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第74話 赤霧

 エレベーターが帰ってくるまで、近くにあった"ソファ風ベンチ"へと座った。

 今のうちにXTwitterを確認してみるが、相変わらず"はぐれた3人"の手掛かりは見当たらない。


 その代わり、スカイツリーが現状どんな状態なのかを書いてる人が結構いた。

 「霧だらけで危険そうだった」「霧で何が何やらよく分からない」という内容ばかりだった。

 みんなにも情報を共有する。


「⋯厄介ですね。こんな事になってるなんて」

「"赤い霧"ってさぁ、毒霧じゃないよね?」

「⋯たぶんね」


 新宿警察署で使ったお面、吸った酸素を浄化する仕組みも付いてるのよね。

 ノノの言った事が本当なら怖いし、ニイナまだ予備持ってるかな。


「ニイナ、私たちが付けてるお面の予備ある?」

「はい、ありますが」

「ノノに1個あげて、一応対策しといた方がいいわ」

「⋯仕方ないですね、これは"先輩方のための物"なんですけど」

「そんな強調しながら言わなくてよくない!?」


 ノノが渡されたお面を付ける。

 これ本当に便利なのよね。

 付けていて違和感無くて、肌にも優しい、耳も痛くない。


「この面ってどこで手に入れたの?」

「"七首黒能面"っていうボスクラスの周りにいたモンスターからドロップしたやつ」

「へぇ~、その"七首黒能面"ってのは強かった?」

「⋯何度も死にそうになったくらいには」

「へぇ~、黒夢がそこまで言うってことは、ほんとにヤバいヤツだったんだ」

「だからその分、この黒能面で恩恵を受けられてる」


 あの"黒能面のようなアイテム"は他にもあるのかな?

 私たちは一つも持っていないから、正直かなり羨ましい。

 ⋯って言っても、死ぬほど苦労しないといけないのよね


 ニイナとノノの会話を聞いていたら、巨大な金のエレベーターが帰って来た。

 このエレベーターは"どこの1階"に繋がってるんだろう。

 もちろんSNSに情報は一つも無い。


 エレベーターが動き出すと、突然プロジェクションマッピングが始まり、"スカイツリーのフロアガイド"が壁に映された。

 と同時に、アナウンスまで流れ始めた。


『ようこそ、スカイツリーへ。現在、内部全体が赤霧(せきむ)に包まれており、大変見にくい状態となっております。ライトは付けず、目の前と足場を確認して歩くよう、ご注意ください。なお、フロア450にて、"死者生者確認モノリス"が特別に設置されております。ここにしか無いため、大切な人の生存確認および位置確認、これまでの死者の確認、累計死者数の確認等にご活用ください』


 "死者生者確認モノリス"⋯?

 なにそれ⋯?


 ⋯もしかしてこれを使えば、"はぐれた3人"がどこにいるか分かるんじゃ⋯ルイの事だって。

 私がそう考えたって事は⋯アスタ君も同じ考えをした⋯?


 つまりは、一番上に彼らは行ったと考えていい。

 他の階の事は無視していい気がする。

 私たちは話し合い、とにかく一番上の"死者生者確認モノリス"とやらを目指す事にした。 


 考える途中、ドアが開く。

 そこは本当に霧だらけになっていた。


 赤い霧で何も分からない中、私たちは歩き出す。

 ここは⋯ソラマチの中⋯?

 こんなところに、この"巨大エレベーター"が柱のようになってる。


「ほんとに赤い霧だらけだね~、ここ」


 先を行こうとするノノの腕を、私は咄嗟に掴んだ。


「あまり行かないで! こんなのすぐ迷子になる。何がいるか分からないし⋯固まって動きましょ」

「あ、うん」


 なるべく4人固まって動く。

 方角的に、たぶんこっちにエスカレーターがあったはず。

 それで一気に4階へ行けばいい。


 4階にはスカイツリーへの入口がある。

 まずはそこへ行かないと。


「⋯静かですね、左は大丈夫です」

「右もOK」

「後ろも大丈夫!」

「前もなんともないわ」


 左をニイナ、右をノノ、後ろをヒナ、前を私が確認し合いながら歩き続ける。

 意外と何も起こらず、エレベーター付近までやってきた。

 もう夜になり、空は真っ暗になってる。


「ふぅ、一段落ね。外へ出てしまえば、霧は無いしね」

「でも油断はしないようにしてください。署内では上から降るなんて事もあったんですから」

「⋯そうね」


 その先も何かある訳ではなく、4階まで無事に辿り着く事ができた。

 スカイツリー内へのエレベーターへと進む。


「よかったね~、何も無くて」

「まだ気を抜かないでください」

「ふぇ~、ニイナちゃん厳しぃ」


 ニイナは年関係無くバシバシ言ってくる。

 でも、その言葉の節々に優しさを感じるのよね、私たちだけにかもしれないけど。


 エレベーターはあっという間に"フロア450"へと着いた。

 やっぱりここも赤い霧で覆われている。


「さぁ、また同じ作戦で行きましょ」


 私の掛け声に、みんながくっ付く。

 そして歩く途中、3人ほどの人影が見えた。


「誰ッ!?」

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