が到着までゆっくりする中、私はアスタ君がいる個室へと入った。

 この車には個室が4つほどあり、ヒナ以外が今使っている。


「ねぇ、ちょっといい?」

「いいよ」

「悪いわね、一人でいるとこ」

「構わないよ。要件があるんだよね?」


 L.S.で何かを調べながら、私の話を聞いている。


「うん。新宿警察署⋯行ったのよね?」

「行ったよ。君たちが僕たちを探すために入った可能性があったからね。そっちも同じ?」

「うん。やっぱりすれ違いだったんだ」

「みたいだね」

「気になってた事があるんだけど、新宿警察署の9階、あれはどうやって行ったの? 8階から上る方法無かったでしょ?」


 1つ目の疑問。

 あれはどうしたんだろう。

 "金弓のマーク"以外、何か方法があったと思うんだけど⋯


「あー、あれはね、有川君が見つけてくれたんだよ、隠れたエスカレーターを。彼が言うに、"適当に銃撃ってみたら開いた"そうだ」

「⋯なんかシンヤ君らしい」

「大雑把すぎるよ、ほんと」

「もう1つ、なんでスカイツリーへと来てたの? あの"死者生者確認モノリス"っていうの、あるのを途中で気付いたとか?」


 2つ目の疑問。

 どうやって知ったんだろう。

 エレベーター内のアナウンスでしか、私たちは気付けなかった。


「あれも有川君さ。"リニア内にある変なモニターが見えた"って言うから、見たら"アレ"を宣伝してたんだ。新崎さんたちは見つけられなかった?」

「⋯うん。どの辺にあったの? それ」

「"5号車の真ん中"辺り。つまりは、僕たちが乗ったというのに気付いて、帰ってきた"赤いリニア"に乗ってスカイツリーに来たんだね」

「そうそう」


 聞く限り、シンヤ君大活躍してない?

 確かに、彼は突拍子もない事を急にするから、それが新しい発想に繋がったりするけど⋯


「逆に、僕から質問いい?」

「あ、うん」

「ニイナはどうだった? 迷惑かけなかった?」

「まぁ、ちょっと暴走気味なとこはあったりしたけど⋯いい子よ、あの子は」

「前まで結構暗い顔してたんだ。けど再会した時、顔が明るくなってた。よっぽど君たちとの出会いが良かったのか、それか何かしてあげた?」

「ん~、弓を"Another ELECTIONNER"へとしてあげた事かな?」

「⋯そういうことか。ありがとね、いろいろと」

「ううん、こっちこそシンヤ君がお世話になったみたいで」

「いや、彼がいなかったら僕らはもっと苦労してたさ。彼をこっちにこのまま連れてっていい?」

「ニイナと交換? それならいいけど」

「それは厳しいなぁ~。気に入ったんだ、ニイナの事」

「うん。妹みたいって思って接してる」

「へぇ~、ノノちゃんがいるのに?」

「どっちも大事なのよ。あの二人、最初はすっごい喧嘩してたんだけど、今ではいいコンビになれそうな気がするのよね」

「それなら、羽田空港では"このままの組み合わせ"でいこうか」

「"このまま"って、女子組と男子組のままでって事?」

「うん。それの方が現状はいいだろうし、僕の方でも調べたい事があるからね」


 それからちょっとして、私は個室を出た。

 ヒナのいるメインルームへと戻る。


「あ、ユキちゃん。この"桜苺のモンブラン"食べる?」

「食べる食べる!」


 食べながら、アスタ君が最後に言ってた事を思い出す。

 "僕の方でも調べたい事がある"って言ってたけど、何を調べるつもりなんだろう⋯?

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?