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第75話 離別

「その声⋯新崎さんか!?」

「え⋯シンヤ君!?」

「おう! やっと会えたな!」

「よかったぁ⋯生きてたのね!」

「ったりめぇだろ! 簡単に死ぬわけがねぇ!」


 なんとその人影の一人は"シンヤ君だった。

 あまりに嬉しくて、涙が出そうになる。

 やっと⋯やっと見つけた⋯!


「お、そっちは?」

「この子はノノ。私とルイが昔よく一緒に遊んでいたの、小学生の時に」

「へぇ~、よろしくな!」

「えっと⋯どうも」


 残りの二人が霧から姿を現した。


「"これ"で来ているのは分かっていたよ、やっと会えたね」

「アスタ君! それが"死者生者確認"モノリスってやつなの?」

「そう」


 アスタ君が触る"真っ赤なお墓?"のようなシステム。

 あれで私たちが来るのが見えていたという。


「"これ"の示す内容が本当に正しいかどうか分からない。だから、ここで会えたという事は正しいんだろうね。ニイナも大変だったね、君なら生きていると信じてたよ」

「⋯私も⋯信じてました⋯こんな嬉しい事、ありません⋯カイもお疲れ様」

「ニイナもな」


 初めてニイナの涙を見た。

 彼女の背中をそっとさすった。


「ひなひー! 会えて嬉しいぜぇ~!」

「私もですよ~! それでどうしてそんな格好してるんですか?」

「あぁこれはな、アスタの野郎に借りたんだよ! この格好ならよぉ、銃で撃たれた時防いでくれるらしいんだ。"近くの3人以上が同じ服装なら、そういう効果がある"んだとよ!」


 それでシンヤ君も"黒い服装"をしてたのね。

 なら、前に聞いた目撃情報に納得がいく。


「え⋯私、知りませんでした」

「ごめんね、カイとニイナにはあえて言わなかったんだ。どこまで効果があるか分からないから、実際に食らった時に言おうと思ってたんだよ。まぁ効くのが分かったから、カイには言ったけどね」

「僕がヘマして撃たれてさ~、助かりました」


 それぞれが嬉しそうにする中、私は一人、"死者生者確認モノリス"へと近付いた。

 ホログラムのタッチパネルが起動した。


 安心できた今、"早く確認しなければいけない人"がいる。

 私は検索欄に【三船類】と入れる。


 何人か同名が一覧に出てきたけど、顔、年齢、身長、体重など、個人情報を比べてすぐに分かるようになっている。

 とにかく今は彼の無事が知りたい、スクロールして彼を探す。


 【生存中】と【死亡】のどちらかの情報が名前の横に表示されている。

 そこだけでもすぐに見たい。


 絶対に生きてる。

 絶対に⋯!


 次の瞬間、自分が"何を見ているか"分からなくなった。


「⋯⋯新崎さん⋯⋯見てしまったんだね」

「⋯⋯なによ⋯⋯これ⋯⋯?」

「⋯僕も信じていない。だけど、"これ"が正しい事がちょうど証明されてしまった⋯」


 ヒナ、ニイナ、ノノが気になったようで、こっちへ来る。


「⋯⋯ルイ⋯⋯様が⋯⋯死亡⋯⋯?」

「⋯⋯あのルイ兄⋯⋯が⋯⋯」


 言わないで。

 その言葉を言わないで。


 言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで


「うそだよ⋯⋯こんなの嘘だよッ! 絶対ルイさんは生きてるよッ! そうだよねッ!? ユキちゃんとニイナちゃんは見たんだよねッ!?」


 そう、だからこれは全部嘘。

 私とニイナは見たんだ。

 ルイが生きているのを。


「⋯⋯ですが、私が見たのは"霊のような姿"でした。消えてしまって、生きているのかどうかは⋯」

「⋯⋯なに言ってるのッ!!」

「ユキ⋯先輩」


 私はニイナに詰め寄った。


「あなたも私も見たのッ!! ルイがいるのをッ!! ねぇそうでしょ!? ねぇッ!!」

「そう⋯です⋯けど⋯でも」

「でもなに? ふざけた事言うなら、いくらあなたでも⋯!!」


 その瞬間、背後から誰かに止められた。


「⋯ルイ様!?」


 ニイナが目を見開いて驚く。

 私はすぐさま振り向いた。


「⋯ルイ!?」


 しかし、様子がおかしい。

 微かに触られている感覚はあるものの、身体は透明のように薄く、熱を全く感じない。


『⋯俺は⋯もういない』

「⋯⋯え⋯⋯」

『⋯肉体は⋯もうないんだ』

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