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第23話 大金

 41階に降りてみると、30人くらいだろうか?

 結構な人数が食べながら談笑していた。


 この階はレストランが並んでおり、人がゆったりする場所、いわゆる"ダイニング"って場所のようだ。

 下の40階まで行くと、このホテルのロビーがあるらしい。


 ⋯思い出したぞ

 確か前までここは、"ブルガリホテル東京"っていうホテルじゃなかったか?


 とんでもなくクソ高いホテルだったはずだ。

 中はかなり改装された跡があり、名前も"ネビュラスホテル東京"に変わっている。


 黒と紫と青を基調とした、いかにも高級感漂うって感じだが、どこか人間っぽくない無機質さも感じる。


 辺りを見回すと、ソファに座ってコーヒーを飲む"一人の白衣の女性"を発見した。

 あの髪型、顔、服装、どっからどう見ても"あの人"だった。


「ユエさん!」

「⋯あ、起きたのね」

「よかったです! さっき"4206"行ったら返事無くて、心配しました」

「わざわざ来たの? そっかごめんね」

「それであの⋯その⋯」


 俺が言葉に詰まって俯いていると、


「な~に俯いてるよ。アオ君の事、分かってるから」

「⋯え?」


 ユエさんは飲む手を止め、外の景色を眺める。


「どっちみち私たちは死ぬ覚悟だったんだから。運よく私が生きちゃっただけ」


 その表情はどこか、気丈にふるまってるようにも見えた。

 大事な人を失うなんて、そうそうに耐えられるものじゃない。


「ほら、まだ食べてないんでしょ? 私はいいから、しっかり食べておきなさいな。私が全部出してあげるから」

「え!? いや、そんな」

「いいの! 若いんだから遠慮しない! ほら、取ってき!」


 ユエさんは変わらない様子で対応をしてくれた。

 この人の精神面の強さに、ただただ尊敬しかない。


 ここで俺が暗いままでいたら、逆に失礼になる。

 料理を取りに行く前に俺は、


「あのー、ここで一緒に食べていいですか」

「ここ? 別に構わないけど、私だったら本当に気にしなくていいのよ」

「はい。ただ、ユエさんと話がしたくて」


 俺の意見にユキとシンヤも同意した。


「⋯そっか。物好きな人ね」


 コーヒーを飲みながら、ユエさんはそう言った。

 少し嬉しそうに見えたのは、俺の気のせいだろうか。


 料理を取りに行くと、一つ一つ名産ばかりが使われていた。

 さすが高級ホテル、どれも高い。

 おにぎり一つ1000円って、いやどんな物使ってんだよ。


 オープンキッチンになっていて、頼んだものを目の前でAIが調理してくれる。

 これも一種のパフォーマンスなのかもしれない。


 こういった部分を見ると、AI総理は"人間の生活"には手出ししていない事が分かる。

 あくまでも線引きはしてるってことなのか。


 海鮮系、肉系、寿司系とフードコートのように様々な場所に分かれていて、見るのは楽しい。

 が、全部コース制になっており、一つ選ぶだけで軽く1万近く飛ぶ。


 やっぱ半分は自分で払おうかな⋯

 今のユエさんに、この奢りは流石に悪い気がする。


 ちょっと残金を見てみる。

 貰った100万合わせて500万くらいだよな、今持ってるのって。

 L.S.で確認してみると、


「⋯は!?」


 なんだこれ!?


【2,005,053,832】というバグった数字が貯金に記載されていた。


 頬を何度か叩いてみる。

 いや、何度見ても俺の残高だ。


「どうしたの?」


 ユキが近付いてきた。


「いや、俺の金が"おかしい事"なってんだけど⋯」


 L.S.の残高をユキへと見せる。


「!? え!? これって、2、20億!!?」

「お~い、なに騒いでんだよ」


 寿司を取りまくっていたシンヤが戻ってくる。

 シンヤにも同様に、貯金額を見せた。


「うぉッ!!? お前ヤバすぎだろッ!? いきなり大富豪じゃんかッ!?」


 何度も見ても意味が分からない。

 誰かが振込先を間違えたのか?

 振込先を見ると、【ニホンセイフキュウフキン】と半角表記で書かれていた。


 "日本政府"?

 なんで政府が俺に?


 よく見ると、"1通のメッセージ"が俺へと届いていた。

 時間は【2023/09/18/13:42】とある。


 この時間は"俺たちがちょうど東京駅から出たぐらい"じゃなかったかな。

 最後寝る前に見た時間が、それぐらいだった気がする。


 食事どころじゃない。

 俺はすぐにメッセージを確認した。


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【三船ルイ 殿】


 この通知は"以下のいずれかの該当者"に送られています

 ・"想定を超えて有能である"と総理に認められた者

 ・"ネルトおよび用意したモノを倒した"と総理に認められた者


 今回は該当するため、相応の金銭支援および生活支援を【三船ルイ 殿】へと送らせて頂きます。


 ・2,000,000,000円の日本政府給付金

 ・全店舗の宿泊+飲食店無料クーポン14日間分※使用期限無し


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