「なんでここにいるの!?」
「スカイツリーへ来たのがGPSにて判明しましたので、4階から上れるエレベーターの内部に、この"超小型カメレオンドローン"で侵入して追跡させてもらいました」
「そんなのがあるの!? 気付かないわそれは⋯」
米粒サイズの変色型ドローン。
その場に沿った色へと変色し、どこにいるか目を凝らして見ないと本当に分からない。
「"ユエ様"の死亡から規定時間を超えたため、我々の所有権は"新崎ユキ様"へと移ったのです。これからは"ユキ様"にお仕えします」
「え、私!?」
「はい。"三船ルイ様"も死亡のため、"ユキ様"へとなっています」
ヒナとシンヤ君が小さな声で「いいな~」と言ったのが聞こえた。
私には何が何やらって感じなんだけど⋯
「羽田空港へ行かれるのですよね。こちらへ準備しております」
ロアツーの案内先に、"あの車"があった。
飯塚さんに散々お世話になった、"あの車"が。
その手前で、プロトロア2体が立って待っている。
「んじゃ! また世話になるしかねぇな!」
シンヤ君が一番に乗る。
次にヒナが乗ろうとした時、
「(これって、僕たちも乗っていい感じ?)」
アスタ君が私の傍で呟いた。
「(ダメって言ったら?)」
「(え、この流れで?)」
「(嘘に決まってるでしょ、好きなとこへどうぞ)」
「(そういう事言うようになったんだ、新崎さん)」
「(前と変わった?)」
「(なんか、より人間らしくなったというか、そういうとこ好きだよ僕は)」
「(え、告白?)」
「(さぁ?)」
全員が乗り、車は羽田空港へと向かい始めた。
約30分ほど掛かるみたい。
この車は"フライト機能"も付いてるらしいけど、モンスター等に狙い撃ちされる可能性があるため、それはしないで行く。
各々が到着までゆっくりする中、私はアスタ君がいる個室へと入った。
この車には個室が4つほどあり、ヒナ以外が今使っている。
「ねぇ、ちょっといい?」
「いいよ」
「悪いわね、一人でいるとこ」
「構わないよ。要件があるんだよね?」
L.S.で何かを調べながら、私の話を聞いている。
「うん。新宿警察署⋯行ったのよね?」
「行ったよ。君たちが僕たちを探すために入った可能性があったからね。そっちも同じ?」
「うん。やっぱりすれ違いだったんだ」
「みたいだね」
「気になってた事があるんだけど、新宿警察署の9階、あれはどうやって行ったの? 8階から上る方法無かったでしょ?」
1つ目の疑問。
あれはどうしたんだろう。
"金弓のマーク"以外、何か方法があったと思うんだけど⋯
「あー、あれはね、有川君が見つけてくれたんだよ、隠れたエスカレーターを。彼が言うに、"適当に銃撃ってみたら開いた"そうだ」
「⋯なんかシンヤ君らしい」
「大雑把すぎるよ、ほんと」
「もう1つ、なんでスカイツリーへと来てたの? あの"死者生者確認モノリス"っていうの、あるのを途中で気付いたとか?」
2つ目の疑問。
どうやって知ったんだろう。
エレベーター内のアナウンスでしか、私たちは気付けなかった。
「あれも有川君さ。"リニア内にある変なモニターが見えた"って言うから、見たら"アレ"を宣伝してたんだ。新崎さんたちは見つけられなかった?」
「⋯うん。どの辺にあったの? それ」
「"5号車の真ん中"辺り。つまりは、僕たちが乗ったというのに気付いて、帰ってきた"赤いリニア"に乗ってスカイツリーに来たんだね」
「そうそう」
聞く限り、シンヤ君大活躍してない?
確かに、彼は突拍子もない事を急にするから、それが新しい発想に繋がったりするけど⋯
「逆に、僕から質問いい?」
「あ、うん」
「ニイナはどうだった? 迷惑かけなかった?」
「まぁ、ちょっと暴走気味なとこはあったりしたけど⋯いい子よ、あの子は」
「前まで結構暗い顔してたんだ。けど再会した時、顔が明るくなってた。よっぽど君たちとの出会いが良かったのか、それか何かしてあげた?」
「ん~、弓を"Another ELECTIONNER"へとしてあげた事かな?」
「⋯そういうことか。ありがとね、いろいろと」
「ううん、こっちこそシンヤ君がお世話になったみたいで」
「いや、彼がいなかったら僕らはもっと苦労してたさ。彼をこっちにこのまま連れてっていい?」
「ニイナと交換? それならいいけど」
「それは厳しいなぁ~。気に入ったんだ、ニイナの事」
「うん。妹みたいって思って接してる」
「へぇ~、ノノちゃんがいるのに?」
「どっちも大事なのよ。あの二人、最初はすっごい喧嘩してたんだけど、今ではいいコンビになれそうな気がするのよね」
「それなら、羽田空港では"このままの組み合わせ"でいこうか」
「"このまま"って、女子組と男子組のままでって事?」
「うん。それの方が現状はいいだろうし、僕の方でも調べたい事があるからね」
それからちょっとして、私は個室を出た。
ヒナのいるメインルームへと戻る。
「あ、ユキちゃん。この"桜苺のモンブラン"食べる?」
「食べる食べる!」
食べながら、アスタ君が最後に言ってた事を思い出す。
"僕の方でも調べたい事がある"って言ってたけど、何を調べるつもりなんだろう⋯?