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第49話 後悔

 何回歩いても、夜の病院は気味悪く感じるな⋯

 都心5区選別者会議に行ったのは、ユエさんの一押しもあってだった。


 ♢


 行く直前、ユエさんの病室。


「ELECTIONNERが集まる場なら、絶対行っておいた方がいいわね。100人中何人来るか分からないけど、中には必ず"同じ目的"の人もいると思うの。今や三船君は一番注目の的、それを利用するのがいいわ」

「なら、一人の方がいいですかね」

「いや、みんなで行きなさい。それの方がより幅広く交流できるはずよ。裏部は留守番ね、モンスターやネルトの解析と、他の研究員の探索と、総理についてと、まだまだやる事あるわよ!」

「ユエ先輩は妊婦ですよ!? さすがにちょっと休憩しておきましょうよ~」

「いらないわそんなの、私もアンタもいつ殺されるか分かったもんじゃないだから。きっと赤ちゃんだって私の事理解してくれてる。だって私とアオ君の赤ちゃんなんだから、ね~よちよち~」

「"アオ先輩という抑止剤"がないと、この人は止められないのか⋯」


 裏部さんは終始、ユエさんの変わらなさに嘆いていた。

 でもどこか、嬉しそうにも見えた。

 昔からこんな感じのやり取りだったのが、二人から伝わってくる。


「それに、私たちの功績もあって総理を倒したってなったら、メディア出演とか取材とか、さらに忙しくなっちゃうかもしれないわよ!? そのためとも思って踏ん張りなさい!」

「ってな事で、三船君。僕たちはここでお待ちしてますね」

「あ、そうそう! 帰ってきたら、なるべく早めにここへ来て話して欲しいわ。どんな事があったのかを、新鮮なモノは新鮮なうちにってね」

「分かりました。遅い時間ですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、私と裏部は夜型だから」


 ♢


 裏部さんと会ってから、ユエさんは少し楽しそうだった。

 あれだけ元気だと、妊婦にも全く見えなかったな。

 メッセージを送っても返ってこないけど、たぶん今忙しくしているんだ、あまり邪魔しないようにしよう。


 行ったらまず、この【イーリス・マザー構想の失敗作の捜索について】について聞かないと。

 これが本当なのかどうか。


 先に俺の予想をしておくと、たぶんユエさんは"この件"を知らない。

 知っていたなら、"失敗作の副作用でモンスターや武器が具現化してる"って、前に言ってたんじゃないか?

 だからこそ、これを含めてユエさんの新しい見解が聞きたい、裏に真犯人がいるのかどうかとか。


 君野先生についてはどうだろう。

 あの人が"イーリス・マザー構想一団の一人"でありつつ、失敗作を探してたのを知ってたのかな?


 これもたぶん知らないと思う。

 親からそこまで聞いて無いとか、そんなところだろう。

 成功作については教えられても、失敗作についてはそんなになんて、よくありそう。


 それか、一団にも"失敗作を探してる人間"と、"失敗作が逃げた事すら知らない人間"が別々でいたとか。

 ユエさんの親は、"逃げたのを知らない側"で、そもそも知らないままだったとか。


 一団と言っても、全員が全員纏まっている訳じゃなさそう。

 人間なんて一人一人考えが違うしな。


 もし今予想したのが違ったら、他にどんな場合がある?

 そんな事を考えていると、いつの間にか"産婦人科棟705室"の手前まで来ていた。


「お? 電気付いてねぇな」


 シンヤが言う。

 もしかして寝ちゃったとか?

 物音一つ聞こえてこない。


「ユエさん、帰ってきまし」


 うっ⋯

 なんだこの臭い?

 開けた瞬間、強烈な異臭が鼻を刺した。


 中が暗くてよく分からない。

 俺は"虚無限蝶の銃剣"を取り出し、辺りを照らした。

 その瞬間、


「う、うわぁぁぁぁッ!?」


 シンヤが突然大声で叫び、尻餅をついた。


「て、天井ッ!! 天井にッ!!!」

「「いやぁぁぁぁぁぁッッッ!?」」


 女子二人も叫び、後ずさる。




 ⋯



 ⋯⋯




 後悔した。

 見て後悔した。

 今までの行動を後悔した。


 俺は何をしていた?

 俺はなんで行った?

 俺はなんでここにいなかった?


 ありえない。

 ありえない。

 ありえない。


 ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。


 どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。どうして。



 ― 天井にぶら下がった二つの生首




 ⋯



 ⋯⋯



 ⋯⋯⋯




「ユエ⋯さん⋯? 裏部⋯さん⋯?」

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