「アイツは一旦俺がやるッ!! 二人はあっちを!!」
その瞬間。耳鳴りがするほどの轟音が響き、その溜まった一撃が俺に放たれた事から始まった。
「ちッ⋯!!」
ズノウで張っていた〈虹女神の七断層〉のうち、二層が破裂し、身体に戦慄が走る。
⋯まともに当たれば死ぬ
背中を伝う死だけが、ただ俺を突き動かした。
間髪をいれず、また轟音が鳴り響き、ヤツの銃に禍々しいモノが溜まっていく。
次は一気に周囲の空気が熱くなり、強烈な熱線のようなのが来る気配があった。
この少しの猶予を見逃さなかった俺は、即座に脳内でズノウを一つ選ぶと、俺の身体は勝手に動き始めた。
長く伸びた形状に変形した銃剣は、まるで大砲のようになり、両手で持つ必要がでてきた。
― 大きく丸み帯びた銃口
そこにいろんな色の光が瞬時に溜まると、ヤツに向かって一気に放たれた。
〈
これが一発でヤツを貫通し、左腕を吹き飛ばした。
左腕はタキシード風の黒い悪魔の方。
その腕が一丁の巨大銃とともに、一瞬で霧のように消えていく。
俺はその威力を見て、アオさんの言葉がフラッシュバックした。
♢
『それは本来、この"UnRuleの一番最後の敵"に装備されるはずだったもの。君が選ばれたのは偶然なんかじゃない。UnRule配布アンドロイド内に、"眼を検知するプログラム"を入れていたからね。勝手で悪いけど、僕たちは全て賭けてるんだ』
♢
これなら⋯やれる⋯!
こんなヤツで終われる訳がない。
アイツは銃撃戦を不利と感じたのか、途端に巨大剣へと切り替えてきた。
この時、ヤツは大きな空振りをした。
これが"違和感のある空振り"だとは思った。
"今の攻撃"はなんだったんだ?
俺の身体に何も無い。
というか、もしかして俺に対してじゃなかった?
刹那、後ろを向く。
ヤツの視線上にいるのは、俺とアオさんのはずだ。
「アオさんッ! 大丈夫で」
振り向いた視線の先。
⋯
⋯⋯?
自分が何を見ているのか分からなかった。
"誰か"がバラバラにされており、体の破片が幾つも飛び散っていた。
鮮血に染まっていく東京駅。
俺は誰を見ている?
見てはいけないものを見ているのだけは感じた。
第六感がそう発する。
あの"散らばった破片の正体"。
転がった頭がこっちを向いた瞬間、それは判明した。
「⋯⋯ユ⋯エ⋯を⋯」
考える間もなく、彼の眼は虚ろを向いた。
「⋯⋯アオ⋯⋯さん⋯⋯?」
俺の声に返事が無い。
そんな訳がない。
さっきまで話していたんだ。
ギリギリまで後ろにも下がっていた。
あれは違う。
あれは違う。
あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。あれは違う。
納得しようとする度、現実が押し寄せた。
もうあの人と話す事も、会う事も出来ない現実が。
⋯その現実が、怒りと後悔へと変色した
躊躇なくズノウの一番下の項目を選び取ると、天魔神の腹部分にまで俺の身体は跳躍した。
武器の先端からは"異様に長い閃光刃"が現れ、後部の蝶の羽根が大きく舞う。
その瞬間に上半身は捻られ、
「ッ!!」
初撃が繰り出された。
赤黄青紫と、"色の光爆撃斬"が次々ヤツへと叩き込まれる。
その度に、幾つも散らばる七色蝶の羽根。
〈
一人の白い少女と、巨大な黒い悪魔へと分離していく。
それでも俺は自分を止めなかった。
脳内で今も"あの人の最後の声"が聞こえる。
♢
「⋯ユ⋯エ⋯を」
♢
― ズノウの新項目が追加される
〈これは身体への負担があまりに大きく、腎臓が破裂する恐れがあります。それでも使いますか?〉
俺はすぐに〈はい〉を選択した。