「こっからだと"赤くてデカいの"がよく見えるなぁ~!」
この原宿駅竹下口改札からだと、アレの全貌が見える。
ユキと見てきたあの"赤ビル"、そのまんまだ。
中には何があるのか。
とうとう今日、アレに入るわけか⋯
「SNSでめちゃくちゃバズってませんでした? "AIだけ"で造られたそうですね」
「らしいよなぁ! 俺らが一番に中を拝んでやろうぜぇ!」
「それもいいが、まずは"目の前のコレ"が気になるな」
竹下通りに連なる多くの人。
今までの日本だったら、観光客や旅行客でいっぱいになるのは分かる。
でも、今こうなるのはさすがにおかしい。
それだったら、他で全く人がいないっていう説明がつかない。
ここがこんなにいるんだったら、他でも多くいるはずだ。
「ルイ、一人で突っ走っちゃダメだからね?」
「わかってるって」
俺とシンヤが先を行き、ユキとヒナが後ろから続く。
適当に竹下通りを歩いてみてはいるが、周りの人たちは普通に観光を楽しんでいるように見える。
当たり前の光景だったはずなのに、違和感しかない。
まさか、ここにいる人だけ"影響を受けない"ようになってるとか?
そんなことあるのか?
【タイムリミットまで後24分】
「シンヤ、誰でもいいから話しかけてみてくれよ、本当に人なのか確かめてくれ」
「え、俺が!?」
「お前得意だろ、そういうの」
「え~、別に得意もねぇぜ?」
と言いながらも、シンヤはポニーテールの女性に話しかけに行った。
この違和感を拭うには、シンヤくらいコミュ力あるヤツがやった方が分かりやすい。
「シンヤ君、似合うわね」
「ほんとはあーやって裏で毎日ナンパしてたんじゃね?」
「ふっ」
ユキに笑われるシンヤ。
あれだけ一緒に遊んできたのに、実は裏でやってたら最高すぎる。
【タイムリミットまで後15分】
シンヤが戻って来た。
「なぁ、俺には"普通の人"にしか感じなかったぜ?」
「⋯」
「おい、ルイ?」
普通の人。
なら、なんであの人は"アイツら"に襲われてないんだ?
俺は"この方向を見ろ"と、顔で合図した。
「ん? なんだ?」
「⋯全員武器を出せッ!!」
「おぅ!?」
シンヤが慌てて銃を取り出す。
それに伴い、ユキとヒナも出した。
「ねぇ、あっちにもいる!」
ユキの視線の先にも、同様に10体ほどのネルト集団がいた。
マズい、ここに時間を割くわけにはいかない。
⋯ここは
「俺とヒナで左、ユキとシンヤで右だ!」
「わかったわ! 行くわよ、シンヤ君!」
「お、おうよ!」
【タイムリミットまで後12分】
「ここは私がやってもいいですか!? いけそうなんです、コレなら!」
ヒナは天使の槍を掲げ、光らせた。
赤青黄の三翼が広がり、半透明のウェディングベールが展開されていく。
「そんじゃ、頼む!」
「はい!」
3分かからないほどでヒナは倒してしまった。
白い雨を降らせたり、先端から巨大剣を出したり、ストレス発散するように暴れていた。
ここに来るまでに教えた"ズノウの使い方"も、ちゃんと分かってるようだ。
「ELの武器って、凄いですね!」
「それもあるけど、ヒナのやり方が上手いよ」
「いえいえ! それもルイさんが"コレ"をくれたおかげです! ありがとうございます!」
律儀に頭を下げるヒナ。
「んな、いいって。ちょうどあっちも終わったみたいだし、"赤ビル"に行こう!」
「あ、ちょっと待ってください!」
「ん?」
「これ見てください!」
ん?
おい、これって⋯
そこには"さっきからの違和感の正体"があった。
「急に入ってきたから攻撃当たっちゃって⋯そしたらこれが」
「⋯ってことは、ここにいるヤツら"全部ネルト"なのか!?」
普通に歩く通行人、それの避けた腹部から大量の精密機器やICチップが見えていた。
やっぱ、人じゃなかったんだ。
だけどコイツら、"俺らを襲う"気配が全くない。
だって今、俺たちの横だって、何事も無かったように普通に素通りして行ったぞ?
こいつらは飾り⋯?
意味が分からなかった。
⋯って、ヤベえッ!
もう考えてる時間は無い!
走って着く頃には、【タイムリミットまで後3分】の状況だった。
なんとか間に合ったが、予想外の人物がそこにはいた。
「君たちは"ここ"に用が?」
「!? あなたは⋯紀野大臣!?」