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第43話 能面

 明日そんな事あるなんて何も知らなかったな。

 って、俺今日起きたばっかだった。


「もし参加したいなら、どうすれば?」

「おぉ、来る気になったか! こりゃ俺たちも気合い入れんとなぁ!」

「だったら私たちと一緒に来いよ! あんたらだったら絶対顔パス確定だから!」

「まぁまだ分かんないですけど、どこかで集まってから行きますか?」

「B1の出入り口に集合予定! 時間は17時な!」

「念のため、連絡先を交換しておきましょう~。こちら、私のを渡しておきますのでぇ~」


 L.S.に"朝花ミオリ"が新しく追加された。


「ちょ、私のも!」


 "倉岩スエ"、さらには「⋯ん!⋯」と言われ"水切ハイン"、他二人の"保月ナン"と"保月ノン"が追加された。


 あれ、この二人って姉妹?

 よく見るとそっくりな顔をしてるな。


「おぉい、俺とも頼むぞ!」


 最後に"掛井キンジ"が加わり、一気に連絡先が増えた。

 前はLINEとかあったけど、今ではアプリ経由すらせずとも、"L.S.自体"でそれ以上の事が出来るから、ほんと簡単に繋がれるようになった。


「二人って、姉妹ですか?」

「え、"ナンノンメイン"知らないのか!?」


 スエが仰天顔で俺を見てくる。


「登録者500万人いって、テレビにもよく出てたんですけどね~」

「まだ伸びしろあるって事だよ、ノン!」

「いや、え、まだ?」


 全然知らなかった。

 ゲーム以外興味が無さ過ぎた。


「なんか、すみません⋯」

「いやいや、私たちの頑張りが足りないって事なので!」

「頑張ってるんだけどね~」


 ノンの方キレてないよな⋯?

 姉妹で性格が真逆っぽいぞ。


 今後はもっといろんなジャンルを見るようにしとこう⋯

 こんな繋がり出来ると思ってなかったしな、ヒナといい、この姉妹といい。


「そろそろ戻るので、また連絡します」

「あぁ悪かったな止めて! ちゃんと寝ろよ!」


 それこっちのセリフ。

 この後、戻ったら別れたユキが俺のベッドで寝てたっていうのは、もう言う必要は無い気がする。


 ♢


「ここだ、ここ!」


 俺たちほんとに来て良かったのか⋯?

 上に大きく【都心5区選別者会議】と書かれている。


 渋谷スクランブルスクエアの46階"SKY GALLERY"。

 日が落ち始め、周りに見える建物にそれぞれ明かりが灯り始めている。

 ここには数回来たけど、こんな目的で来る事になるなんて。


 受付が厳重だな。

 俺たち場違い感凄くないか⋯?

 これで顔パスなんかなったら、逆に問題だろ!?


「こちらで"ELマーク"で受付をお願いします」


 受付のお姉さんが話しかけてくる。

 「よーし」と隣のスエが声を上げると、


「んじゃ、私からな」


 先に受付横の"読み取り機?"へと行き、認証を始めた。

 置かれたのは"紫の銃"。

 あれは"サブマシンガンのUZI"か?


 こんなのもあるのかとまじまじ見ていると、「なんだよ、気になるか?」とスエに変な顔をされてしまった。

 後ろでは、ユキ、シンヤ、ヒナとクレセントセテラ4人が騒々しい。


『認証成功。中へとお入りください』


 置くのは"ELマーク"のある一人だけで良いらしく、グループの中の誰が置いてもいいみたいだ。


 次は俺でいいんだよな。

 ユキやヒナのでもいけそうだが、今は話の邪魔をしない方がいいだろう。


 ちょっと不安になってきたな⋯

 そう思いながらも、俺は"虚無限蝶の銃剣"を具現化させようとする。

 すると、


「待った。出さなくていい」

「え?」


 顔を上げると、黒い能面を付けた怪しい人物がそこにはいた。

 なんだこいつ?


「受付さん、"この4人のうち"一人でもいたら、今後は通してあげてください」


 黒能面は俺、ユキ、シンヤ、ヒナを順に指差し、そう指示する。


「はい。かしこまりました」


 え、いいの!?

 黒能面の言葉に反発する事無く、あっさり受け入れる受付。


「ほらな? 顔パスでいけるつったろ?」


 いや、え?

 流れ的にそうはならない感じだったろ!?

 スエ含めたクレセントステラの5人は、俺たちが入れる事が分かると、そそくさと会場内へと行ってしまった。


「私たち、入っていいんだよね?」

「あ、あぁ」


 ユキに返事すると、続々と入っていく。


「どんな感じなんだろうなぁ!」

「ルイさん、ありがとうございます」


 シンヤとヒナも中へと入っていく。

 そんじゃ、俺も。

 と思った瞬間、黒能面が入口を遮ってきた。


「僕に勝ってから、通ってもらおうか」

「⋯は?」

「見てみたいんだ、"久しぶり"にね」


 "久しぶり"に?

 そう言うと、ヤツは"変わった形状の青黒い剣"を取り出した。


 ― 剣の左右から"2枚ずつの青黒い羽根"が広がり、辺りに羽根が散らばった


「⋯どういうつもりだ」

「嫌なら尻尾巻いて帰りなよ。七色蝶はここまでの人間、それだけだ」

「⋯」


 俺はL.S.から、〈ゼロインフィニット・アークイーリス〉と書かれている銃剣を取り出した。


 ― 無限模様の蝶が広がり、0型の銃腹部から激しい光が噴射する


「ズノウは無し。首への寸止め勝負だ」

「⋯来いよ」

「この感覚はやっぱり君じゃないと味わえない! ⋯次こそは勝つッ!!」

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