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第21話 戒壇

 銃剣は狂ったように、突然グリッチし始めた。

 さっき選択した〈壊滅虹一波アークデストラクション・ワン〉とは、また違う姿へと変わっていく。


 〈七色の戒壇特異点セブンス・ステアシンギュラリティ

 例え俺が死んでも、コイツだけは必ず連れて行く。


 銃剣上部が開き、"階段のような不思議な点滅光"が幾つも現れ、反射した。

 その光とグリッチによって全体像が壊れ、どういった状態なのかはもう認識できないほどになっていた。


 分かる事は、この引き金をアイツに向けて引く、たったそれだけ。

 必死に態勢を整えようと下がるヤツに、この最後の一撃を食らわす。


 この時、"ズノウの付与効果"か、ロックオンされた"三翼の天魔神"は異常なほど動きが遅くなっていた。

 そんなヤツの顔面目掛けて放つと、一気に30個ほどの"何か"が一瞬でヤツへと飛んでいき、同時に幾つもの七色蝶の羽根が舞った。


 その飛んでいった何かは、"グリッチ状の長細い光"という表現が正しいかもしれない。

 その光はヤツの体内へ侵入すると、容赦無く全身を切り刻んでいった。


 背中の翼も、白い少女も、黒い悪魔も、何もかも。

 次第に跡形もなくなるほど切られると、ヤツは霧状に消えていった。


 それを見て、俺は大の字に倒れた。

 腹部が切られたかのように痛い。

 数分も経たずして、二人の走る足音が近付いてくるのが分かった。


「おいッ!! 大丈夫かッ!? 一人でやっちまったのか!?」


 なぜか視界が狭い。

 微かにシンヤの顔が見える。


 たぶんユキが俺の頭を抱えた。

 伝わる感覚でなんとなく分かる。


「ちょっと疲れただけだ」

「⋯うん」

「そっちも終わったのか」

「⋯飯塚さんの言ってた、"ズノウ"ってのに助けられてね」

「上手く⋯使えたんだな」

「おうよ! あんなクソ共に負けてなんていられねぇからな! ってかしんどそうだな、この後動けんのか?」

「わりぃ⋯今は動けそうにない」

「プロトロアに車まで運んでもらいましょうか」

「そうだな。今の状態じゃ、次が来たら危ねぇだろうしな」


 横たわる俺の視線の先。

 その先を二人も見てしまった。


「おれの⋯せいで⋯アオさんが⋯!」


 何度見ても血の気が冷める。

 あの時、ヤツの攻撃先に気付けていれば⋯

 後悔だけが、頭を駆け巡る。


「⋯こんな極限状態だったもの⋯全員生きるのは⋯無理だったのよ⋯」

「だけど⋯だけどッ!! あの時気付いていれば⋯ッ!!」


 悔しさのあまり唇を噛み締めると、血が溢れた。

 でもアオさんが流した血は、こんなものじゃない。


 こんな⋯ものじゃ⋯

 その瞬間、ユキが俺の頭を抱き寄せた。


「⋯逆に考えて。ルイ以外があれと戦ってたら、絶対全員死んでた。ルイのおかげで、私たちは生き残れたの」

「⋯」

「とにかくお前はよくやったよ。だって俺ら見ろよ、無傷なんだぜ、ほらユエさんだって」


 端で眠るユエさんがいた。

 近くにプロトロア2体がおり、後の3体はバラバラに壊されていた。

 ⋯きっと最後まで身を挺して守ったんだ


「だから、な。今回の事は⋯そりゃ残念だけどよ、守れなかったのは⋯俺たちのせいでもあるんだからよ」


 この後、プロトロアに運んでもらって車に撤退した。

 そして一旦、どこか休めそうな場所を探す事にした。


 探す途中眠ってしまった俺。

 次に起きると、高級そうなホテルの一室だった。


 ここは⋯どこだ⋯?

 ユキとシンヤとユエさんは?

 ベッドから起き上がろうとすると、左腕に違和感を感じた。


「!?」


 下着姿のユキが一緒に寝ていた。

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