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第40話 病院

「んで、ここってどこなんだ? みんなは!?」

「"シブチカセントラル病院"っていう渋谷駅地下の病院、みんなも無事だから安心して。飯塚さんのお腹の事と、みんなの事を治療するにはここが一番良さそうだったから」


 L.S.でも今の場所を確認する。

 一瞬で【シブチカセントラル病院】と出てきた。

 新しく出来たばかりか。


「大変だったろここまで来るの。倒れた俺たち担いで、渋谷のここまで移動してって」

「飯塚さんが全部してくれたわ。"予備の赤いプロトロア"まで連れてきてくれて、2体が合体するとバイクになるみたいなの。それが2台もあったから、私とシンヤ君がそれぞれ運転して車に戻ってって感じね」

「おぉ、よく運転できたな。壁に強く打ち付けて、頭から血も出てたんだぞ?」

「それが案外ね。当たる直前にズノウでなんとかしたから、軽い脳震盪で済んだんだけど、でもまたちょっと痛くなってきたかも⋯」


 頭を抑えるユキ。

 前髪で隠れていたが、包帯が薄く巻いてあった。


「今日はもう安静にしとかないとな」

「うん。あ、そうそう! 大臣の言った通り、裏部さんが隠し部屋にいたのよ。今私たちと一緒に来てるの」

「⋯どんな人だった?」

「少ししか話してないけど、凄い話しやすい人だった。なんか要点をまとめるのが上手いというか、ルイとは気が合いそうな感じ」

「へぇ~、気になるな」

「なら一緒に行ってみる?」


 ユキがベッドから立ち上がろうとする。


「おいおい、無理すんな」

「ん⋯大丈夫よ、歩くくらい。"誰かさんと一緒"で、じっとしてるのは性に合わないしね」


 不敵な笑みを浮かべるユキに連れらるように、真っ暗な病室を抜け出した。

 廊下に出ると、赤い光だけが点々としており、まるでホラーの怖いシーンみたいになっていた。


「"こういう廊下"って、なんか出そうで怖いよな」

「ちょっと! 変な事言わないでよ⋯」

「わりぃわりぃ。でもユキ、ホラー系得意だろ?」

「まぁ嫌いじゃないけど⋯リアルとゲームは違うの」


 適当に会話をしながら数分歩くと、より広い場所へと出た。

 ここが中央らへんか?

 壁に近付くと、突然案内図と現在地が浮かび上がった。


 反対側の壁の下に小型プロジェクターが搭載されているようで、人に合わせて自動で表示してくれるようになっているらしい。

 さらにはタッチで、いろんな情報が見れるようだ。 


「ここほんと大きいわね、迷子になりそう」

「"渋谷駅の地下1階から7階まである病院"って凄いな。最近はこんなのが出来てるのかよ」

「ね。私も全然知らなかった。どれも最新治療機器ばかりみたいで、どこよりも正確で早くてってレビューが多かったわ」


 ユキが案内図を操作し、"産婦人科棟"を指差す。


「あった。この"705室"にいるって言ってた」

「って事は、こっちを真っすぐか」

「だね」


 この際ユエさんにはゆっくりしてもらいたいけど、正直ユエさんが抜ける不安が大きいってのもあるんだよな⋯

 そんな事いつまでも言ってられないか。

 ちょっと歩くと"705室"が見えてきた。


 あれ?

 その前のソファに、"誰か二人"座ってる?

 一人がこっちを見ると、近付いてきた。


「おぉ! ルイはいつ起きたんだ?」

「誰がいるのかと思ったらシンヤか。ついさっきな」

「裏部さんが気になるって言うから、せっかくだから連れて来たの。私もみんなの様子、見たかったしね」


 シンヤの背後から、その人物は姿を現した。


「初めまして、僕が裏部です。この度は助けてくれて、本当にありがとうございます!」


 裏部さん、めちゃくちゃが付くほど丁寧な人だった。

 眼鏡と白衣が良く似合う、爽やかな人という感じ。


「いえ、当たり前の事をしただけですから」

「何を言ってるんです!? "あの強さ"は人間では到底敵いませんよ!?」

「そうよ、ルイがしたのはそういう事なんだからね。昔からそうだけど、全てを逸脱しすぎているのよあなたは⋯」

「いや、使ってる武器が強かっただけで」

「確かに〈大蝶イーリス〉はクソ強い設定ですが、その分、人が使うには特殊でクセも強く、扱いもクソ難しいんですよ!?」


 い、勢いが凄いな⋯

 キャラも崩壊しているような⋯


「これほど使いこなせるなら、ユエ先輩の言う通り、AI総理のいる国会議事堂まで行けるでしょう」

「裏部さんはさっきからお前に期待しまくりだったぜ!? これからはユエさんに代わって、俺たちをサポートしてくれるってよ!」

「え、そうなんですか!? それじゃあユエさんは」

「これからは安定期だそうで、このままここで様子を見る事になりそうです。今はゆっくり眠っていますが、三船君の事をずっと心配していました」

「⋯そう、でしたか」

「また明日、会ってあげて下さい。話せるのを楽しみにしていましたから」


 L.S.で時間を確認すると、〈2030.09.22 AM2:23〉とあった。

 あの赤ビルに行ってから、もう1日半以上が経っていた。

 ⋯俺は何時間寝てたんだ?

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