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第44話 再会

「⋯ッ!」


 瞬時、全身に強烈な衝撃が走った。

 ヤツの突撃から伝わったものだった。


 こいつ、"ただの口だけ"じゃない。

 油断すれば、確実にやられる。


 そう思った時、身体は自然と反撃していた。

 押し返すと、ヤツは大きく後ろに下がり、


「さすがだね、これを防ぐなんて。でも"6年間"、僕だってあっちで努力してきたんだ」

「さっきから何なんだよお前、俺と会った事があるみたいに」

「あるよ、何度も何度も。ちょっと前だって"話した"しね」


 こいつ、俺の事をよく知ってる?

 声が加工されていて、よく分からない。


 6年間って、6年前は俺が"中学3年生"だ。

 それに、俺とこの前まで"話した"?


 ⋯そういうことな

 昨日深夜のユキの言葉がフラッシュバックした。


 ♢


『うん。似てたけど、違ったらわるいかなーって思って話しかけなかったけど⋯話しかけた方が良かったかな』


 ♢


 確信に変わった瞬間、俺は自然と笑みが出た。


「んだよ。帰って来てたなら、早く家来いよ」

「帰ってきたの1週間前だからね。すぐこんなのに巻き込まれて、最悪だよ」


 そう言いながら、黒能面が外され、


「それに、こうした方が驚いてくれるかなって」


 変わらない顔がそこにはあった。

 正直涙が出そうになったが、ぐっと堪え、


「何されても驚くに決まってんだろ、日本にいるなんて思わねぇんだから」

「⋯そっか、急にこんな事してごめんね。どうしても久しぶりにルイ君と勝負したかったんだ」

「言えばいつでもやってやるよ。別に、こんなタイミングじゃなくたって」

「いや、今じゃなきゃダメなんだ。お互い培ってきたものを知らない、今じゃなきゃ。そうじゃないと、君に一つでも知られれば、勝てないだろ?」

「んな極端な。俺はAIじゃねぇぞ」


 アスタの顔は、どこか嬉しそうに見えた。

 俺も同じ気持ちだ。


 またこうやって話せる日が来るなんて。

 変な事せず普通に会いに来いよ、ほんと。


「あれ、ルイ? まだ入ってこないの?」


 数分アスタと話し合っていると、ユキがひょこっと顔を出してきた。

 ユキは一瞬気付かなかったが、数秒でアスタだと気付いた。


「え!? アスタ君!?」

「久しぶり、新崎さん。また美人になったね」

「あなたこそ、さらに大人っぽくなったというか⋯ねぇねぇ、2日前に渋谷駅地下にいた!?」

「あぁ、いたよ。もしかして見かけた?」

「うん、見かけた! ルイにも話してたの、似た人いたよって」

「そうだったんだね、話しかけてくれてよかったのに」

「そうすれば良かったわ、でも急いでもいたしね」


 3人で話していると、中学時代に戻ったようだった。

 以心伝心のように、話したい事や話してる事が伝わってくる。

 やっぱりこの感じは、昔から付き合いあるヤツとしか味わえないな。

 こんな状況じゃなきゃ、皆で焼き肉でも行きたいのに⋯


「さて、ルイ君。いろいろ話したいとこだけどさ、"さっきの続き"、してくれないかな?」

「は? まだやんのか?」

「決めとこうよ。今は"どっちが強いのか"を、ね」

「⋯しゃあねぇな」

「なになに? 二人で何してたの?」

「ちょっとな。ユキはそこで見ててくれ」

「邪魔はしちゃダメだよ、新崎さん」


 アスタはそう言いながら、黒能面をまた付けた。

 広い場所に変えた俺たちは、充分な距離を取る。


「もう! 言っても聞かないんだから⋯ケガとかないようにね。ルイ、起きたばっかりなんだから」

「わかってるって」


 俺はもう一度〈ゼロインフィニット・アークイーリス〉を取り出した。

 アスタも青黒い剣を再び出現させる。

 まるで会いたかったというように、お互いから羽根が散った。


「そんじゃ次は俺からな」

「いいよ、来な!」


 たぶん、勝負の結果なんて本当は気にしちゃいない。

 ただ楽しみたい、ぶつかるだけでそれが伝わってくる。


「⋯負けたよ」


 刃先が首の前で止まった時、アスタはそう一言呟いた。

 俺の前に"あの剣"は届いていない。

 アスタの一瞬より、俺の一瞬が上回ったからだ。


「負けだ、負けッ!! 負けだーッ!!!」


 その場に寝っ転がったアスタは叫び始めた。


「アスタ君速すぎない!? それに勝つルイ、意味分からないんだけど⋯」

「⋯"この黒い能面"を付ければ、"身体能力1.5倍"になるのに」

「え!? そんなのがあるの!?」

「この前たまたま手に入れたんだ。"七首黒能面"っていうのを倒してね。それでもルイ君には勝てなかったんだよ? おかしいって⋯」

「アスタ君、それはルイがね、"イーリス・マザー構想の成功者"ってのもあると思う」

「はぁ!? え!? ルイ君そうなの!?」

「ま、まぁそうらしいけど関係ねぇよ、気にすんな」

「いやいやいや、関係ありすぎでしょ!? なんでルイ君が成功者だって分かるの?」

「こっちでいろいろあってね」

「⋯そう。だとすると、なんか今までの事、全部納得いったかも⋯はは⋯ははは」


 アスタが壊れた。

 ちなみに、アスタの剣には"EL"と書いてあった。

 その後、俺は無事会議に参加出来たわけだけど、そこには豪華な食事と席が待っていた。

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