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第62話 決起

 ここに来る途中、ノノやカレンさんから聞いた話。

 新宿駅にはさっきまで"大きいヤツ"がいたらしい。


 私たちが新宿駅に着くちょうど10分ほど前、それが片付いたそうだった。

 あの時ヒナがXTwitterで見た写真は、"その解散する瞬間"だった。


 この写真をアップしていたのは、カレンさん。

 近辺で何があったかを、写真や動画で常にアップしているそう。

 その後に、新宿駅の地下は最近危険なのもあり、上がって来たヤツらを対処していたのがノノだった、というのがさっきまでの流れ。


「集まって大きいのを倒してる時、この3人の誰かを見なかった?」

「⋯いや、いなかったと思う」


 "探してる3人"はおらず⋯

 誰一人として見ていないという。

 今から新宿花伝との協力捜索になるわけだけど、時間が経って午後3時。


「さて、そろそろ」


 カレンさんがL.S.を見て言う。

 すると、


 ⋯?

 左右から重厚感のある音が荒々しくし始めた。


 見ると、それぞれ"松と竹の派手な人?"の後ろにさらに数人、ゆっくりと歩いて来る。

 これは⋯仲間って事でいいのよね?


 松⋯?

 竹⋯?


 さっきカレンさんが仲間を呼んだって言ってたけど⋯

 また変わった人たちがやってきた。


 L.S.を見ると、EL仕様の特別製。

 って事は、この人たちも選ばれた人。


「歌舞伎町辺りはどうだった?」


 カレンさんの声に、左の"松の人"が首を横へ振る。


「御苑や公園の方は?」


 続いて、右の"竹の人"が首を横へ振る。


「なら、もう"あの場所"か」

「!? 行くんですか!?」


 ノノが驚く。

 他の新宿花伝組も続いて声を上げる。


 "あの場所"?

 私は気になって割り込み、


「どこですか?」


 一言聞いた。

 すると、


「⋯新宿警察署よ」


 呟くようにカレンさんは言った。


「え、警察署?」

「⋯ユキ姉は何も知らない?」

「う、うん、私は何も」

「入った人たちが、まだ一人も出てきてない」

「「一人も?!」」


 ヒナと私の声がシンクロした。

 やっぱりヒナも知らなかったみたい。

 まだあまり出てない情報な気がする。


「なんで警察署に? そこには何かあるんですか?」


 続いてカレンさんに聞くと、


「まだよく分かってないわ、何があるのか。"相応の物がある"とだけ伝わってる」

「そういや、警察の黒夢なら何か知ってるんじゃない?」


 ノノが後ろにいるニイナへと話を振った。

 ニイナは険しい顔をすると、


「⋯知らない、何も」


 ニイナ⋯?


 この後もどうするかの話し合いが続いた。

 新宿警察署へ本当に行くのかどうか。


 行けばどうなるだろう。

 警察を敵に回す事になるのだろうか。

 どっちにしろ、もう敵状態ではあると思うけど。


 私は覚悟を決めて行く事にした。

 ルイだったら、絶対行くと思う。

 ここへ行けば何か分かる気がするから。


 しかし、簡単には決められないようだった。

 カレンチームの決意は固そうだったけど、他はかなり渋っている。


 それはそう。

 というか、普通はそう。


 帰れるかどうか分からない場所。

 帰れたとして、次は警察に追われるかもしれない。


 カレンさんも強要はしていない。

 別に行かなくたっていい。

 得られる物だって無いかもしれない。


 長考の結果、代表であるカレンさんの意見に従う形になり、今行く準備をしている。

 実は、増援部隊の背中には"新宿花伝の文字"があり、離れて拠点を作っているサブチームだった。


 なんだかんだみんな気になってはいるようで、踏ん切りを付けるなら今だと考えたみたい。

 私たちも一緒ならと、最終的な決め手が私たちだった。

 ここでもやってきた事が認められたようで、素直に嬉しくはある。


 でも、ニイナは終始暗かった。

 "ノノのあの一言"の後から⋯


 ヒナと私が心配して声をかけると、重い口を開くようにニイナは喋った。


「⋯1か月間、応援で入って勤務した事がありました。そこの同僚には良くしてもらったのですが、この経済対策が始まって以来、一度も連絡が取れていません。嫌な予感がするんです、"あの場所"は」


 ⋯嫌な予感

 おそらく行かない方が賢明な判断。

 それでも可能性が残ってるなら、放っておく方がダメな気がした。


「"死人の巣窟"って呼ばれてるしね」


 ノノが寄って来た。

 やっぱり、心配してたんだ。


 "死人の巣窟"⋯

 そこに"探してる3人"は本当に入って行ったの?


 目撃情報はこう。

 "黒い服装の怪しい数人"が入って行ったのを朝見たというのを、他から聞いたそう。


 アスタ君とカイって子がその格好なのは分かる、ニイナも同じような格好をしてるから。

 だけど、シンヤ君が"わざわざそんな格好"する?


 うーん⋯

 でも、途中で手に入れた装備だとしたら⋯


 それにあっち側も同様に、私たちを探してるかもしれない。

 ここへ誰か入って行ったのを、聞いたのかもしれない。

 この可能性をどうしても捨てきれない。


「ニイナはここで待っててもいいのよ」

「⋯」

「無理していく場所じゃない。もし何かあったらあなたが」

「いえ⋯行きます」


 ニイナが拳を握り、こちらを向く。


「アスタ様やカイがもしいたら、後悔するので。それに、Another ELECTIONNERになれるアイテムだって、あるかもしれません」

「⋯そうね。全部の可能性を捨てきれないわ。ね、ヒナ?」

「うん! ニイナちゃんもこんな風に変わっちゃうかもですからね!」


 ヒナが槍の姿を豹変させて見せた。

 悪魔から天使へ、天使から悪魔へ、謎にループさせる。


 ヒナが「ほらほら~」と言いながら何回もするもんだから、私はつい噴き出して笑ってしまった。

 ニイナも釣られたのか、少し笑う。


 新宿花伝さえも乗り出し、ヒナに並んで花を咲かせたり、松を動かしたり、竹を上下させたり、まるで出発前の決起会みたいになった。

 なんだかよく分からないけど、いいチームでやっていけそう。


 ルイ、いつもならあなたもここにいるのに。

 あなたが私の前で、笑ってるはずなのに。

 絶対、みんな連れてあなたを迎えに行く。

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