エレベーターが帰ってくるまで、近くにあった"ソファ風ベンチ"へと座った。
今のうちにXTwitterを確認してみるが、相変わらず"はぐれた3人"の手掛かりは見当たらない。
その代わり、スカイツリーが現状どんな状態なのかを書いてる人が結構いた。
「霧だらけで危険そうだった」「霧で何が何やらよく分からない」という内容ばかりだった。
みんなにも情報を共有する。
「⋯厄介ですね。こんな事になってるなんて」
「"赤い霧"ってさぁ、毒霧じゃないよね?」
「⋯たぶんね」
新宿警察署で使ったお面、吸った酸素を浄化する仕組みも付いてるのよね。
ノノの言った事が本当なら怖いし、ニイナまだ予備持ってるかな。
「ニイナ、私たちが付けてるお面の予備ある?」
「はい、ありますが」
「ノノに1個あげて、一応対策しといた方がいいわ」
「⋯仕方ないですね、これは"先輩方のための物"なんですけど」
「そんな強調しながら言わなくてよくない!?」
ノノが渡されたお面を付ける。
これ本当に便利なのよね。
付けていて違和感無くて、肌にも優しい、耳も痛くない。
「この面ってどこで手に入れたの?」
「"七首黒能面"っていうボスクラスの周りにいたモンスターからドロップしたやつ」
「へぇ~、その"七首黒能面"ってのは強かった?」
「⋯何度も死にそうになったくらいには」
「へぇ~、黒夢がそこまで言うってことは、ほんとにヤバいヤツだったんだ」
「だからその分、この黒能面で恩恵を受けられてる」
あの"黒能面のようなアイテム"は他にもあるのかな?
私たちは一つも持っていないから、正直かなり羨ましい。
⋯って言っても、死ぬほど苦労しないといけないのよね
ニイナとノノの会話を聞いていたら、巨大な金のエレベーターが帰って来た。
このエレベーターは"どこの1階"に繋がってるんだろう。
もちろんSNSに情報は一つも無い。
エレベーターが動き出すと、突然プロジェクションマッピングが始まり、"スカイツリーのフロアガイド"が壁に映された。
と同時に、アナウンスまで流れ始めた。
『ようこそ、スカイツリーへ。現在、内部全体が赤霧(せきむ)に包まれており、大変見にくい状態となっております。ライトは付けず、目の前と足場を確認して歩くよう、ご注意ください。なお、フロア450にて、"死者生者確認モノリス"が特別に設置されております。ここにしか無いため、大切な人の生存確認および位置確認、これまでの死者の確認、累計死者数の確認等にご活用ください』
"死者生者確認モノリス"⋯?
なにそれ⋯?
⋯もしかしてこれを使えば、"はぐれた3人"がどこにいるか分かるんじゃ⋯ルイの事だって。
私がそう考えたって事は⋯アスタ君も同じ考えをした⋯?
つまりは、一番上に彼らは行ったと考えていい。
他の階の事は無視していい気がする。
私たちは話し合い、とにかく一番上の"死者生者確認モノリス"とやらを目指す事にした。
考える途中、ドアが開く。
そこは本当に霧だらけになっていた。
赤い霧で何も分からない中、私たちは歩き出す。
ここは⋯ソラマチの中⋯?
こんなところに、この"巨大エレベーター"が柱のようになってる。
「ほんとに赤い霧だらけだね~、ここ」
先を行こうとするノノの腕を、私は咄嗟に掴んだ。
「あまり行かないで! こんなのすぐ迷子になる。何がいるか分からないし⋯固まって動きましょ」
「あ、うん」
なるべく4人固まって動く。
方角的に、たぶんこっちにエスカレーターがあったはず。
それで一気に4階へ行けばいい。
4階にはスカイツリーへの入口がある。
まずはそこへ行かないと。
「⋯静かですね、左は大丈夫です」
「右もOK」
「後ろも大丈夫!」
「前もなんともないわ」
左をニイナ、右をノノ、後ろをヒナ、前を私が確認し合いながら歩き続ける。
意外と何も起こらず、エレベーター付近までやってきた。
もう夜になり、空は真っ暗になってる。
「ふぅ、一段落ね。外へ出てしまえば、霧は無いしね」
「でも油断はしないようにしてください。署内では上から降るなんて事もあったんですから」
「⋯そうね」
その先も何かある訳ではなく、4階まで無事に辿り着く事ができた。
スカイツリー内へのエレベーターへと進む。
「よかったね~、何も無くて」
「まだ気を抜かないでください」
「ふぇ~、ニイナちゃん厳しぃ」
ニイナは年関係無くバシバシ言ってくる。
でも、その言葉の節々に優しさを感じるのよね、私たちだけにかもしれないけど。
エレベーターはあっという間に"フロア450"へと着いた。
やっぱりここも赤い霧で覆われている。
「さぁ、また同じ作戦で行きましょ」
私の掛け声に、みんながくっ付く。
そして歩く途中、3人ほどの人影が見えた。
「誰ッ!?」