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第66話 金扉

「⋯戻ったか! 援護を頼む!」


 集合地点には多くの警察官が囲んでいた。

 これ⋯全部が敵なの!?

 すぐに私たちも構える。


「はぁぁぁぁぁッ!」


 カレンさんの目にも止まらぬ一閃。

 彼女の肩にある"梅の花"が開花し、辺りに花が散らばる。


 ⋯速い

 これがあの"梅の花の鎧"のバフ効果。


 それだけじゃない。

 ELに選ばれた"あの力"も加えられてだろう。


 っと、見てないで手伝わないと⋯!

 私は一つのズノウを選び出す。


 〈白雪の目的地(スノーホワイト・デスティネーション)〉を放つと、奥に"巨大な氷のマッピング"が現れた。


 "冷気の真空撃"がそこに吸われようにして幾つも続く。

 その道中にいる敵全てを真っ二つにした。


 「なんだ今のは!?」「おぉ!?」と新宿花伝が沸く。

 松の人が「こっちも負けてられん!」と、激しい連撃を繰り出し、そこから一気に部隊士気が上がっていったようだった。


 ♢


「ふぅ」


 ようやく大丈夫そうかな。


「ユキちゃん、また新しいの使ってたね」

「えぇ、この範囲ならこれがいいと思って」

「さすがぁ~」

「なに言ってんの、ヒナも凄いじゃない」

「いやぁ~」

「先輩方、置いて行きますよ」


 「先行っちゃったぁ」とヒナが呟く。

 ニイナは変わらず淡々としてるなぁ。


「ねぇユキちゃん、私敬語やめるね」

「いいけど、どしたの急に」

「もっと、仲良くいたいなって」


 ヒナが急にくっ付いてきた。


「わ、ヒナっ!?」

「ぎゅー、ユキちゃん、ぎゅ~」

「もう、今だけね」


 こんな時に何してんだか。

 中央に集まったところで、数分の休憩を取る事になった。

 ニイナがカレンさんに"さっきあった事"を報告している、天井から垂れてきた"アレ"や"石切リウ"について。 


 他は水を飲む人もいれば、軽食を取る人、たばこ休憩をする人など。

 ヒナと少しの間二人っきりになる。


「全部終わったら、ニイナちゃん呼んで、3人でアイドルグループやらない?」

「急になんで!?」

「ん~可愛いから! ルイさんだって見る目変わるかもよ~?」

「うー⋯それは」

「名前はー、"サンスノー・クイーンズ"!」

「名前も決まってるの!?」

「ユキちゃんの雪と、ヒナの日で太陽と、ニイナちゃんはぶどうのクイーンニーナから!」

「ニイナだけ葡萄からなの、なんか笑う」

「いいでしょ、ちゃんと考えたんだよ~」

「でも、ニイナはやらないんじゃない? 忙しそうだし、いくら公務員副業できるようにはなったとはいえ」

「それがね~、もうOKもらってるよ!」

「え!? あのニイナが!? いつ!?」

「警察署来る途中! 後はユキちゃんだけ!」


 ⋯信じられない、そんなことある?

 ニイナは絶対断りそうなのに。


 警察やめようかなってよく言ってるけど、転職先候補とかだったりして。

 帰りにでも問い詰めないと。

 警察にこっちから尋問してやるわ。


「休憩終了! 準備できた人から3階へ!」


 ここから3F、4F、5Fと警戒を怠らず進んでいった。

 階毎に地震は起き、震度は徐々に大きくなってる。


 それに比例するように、敵も段々に強くなり、全員の消耗も激しくなってきた。

 部下の人たちは相当苦しそうに見える。


 ここで2回目の休憩が入り、倒れるように休む人や弱音を吐く人も出てきた。

 だけど、"ここからはどうやっても出られない"という最悪の縛りによって、彼らは無理やり起き上がるしかない。

 そう、どうやっても出られない⋯


 そんな状況で、やっと6階へ到達した。

 そこにあったのは、


「⋯なに⋯これ」


 "巨大な金のドア?"だった。

 明らかに他の階とは全てが違った。

 ドアの前には"大きな黒い看板"が付いており、【刑事課】と大きく書かれている。


 ニイナはやっぱり知らない様子だった。

 ここまで見てきて、同じ構造だったところは結局今のところ一つも無い。

 意味不明な状況のまま、"さらに意味不明なもの"が目の前にある。


「おい、どうするカレン、入るか?」

「待て。あれを見ろ」


 カレンさんの視線の先にあったもの。

 "六角形の特殊なサイネージ"だった。

 "謎の白い怪物?"のようなのが映っており、下に簡単な説明が書いてある。


〈これからの犯罪には、より強力な抑止力が必要であるとされ、【LWS-611】が政府より寄与されました。委員長の指示により、現在稼働中〉と書かれている。


「ねぇねぇ⋯なんか変な音しない⋯?」


 ?

 ヒナと同様に耳を澄ます。


 ⋯なに?

 この音⋯?


 ドアの向こうから聞こえる。

 中に何かいる⋯?


「この先、より危険な場所になるかもしれない。特に、"あの白いの"がいたら注意するように!」

「は!」

「松と竹とノノも、しっかりみんなを頼む」

「こっちは任せろ、さっさと終わらせて帰るぞ」

「腹も減って、疲れて眠くなってきたしな」


 カレンさんたちが一つに纏まり、いつでも行けるというサインをこちらへと送ってきた。

 後は私たちが行くだけとなった。


「⋯私たちも行きましょうか。さっきの音からして、嫌な予感がするけど⋯固まって行きましょう」

「⋯そうですね」


 ニイナがフードと黒能面を付け直す。

 それに習って、私とヒナも付け直す。


「よし! では、行くぞッ!」


 カレンさんの大声と共に"巨大な金のドア?"が開いていく、激しく擦れる金属音を響かせながら。


 もう少し心の準備をした方が良かったかな。

 あの"白いヤツ"、嫌な予感しかしない。


 ♢


「ア、アァァァァ⋯アァァァァァ⋯」


 なんでもう少し考えてから行かなかなかったんだろう?

 充分時間はあったのに。


 私も疲れてたから?

 私たちなら大丈夫って思ったから?

 言い訳なんてもう遅すぎる。


「ア、アァァァァ⋯アァァァァァ⋯」




 ⋯




 ⋯⋯




 ― "白いアイツ"は何もかもを払い除け、私の前で大きく口を開いた

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