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第50話 黄色

「おい、どうしたんだ!? すげぇ声響いたぞ!?」

「ヤツらがおったか!?」

「⋯大丈夫⋯?」


 後ろからスエ、キンジ、そして小さくハインの声が聞こえる。

 俺は見向きをする事無く、ベッドへと寄った。

 こんなのは現実じゃない。


 現実じゃない。


 現実じゃない。

 現実じゃない。

 現実じゃない。


 "ベッド上のソレ"からは、"小さな命"が飛び出ていた。

 その"小さな命"にはナイフが刺さっていた。


「⋯惨いな。知り合いだったのか?」


 スエが話しかけてくる。

 こんなのは現実じゃない。


「⋯⋯」


 俺は何をしていた?

 会議に参加?


 意味が分からない。

 この二人はずっと苦しんでいたのに。


 どうすればよかった?

 俺はどうすればよかった?


 なんで早く帰ってこなかった?

 なんで無駄話をしていた?


 なんで呑気に食べていた?

 なんでこれが想定できなかった?


 なんで?


 なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?


「この殺し方⋯もしや"最近出てきたアイツ"かもしれんのぅ」


 キンジはこっちへと寄り、話を続ける。


「⋯アイツって⋯誰だ⋯?」

「数日前からこの現状に紛れ込んで、"人殺しをするグループ"があると聞いた。XTwitterでも、嘆いてるヤツが結構おる」

「あ、それ私も見た気がするぞ! いるんだな、ほんとによぉ」

「なんでも、"ネルトのマネ"をして首を取って殺すらしい。見るからに、そいつらが原因と考えていいやろうな」


 "ネルトのマネ"?

 首を取って殺す?


「⋯そいつら⋯どこに⋯」

「"深夜に行動する"のは分かってるらしいが、どこかはまだ分からん。ただ、"黄色いパーカーを羽織った連中"だと、言ってるヤツがいたな」

「⋯黄色い⋯パーカー⋯?」

「これを見てみぃ」


 キンジは俺とスエにL.S.の画面を見せてきた。

 そこには、XTwitterに上げられた"黄色いパーカー"の画像があった。


 "黄色いパーカー"には血が散乱しており、「これを見かけたら注意」と書かれている。

 この服に、俺は見覚えがあった。


 あの時ユキとヒナを襲い、逃げたヤツの一人。

 最後まで捕まえられなかったアイツが着ていた服。


 ⋯


 ⋯俺のせいだ


 あの時に殺せなかったから。

 不意に血の味がし、唇を嚙み過ぎている事に今気付いた。


「⋯殺す。こいつは絶対に」

「そう早まるな。こんなのを殺しても何も解決にはならんぞ」

「そうだぞ。ヤっちまったら、コイツらと同類に成り下がるだけだぜ? 他に良い方法考えようぜ」

「⋯」


 ⋯黙れ

 こいつらは何も分かっていない。


 この世界はどこまでも残酷で理不尽。

 アオさんとの約束さえ、守れなかった。

 死ぬ思いで助けた裏部さんさえ、守れなかった。


 だから理不尽ヲ壊セ。

 俺にはまだ"大事な存在"がいる。


 視線を上げた先、ベッドの壁隅に黄色で書かれた文字があった。

 【人殺しへの幸せな仕返し】


 ⋯


 ハ ン ニ ン ハ オ マ エ ナ ン ダ ナ ?


 ♢


 25日の19時。

 俺たちは例の場所へと来た。


「おぉ、待ってたよ」


 主催者は喜んだ顔を見せる。

 当然アスタたちもおり、


「これからは一緒だね、よろしく」

「⋯あぁ」

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