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第71話 崩壁

 ふと、松の人が口を開いた。


「おい、天井の"あのマーク"はなんだ?」


 あれはなに?

 "金の弓のマーク?"


 そのようなのが天井にある。

 的みたいにも見えるわね⋯


「なんか、怪しいですね」


 こっそりニイナが呟くと、突如金弓を取り出した。


「これで狙ってみるのはどうですか?」

「⋯よし。ここは黒夢警官に任せてみようじゃないか」


 下川委員長がニイナの肩を軽くポンポンと叩く。

 彼女が「ありがとうございます」と返すと、


「⋯いきます」


 刹那、風が吹き抜けた。

 ジェットエンジンのかかった強烈な射的は、狂った速さで天井を貫いた。


 と同時に、私たちの前にある壁が少しずつ下がり始めた。

 あれは⋯"隠し部屋"?


「上手く、いったんですかね」

「たぶん⋯」


 先を行き、"壁に隠れていた部屋"を確かめると、


「⋯あ! ここは知ってる署内です! やっぱりこっち側が"表"だったんですよ!」

「こんな事になっていたとはな」


 "本当の新宿警察署"。

 ニイナと下川委員長、続いて新宿花伝が"表警察署側"を確かめて回る。


 その間、私とヒナは"裏警察署側"を続けて調べる事にした。

 今ので何か変わった部分があるかもしれない。


「⋯こっちの上にもあるぞ! 同じ"金の弓のマーク"が!」


 松の人の声だ。

 "表警察署の方"にもあったのね。


 ニイナが同様に射貫く。

 すると、9階へと繋がるエスカレーターが上からゆっくりと降りてきた。


 これって、金弓が使える人がいなかったらどうなってたの⋯?

 私たちも出られなかったってこと⋯?

 ⋯いや、先に来ている人がいるって事は、きっと他にも方法はあったんだろう。


「これでやっと最後だな。みんな! 終わらせるぞ!」

「は!」


 新宿花伝から先に上っていく。

 まるで天に繋がってるかのような、長い長いエスカレーター。

 この先に、誰かが既に来ている。


 上って見えた光景。

 そこには⋯


「⋯これって」


 ― 大量の赤いネルトの倒れた姿


 真正面奥には、"巨大な金のエレベーター?"があった


「⋯! エレベーターに今誰か乗ってる!!」


 一番に気付いたヒナが、巨大エレベーターへと駆け寄った。

 上に表示された階層が青白く光って移動している。


「こんなエレベーターも、"B20F"なんて場所も見た事ない。ここは前まで緊急会議室として使用していたはずだが⋯」


 下川委員長が辺りを見ながら言う。

 ここも後で改築されたってこと?

 ニイナも、もちろん何も知らない様子。


 エレベーターには今"誰が"乗ってる⋯?

 呼び寄せても意味無く、これはB20Fを目指している。

 どっちにしてもこのままでは出られない、私たちもこれに乗るしかない。


 私たちはエレベーターが戻ってくるまでの間、この広い空間を探索する事にした。

 左右に5か所ずつ、"区切られた謎の部屋"があり、それをそれぞれ見て回る。

 途中、新宿花伝の一人が、


「代表! こちらにも見つけました!」

「ほんとか!」


 天井にまた"アレ"を見つけた。

 ニイナの金弓によって、それは動きだす。

 静かな機械音とともに、"下の場所"へと繋がっていく。


「これ、"委員長さんが閉じ込められてた8階"だよね?」

「⋯そうね」


 ヒナの声に返事する。

 このエレベーターは"裏新宿警察署の8階"へと繋がっていた。


「天井に"これ"を使うところが多いですね。下に繋がったなら、もう1回見に行った方がいいでしょうか?」

「いや、散々私たちが見たから戻る必要は無いと思う」


 8階へ戻ろうするニイナを止めると、


「もうすぐエレベーターが戻って来るぞー!」


 急に竹の人の大声が響いた。

 もう戻ろう、これ以上情報収集する意味は無い。

 戻ろうとした時、


「なんだ!?」


 ただの壁だった場所が急に崩れ、そこから大量の赤いネルトと警官が現れた。

 この警官は味方じゃない、中に小野田さんらしき人も混ざっている。


「小野田⋯」

「カレンさんこっちへ! この数は対処しきれません! エレベーターへ行きましょう!」

「⋯あぁ」


 このタイミングで、エレベーターが大きな音を立てて開いた。


「全員走れ! 中へ!」


 竹の人が叫ぶと、一斉にみんなが乗り始める。

 その瞬間、


『このエレベーターは試験中のため、只今4人乗りです。次から50名まで収容可能となっております』


「なっ!?」

「おいッ!! テストなんてしてる場合じゃないだろッ!! 早く動けッ!!」

『このエレベーターは試験中のため、只今4人乗りです。次から50名まで収容可能となっております』


 ヤツらがもう来てる!

 ⋯このままじゃ⋯!


 他の人は疲れてきてる。

 これ以上戦わせるわけにも⋯


「せ、先輩っ!!」

「ユキちゃんッ!?」


 先頭にいた私は飛び出した。

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