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第60話 花伝

「こんな事やれと言ってないぞ」

「(⋯げ⋯なんで代表が)」

「お前たちも何やってる!」

「す、すみません! もう止められなくて⋯」

「だろうな、ノノは言い出したら聞きやしない」


 全身花だらけの鎧⋯?

 その人は周りを叱り、ノノへと寄っていく。


「⋯だってこの女が」

「黙れッ!!」


 急に飛ぶ怒声。

 辺りに一斉に緊張感が漂り、萎縮する。

 あのノノも黙ってしまった。


 なにこの人⋯?

 代表って言ってたけど、ここの代表ってこと?


「それは喧嘩で勝つために与えたわけではない。これ以上新宿花伝に泥を塗るなら次はクビだからな」

「⋯はい」


 花だらけの人は一瞬ニイナを見たかと思えば、今度はこっちへと視線を移した。


「⋯ん? そのL.S.って⋯もしかして!?」


 その言葉の後、またざわつきが始まった。

 「嘘だろ?」だったり、「見た目違わない?」だったり。

 私とヒナは今日はお揃いの髪型をしていて、いつもと違うのはそうだけど⋯


「死んだって聞いたけど⋯生きてたの?」

「⋯はぁ」

「亡霊じゃ、ない?」

「生きてます」


 凄い足音で次はノノが寄って来た。


「ガチ!?」

「⋯?」


 ノノはまじまじと私の顔見てくる。

 目を凝らしたり、胸を見たり、足を見たり。

 何されてんのこれ?


「ねぇ⋯もしかして、ユキ姉?」

「え?」

「可愛くなりすぎだって! ほら、三船ノノ! 覚えてない!?」


 ノノは緑のフードをゆっくり降ろした。

 私をよく見てと謎のアピール。


 ん~⋯


 ん⋯?


「⋯⋯あ! え!? ルイの家によく来てた!?」

「そうそう!」

「うわぁ! 懐かしい!」

「うん! ユキ姉いっつも私の事ルイ兄の妹だと勘違いしてたよね~!」

「あー、そうだったね」

「苗字が同じだからってさ~」


 うわ、やっば。

 見れば見るほど思い出してきた。


 小学生の時、よくルイの家にノノが来てた。

 家族同士が仕事関係で仲良かったんだったっけ。

 さらには苗字が三船同士もあって、よく意気投合してたなぁ。


 私が行った時にちょうどいる時多かったんだよね。

 外で遊んだり、一緒にゲームしたり、勉強教えたり、いろいろした。

 昔は"離れて住んでるルイの妹"かと、勘違いしてたんだよね。


「早く言ってよ~、ならこんな事ならなかったのに~」

「いやいや、こんな大きくなって見た目も全然違うから気付けないわ。私が知ってるのは"これくらいの時"なんだから」


 "会ってた時のノノの大きさ"を手で表す。


「ちっさ!? そんな!?」

「そうよ。言葉遣いだって、全然違うじゃない」

「いや~、まぁいろいろあってね⋯これは昔のユキ姉の影響もあるからね!?」

「わ、私!?」


 不意に花だらけの人が近付いてきた。


「ノノとはそんな関係だったのか。それで、昨日は凄い数に襲われたんだってね」

「もう死ぬ寸前でした。武器も出せない状態だったので」

「大変⋯だったんだな。支援組も逃げて帰ったそうじゃない」

「よく知ってますね。なので、こっちも必死で走って逃げるしかなかったです」

「よく生きててくれた。それで七色蝶は? 帰ってきた?」

「⋯⋯いえ⋯それに追加で3名が行方不明です」

「⋯そうか」


 少しの間の後、花だらけの人は頭のヘルムをゆっくり取り始めた。

 そこには、さっきの怒声とは思えない美人女性がいた。


 肩まで伸びる綺麗な髪。

 20代後半くらい?

 え、この人が本当にさっきの声出したの?


「なら、この新宿花伝に手伝える事はない?」

「手伝い⋯ですか?」

「あなたたちの勇気のおかげで、私たちは咲く事が出来たのよ? ねぇみんな!」


 その瞬間、新宿花伝全員の肩からパッと花が咲いた。

 色とりどりの、ノノまでも。


「わぁ!?」


 ヒナが少し喜んでいた。

 私は、


「⋯ありがとう、ございます」


 握手を交わした。


「頑張ってきてよかったですね! みんなちゃんと見てるんですよ、ユキちゃん! ね、ニイナちゃん!」

「⋯私は最悪の出会いですけど」

「あ、あはは⋯」


 この後、ノノとニイナは何とか仲直りをするんだけど、ニイナが警察だと知ってからは、ノノの口調が急に丁寧になった。

 ⋯まぁ一般的にはそうだよね

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