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第22話 休息

「ん~⋯あ、起きた?」

「起きた? じゃねぇッ! なんでそんな格好!?」

「んー⋯ここがホテルだから?」

「え⋯ホテル⋯?」

「ここは"東京ミッドタウン八重洲の中のホテル"よ。どこで休もうか悩んでたら、声掛けられたの。ここは今安全だから泊まれるぞって」

「男の人?」

「うん、なんか"優しそうな感じの40代?くらいのおじさん"。他にも何人かいたよ」

「へぇ~、ってかなに乳揉み始めてんだよ」


 ユキは突然自分の両方の胸を揉み始めた。

 急に何やってんだコイツ!?


「なんかまた大きくなったかなって、ちょっと揉んでみて?」

「いや揉まねえし! 横乳見せんな!!」

「えへへ、えい!」


 笑いながら、今度はピンクの下着姿のまま俺に飛び込んできた。


「おい! なにやって」

「今日くらいはゆっくりしとこ。今は安全そうだから」


 上に乗っかったまま離れようとしない。

 色々ヤバいとこが当たってるって!


「ちょ!! ってかシンヤとユエさんは!?」

「他の部屋で休んでる」

「なら二人のとこ行こうぜ! 一応大丈夫か、確かめないと」

「え~、いいでしょ今は」

「まぁ後でもゆっくり出来るって! な!?」


 どうにかくっつき虫を説得した。

 やっと服を着始める。

 あのままだと、お互い色々危ねえって⋯


 時間を見ると、なんと朝の8時半だった。

 どうやら俺はめちゃくちゃ寝てしまったらしい。


 ベッドから起き上がって紫の派手な冷蔵庫を見ると、中に大量のジュースと酒と水、冷凍庫には普段買わない高い冷凍食品が入っていた。

 これは当分暮らすには困らない場所だろうな。


 他にも暇しないような娯楽も置かれており、こうなる前に泊まれたらどれだけ楽しめただろうと感じた。

 ⋯何も無かった日に来たかったな


 広いバルコニーに出て、外を見てみる。 

 このしっかりしたバルコニーからして、この部屋はたぶん"スイートルーム"ってヤツだろう。

 よくこんないいとこ貸してくれたな。


 下を眺めてみると人の気配は無く、ヤツらも見当たらなかった。

 近辺のビルやマンションを見ても、意外と静かなまま。

 もっとヤバい事になってるかと思ったんだけどな。


「誰か、いる?」


 着替え終わったユキが話しかけてくる。


「いや、誰も。もっとアイツらに襲われてたり、あるかと思ったんだけどな」

「私もそれ思った」


 嵐の前の静けさ、とかじゃないといいんだが⋯


「そういや身体の方はどう?」

「あ、あぁ、意外ともうなんともないな」


 腹をさすっても、痛みももう感じなかった。

 腎臓が破裂した気配も無い気がする。

 もしかしたら、"成功者の特権"だったりするのだろうか?


 そう思いながらここを後にし、隣の"4313"の前へと来る。

 このホテルは全部"顔認証の自動ドア"になっているようだ。

 ドア上部に"小型カメラ"が、それぞれ備え付けられている。


 室内の人物が入る時は自動で入れ、他の場合は中から許可が出ないと入れない。

 許可は声だけでもできるはずだ。

 緊急時はまた、別の方法で入れるみたいだけど。


 唐突に"4313"の自動ドアが開くと、奥にシンヤが座っていた。

 シンヤはL.S.で何かを見ている。

 そのいつもの姿を見て、安堵した自分がいた。


「う~っす。イチャイチャタイムはもう終わりか?」

「何がイチャイチャタイムだ」

「はは! まだ休んでてもいいんだぜ。ここは"アイツら"、今のとこ、いなそうだしよ」

「ほら言ったでしょ」


 ユキが頬を膨らませる。

 そこまで言うならゆっくりするかぁ、と言いかけたが俺は、


「まぁちょっとだけ付き合ってくれよ。ユエさんも無事か、確かめときたい」

「それは別にいいけど⋯もうそこまで行くなら、ついでに朝食にしましょ、シンヤ君も」

「お、おう、そうするか!」


 俺たちは、奥にある個人まりとしたエスカレーターへと乗った。

 このホテルには階段やエレベーターの他に、エスカレーターが付いている。

 42階に降りると、そこからもエスカレーターは続いていた。


 最近はこんな風に改造されてるらしいな。

 これもAI総理の影響だったりするのかもしれない。

 そして俺たちは"4206"の前へ着くと、


「⋯ユエさん、いますか?」


 俺が話しかけてみる。

 ⋯何も返って来ない


「ここで合ってるんだよな?」

「合ってると思うけど⋯ねぇ? シンヤ君」

「あぁ、ってか下に降りたんじゃね?」

「その可能性は高そう」

「⋯」


 ⋯少し嫌な予感がした

 昨日の事がフラッシュバックする。


 ♢


「⋯ユ⋯エ⋯を」


 ♢


 ⋯


 ⋯会ったとして、なんて声を掛けたらいいんだろう

 落ち着かない気持ちのまま、41階へと着いた。

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